相撲部屋潜入企画 お相撲さんの生活に迫る

宮城野部屋の朝稽古に密着!大相撲におけるトレーニングの意義とは? 元横綱・白鵬が考える稽古の在り方

飯塚さき

相撲における筋トレの意義は「スタミナとスピード強化」

折を見て、指導の声掛けをする宮城野親方。まわしを締めて稽古場に降りることもあるそうだ 【スポーツナビ】

 横綱・白鵬は、四股・すり足・鉄砲といった相撲の基礎を最も大切にしてきた。どんなに強くなっても、基礎運動に誰よりも時間をかけて汗を流す姿は、多くの力士たちの目に焼き付いている。「四股、すり足、鉄砲は、見てるほうもやるほうも面白くないと思われがちなんですが、頭で考えて体を動かし、自らの体調、心と会話しながらやることで続けられるものなんです。基本はすごく大事だし、続けてきたからこそ大ケガもなく結果につながったのかなと思います」と、親方自らも分析する。

 しかし、「30歳になってから筋トレを本格的に取り入れたことで、最後の5年、現役生活が伸びた」と断言。なぜか。

「私は体が柔らかくて、体の硬い人とは取りやすいし柔軟性があっていいんだけど、数日休むとすぐに筋肉が落ちちゃうんです。我々アスリートは30歳になったらちゃんと鍛えないと、戦える体ではなくなります。いまのお相撲さんたちは、そういうこともきちんと教わって理解していると思いますよ」

 では、親方の考える、相撲における筋トレの意義とは何か。

「スタミナとスピードがつくところだね。相撲の取組自体は数秒間の世界だけど、稽古は何十番もやりますから、スタミナがないと続かない。速い相撲も長い相撲もありますから、稽古と筋トレを十分しておくことで対応していけます。それに加えて、各パーツを太くしていく。それでパワーもついてきます」

 現在も、時折まわしを締めて弟子たちと共に稽古場に降りて指導するという宮城野親方。土俵から次のメニューの指示やフォームの指導をしていたかと思えば、上がり座敷で唐突に腹筋を始めるなど、自らも積極的にトレーニングに参加。必死に体を動かす弟子たちを見ていると、元横綱の血が騒ぐのだろう。かなりきつそうなメニューながら、皆が師匠と一緒に爽やかな汗を流していた。

 最後は、相撲部屋の稽古らしく、すり足やムカデ(一列になって、前の力士のまわしをつかんで前進するすり足)、股割りなどをして、この日の稽古は11時頃に終了。徹底的に体をいじめ抜いた後は――さあ、ちゃんこの時間だ。

<第2回「ちゃんこ編」へ続く>

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著者プロフィール

1989(平成元)年生まれ、さいたま市出身。早稲田大学国際教養学部卒業。ベースボール・マガジン社に勤務後、2018年に独立。フリーのスポーツライターとして『相撲』(同社)、『大相撲ジャーナル』(アプリスタイル)、スポーツ庁広報ウェブマガジン『Deportare』などで執筆中。2019年ラグビーワールドカップでは、アメリカ代表チーム通訳として1カ月間帯同した。著書『日本で力士になるということ 外国出身力士の魂』、構成・インタビューを担当した横綱・照ノ富士の著書『奈落の底から見上げた明日』が発売中。

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