小田凱人「I am a Dreamer 最速で夢を叶える逆境思考」

17歳で史上最年少世界ランク1位となった小田凱人 「人と違っていい」から生み出される「自分らしさ」とは

小田凱人

「普通」からはみ出していこう

 前項で紹介したように、僕の家はちょっと変わった環境だった。

 そのおかげ(?)で今では、いわゆる「普通」の場所に身を置くことで、心地いい気分、安心感、というような感情はわかない身体になってしまった。

 では、「普通とはなにか」を考えてみたい。あくまで僕個人の考える「普通」とは、次のような場面だと考えている。

 学校、バス、電車、公共の場など、みなが一つの「箱」のなかにとどまり、同じ方向に向かおうとするような状態。

 つまり、右向け右、みなで一緒に、足並みそろえて、というような様子をイメージしている。これを考えたとき、僕はむしろ居心地の悪さすら感じるのだ。

 この「普通とはなにか」という想像を通じて、僕は「普通じゃないって何だろう」とも考えるようになった。

 ひいては、それが「自分らしさ」につながってくるのだと思う。

 僕は、相手の予想内に収まるのではなく、相手が予想していないような所にいたいと思っている。それがよくわかる例としては、メディアに出演させていただくときの発言だろう。

「応援ありがとうございます」「次もがんばります」というような、お決まりの言葉だけでは僕自身も満足しないし、もっと自分をさらけ出したいという気持ちが強くなる。だからこそ、あえて少し派手なコメントをすることがあるのだ。

 今でも恐縮するのだが、僕はよく、元プロ車いすテニスプレーヤーの国枝慎吾選手と比較されることがある。そして国枝さんについての質問がよく飛んでくる。「小田凱人さんにとって、国枝さんはどんな存在か?」「国枝選手をどう見ていますか?」という風に。

 もちろん車いすテニス選手を目指すきっかけをいただいた方であるから、憧れの選手であることは間違いない。心から尊敬しているし、できるならば、一緒に車いすテニス界を盛り上げていきたいと願っている。

 だけど、メディアからの質問に対して、そのまま伝えることはあまりしたくない。

 むしろ僕は、現役時代の国枝さんを「倒すべき相手」と言っていた。

 質問した側にとっては、意表を突いた答えだったと思うし、生意気な子どものように映ったかもしれない。「尊敬です」「憧れです」といった予想していたキーワードが出なかったことで、不満があったかもしれない。

 しかしこれは悪意ではなく、リスペクトとしての表現が他の方と違うということだ。これがまさに相手の予想の枠に収まるのが嫌だ、ということに対する僕なりのアクションである。

 僕は、2023年の全仏オープンで優勝したことで世界ランキング1位を獲得した。そこには、「史上最年少記録」という付加価値まで付いてきた。

 これは「枠」の話にも通ずるのだが、過去の記録を破るというのも、「枠」からはみ出すことである。新しい記録を樹立することで、これまでの常識を破り、そしてそれがまた新たな常識(=普通、当たり前)となるのだ。

 だから僕にとって「普通」や「常識」は、乗っかるものではなく、生み出していくものだ。周りと同じ流れに身を任せていて、そこから抜きん出る存在になるというのは、僕には到底イメージがわかない。

 だからこそ、枠からはみ出し、魅力的な自分をさらけ出していくことで、新しい価値観を生み出していくことが大切なのだ。

書籍紹介

【写真提供:KADOKAWA】

17歳の若さでその名を轟かせた、小田凱人(おだ・ときと)。
9歳のとき、左脚の骨肉腫を手術したことで車いす生活を余儀なくする。「サッカー選手になりたい!」という夢は絶たれたが、偶然出会った車いすテニスでいま世界中から大注目を集めている。驚くべきはラケットを初めて手にしてから、わずか8年での偉業達成である。

◎なぜ、驚異的な記録を短期間で達成することができたのか?
◎なぜ、大病を患ったのに前向きでいられたのか?
◎なぜ、厳しい世界で勝ち続けられるのか?
◎なぜ、プロでも「楽しさ」維持し続けられるのか?

本書は、小田凱人の人生をひとつずつ紐解きながら、「最速で夢を叶えた秘訣」を明らかにする。

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著者プロフィール

 2006年5月8日生まれ。愛知県出身。9歳のときに骨肉腫になり車いす生活に。10歳から車いすテニスを始め、数々の偉業を最年少で達成。2023年、全仏オープンでグランドスラム史上最年少優勝(17歳1か月2日)&最年少世界ランキング1位(17歳1か月4日)を達成し、ウィンブルドンも制覇。  名実共に、車いすテニス界の次代を担うトッププレイヤーとして国内外から注目されている。東海理化所属。世界シニアランキング1位、世界ジュニアランキング1位(2024年4月1日現在)。

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