イチロー流 球児へ

イチロー流 球児へ「守備編」

バーチャル高校野球

背面キャッチは「すごくいい練習」

 球児の質問 「外野守備での打球判断はどうしたらいいですか」

 走塁と同じで、体が浮いてしまうと難しくなる。反応は早い方がいいけど、それよりも正確に判断することを大切に。判断したら一気に動く。ゴロを捕るときの理想は左足が前だけど、ベースランニング同様、減速したくないからあまり縛られないように。結果、右足が前でも大丈夫。まずは捕れなくてもいいから、スピードを落とさずにしっかり形をつくること。ボールを追っている時も走る形は同じで、普段から目線が変わらない走り方を覚えて。ボールは動くから、走り方を勉強する。グラブはなるべく最後まで出さない。早く出せば出すほど体が緊張して固まってしまうからミスにつながりやすい。

 (上を向き、背後から来た飛球を捕る練習を紹介。最初は立ち止まった状態から、歩きながら、走りながらと徐々にスピードを上げる)

 この技術は目線が上下するとすごく難しいし、目から離れて、ボールがどこにあるかの感覚を持っていないと捕球できない。遊んでいるように見えるけど、最初から構えていると外野フライと同じで難しい。頭の後ろを通るのを待って(グラブを)出すだけ。これができるようになれば、普通のフライは一気に簡単になる。すごくいい練習。

背面キャッチを実演してみせた 【バーチャル高校野球】

 球児の質問 「後ろのへの打球はどのように背走すればいいですか」

 外野手の切り返しの基本は一度目線を切ること、怖いけどね。そうじゃないと動きが止まってしまう。これも訓練が必要。

 外野手の動きは慌てると不細工に見えるし、慌てる選手は狭い範囲の中でばたばた動いているだけになってしまう。判断なしでスタートを切れば、それは根拠のないただの勘だから安定しない。正しい判断をしてから落下点に直線で行けるのが、一番速いし、美しく見える。(構成・山口裕起)

イチローさんと高校野球

 イチローさんは2019年3月に現役を引退し、20年に高校生や大学生への指導に必要な「学生野球資格」を回復しました。
 20年秋に行った講演では、次のように語っています。
 「高校野球は『野球』をやっている。大リーグは『コンテスト』なんです。どこまで飛ばせるかとか。野球とは言えない。高校野球にはそれが詰まっているんです。めちゃくちゃ面白い」
 「僕はプロ入り前の野球にすごい興味がある。高校野球とか学生野球の指導者には、そんなにプロ経験者はいません。野球人としてこれから(野球界に)何かお返しできたらと思っています」
 球児への指導は、20年12月の智弁和歌山を皮切りに、21年は国学院久我山(東京)、千葉明徳、高松商(香川)、22年は新宿(東京)、富士(静岡)、23年は旭川東(北海道)、宮古(沖縄)と、これまでに8校を訪れました。
 21年までの訪問先は学校側の要望や部員からの手紙をきっかけに、決めていました。
 新宿と富士については、ともに地域の小学生らを対象に野球の普及にも熱心に取り組んでおり、その活動に関心を持ったイチローさん自ら、訪問を決めました。
 また、21年からは女子チームの強化プログラムの一環として、女子高校生の選抜チームと自身が率いる草野球チームとの試合を開いている。
 イチローさんは「今後もそれぞれのスタンスで野球に取り組んでいる高校生たちと一緒に野球をやってみたい」と話しています。

イチローさんの歩み

 イチロー(本名:鈴木一朗=すずき・いちろう)
 1973年10月22日、愛知県生まれ。愛工大名電高(愛知)から91年秋のドラフト4位でオリックスに入団し、94年から7年連続で首位打者を獲得した。
 1月に阪神大震災が起きた95年は「がんばろうKOBE」を合言葉にリーグ優勝、翌96年は日本一に大きく貢献した。
 2000年オフにポスティングシステムを利用して大リーグのマリナーズに移籍し、01年に首位打者、盗塁王を獲得してア・リーグMVPに。04年に262安打で大リーグのシーズン最多安打記録を84年ぶりに更新。01年から10年連続シーズン200安打。
 12年途中からヤンキース、15年からマーリンズでプレーした。16年には大リーグ史上30人目、日本選手では初となる通算3000安打を達成した。18年にマリナーズに復帰し、19年3月に引退。右投げ左打ち。

2/2ページ

著者プロフィール

高校野球を動画やニュースでいつでもどこでも楽しめるサービスとして、2015 年に朝日新聞社と朝日放送株式会社(現朝日放送テレビ株式会社)が共同で開始。全国高校野球選手権大会をはじめ、全国高校女子硬式野球選手権大会や明治神宮野球大会などのライブ配信を実施しています。

新着記事

スポーツナビからのお知らせ

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント