「そなえてバスケ杯」が今年も開幕 島田チェアマンに聞くB.LEAGUEの社会的責務

永塚和志

そなえてバスケ杯は「ものすごく良い企画」

ーーここからは「そなえてバスケ杯」についてお聞きします。今年で2回目の開催となりますが、初の試みとなった昨年の開催についてはどのように振り返られますか?

 ものすごく良い企画だったと思います。防災バスケ「ディフェンス・アクション」や「ヤフー防災模試」を活用した「ファン防災アクション」を通してクラブ間対抗の要素が盛り込まれましたが、思っていた以上に選手たちが参加してくれました。

「ディフェンス・アクション」でも、各クラブが、トップ選手だけでなくユースやスクールの子どもたちも巻き込んで努力してくれました。「ファン防災アクション」も企画が良かったですし、これを各クラブの選手たちの協力で引き立ててくれました。昔だったらこういうものを実施してもみんなここまで乗ってこなかっただろうなと思います。ですから正直、びっくりしました。

名古屋ダイヤモンドドルフィンズ 坂本聖芽選手(左)、 菊池真人選手(中)、張本天傑選手(右) 【(C)NAGOYAD】

宇都宮ブレックス 比江島慎選手 【(C)TOCHIGI BREX INC】

ーー今年も年初から「令和6年能登半島地震」が発生し被災地の方々は大変な思いをしています。日本は地震の多い国で、その他の災害もあります。実際に震災や災害に遭った経験のある人たちは、こうした「そなえてバスケ supported by 日本郵便」にもより真剣に臨むのかなとも思います。

 そうですね。ただ、こうした取り組みを通して、まずはスポーツが好きな人たちがそういうところにリーチする接点が作れればなと思っています。もちろん、実際に被災をされた人たちも多くいるでしょう。私も、娘が小さいときに「3.11(東日本大震災、2011年)」が発生し、机の下に隠れたり公園に逃げたりしたので、大人はともかく、子どもたちなどそういった知識があるかないかで救える命もあるはず。そこで恐ろしい話をしたところで、子どもたちにはなかなか伝わらないので、まずは楽しくこういったきっかけを作ることは、すごくいいアプローチだなと思います。

ーー「ヤフー防災模試」もそうなのですが「ディフェンス・アクション」なども実際にやってみると、難しそうです。

 結構、難しいんですよね。ちゃんとアクションの順番があって、それをドリブルやパスなどのプレーの要素もしなければならない。その中でゲーム性があって、記憶力やチームワークも求められる。難易度がそれなりにあって、簡単なようでそうでない。あれはいろんな意味で良いトレーニングになるなと思いました。子どもたちを見ていても、リーダーシップのある子だなとか賢い子だなとか、わかりますからね。だから、ああいうのをやっていると自然に防災の知識は覚えつつそれ以外のスキルも身につくので、良いものだと思います。

福島ファイヤーボンズで実施した ディフェンス・アクションに島田チェアマンも参加 【(C)B.LEAGUE】

備蓄品カードを届ける ライジングゼファー福岡 石井智大選手 【(C)RIZING ZEPHYR FUKUOKA】

ーーB.LEAGUEは全国各地でクラブが本拠を置いていますが、となれば、災害発生時にどこかしらのクラブと彼らの試合興行面で影響が出る可能性もあります。そう考えると災害はリーグにとっても当然、他人行儀ではいられませんね。

 いつ何どき、そういうことが起こるのかというのは常に考えます。とはいえ、自然災害をどうこうできるわけではなく、来たときに被害をいかに最小化するかが肝要です。今進めてるアリーナ構想(収容5000席以上の専用アリーナを全国に作るもの)でも、蓄電の機能やWi-Fiを切断させない通信環境を整えること、VIPルームを女性の更衣室に転換するといった風に、バスケットボールと他のエンターテインメントだけでなく社会的意義を持たせたものが作られています。

 多くのアリーナプロジェクトは、バスケットボール界のためのアリーナというだけではなく、豪雨や震災などが起きたときの県民、市民のみなさんをお守りするシェルターになるものでもあります。場合によっては命を守る可能性もあります。

 その上で何かあった場合に、クラブの選手たちが復旧復興のサポートをどうリードしていけるか。ここはもうすでに準備をしておかなきゃいけないかなと思いますね。災害はいつ起きても不思議ではありませんからね。

ーー新たにできるアリーナには、バスケットボールの興行開催以外でも、防災のシェルターの役割があるというのは、多くの人たちがまだ認識していないところかもしれませんね。

 そうですね。私の発信力不足かもしれませんけど、そこはアリーナプロジェクトの中の大きな要素です。でなければ、多くのアリーナが各地にできるという話もバスケットボールの価値だけではこれほど進まないですから。私もそこについて常々、発信していますが、もっとやっていかないといけない。各地域でアリーナプロジェクトを推進している方々や自治体の長などとお話をするときに、このエッセンスはすごく響きますし、共感をいただける部分です。

ーー最後に、今回「そなえてバスケ杯」の2回目が始まるにあたって、こうした企画を通して防災のためにバスケットボール界としてどんなことができると考えているか、ファンや読者に一言いただければと思います。

 B.LEAGUEは全国にクラブを抱えているリーグですし、多くの競技者を抱えているバスケットボール界でもあります。日本全国でいつ、何が起こるかわからないわけですが、全国にクラブがあるので、クラブとリーグが一緒になって、今回のプロジェクトのようなことも含めて、地道にやっていくことで、少しでも社会に貢献し、認めていただけるようなリーグになりたいなと思っています。

「そなえてバスケ杯」については、昨年も参加してくださった方々もいるでしょうし、まだという方もいらっしゃるとは思いますが、クラブも一緒になってやっていくので、ぜひ参加して防災意識を高めるきっかけになっていただければなと思います。

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著者プロフィール

茨城県生まれ、北海道育ち。英字紙「ジャパンタイムズ」元記者で、プロ野球やバスケットボール等を担当。現在はフリーランスライターとして活動。日本シリーズやWBC、バスケットボール世界選手権、NFL・スーパーボウルなどの取材経験がある

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