高校時代のコービーが奇跡を起こしたオーバータイム 後のNBAスターを擁する強豪との一戦で…
仲間の「痛み」を消したコービーのアクション
「コービーの在籍中、我々が一番良いバスケットボールができた試合だったかもしれない」とイーガンは言った。
エイシーズの選手たちはシャワーを浴び、着替えをして、ダッフルバッグを持って家族の待つコートに出て行った。モンスキーは試合で得点をしておらず、シャヤ・ブライアントはコーツヴィルの大きなスコアボードにまだ照らされていた選手たちの最終スタッツを見上げた。そこにはモンスキーの背番号31番の横に0と表示されていた。コービーの背番号33番の横には32とあった。シャヤはこの機会に乗じて弟のチームメイトをからかった。
「エヴァン、0点だなんて冗談でしょ?」とシャヤは言った。
「シャヤ、あそこにアシストは表示されないんだよ」とモンスキーは答えた。
真顔でそう答えたものの、彼のプライドは少し傷ついた。コービーが彼を飛び越してチーム・キャプテンに任命されるだけならまだしも、今度はシャヤにからかわれないといけないのか? コービーと対等に渡り合えないということを一体何度思い知らされないといけないんだ? しかしその痛みは長くは続かなかった。その月にあった試合の前に、チームのキャプテン同士がセンターコートで審判と話し合う時に、コービーはその場を離れ、チームのハドルに小走りで戻るとモンスキーとスチュワートを掴んだ。「ほら、センターサークルに行こう」とコービーは言った。それ以来シーズンが終わるまで、モンスキーとスチュワートは試合が始まる前に毎回コービーと一緒にそこに加わった。
「そのことはずっと覚えていた」とのちにモンスキーは語った。「高校チームのキャプテンなんて、まあどうだっていいことじゃないか。相手のキャプテンと握手する。ただそれだけのことだ。でも17歳にとっては大切なことで、コービーがわざわざ俺たちを誘ってくれたのは本当にありがたかった。そのことについて彼にお礼を言うことはできなかったけどね」。
書籍紹介
【写真提供:ダブドリ】
本書はNBAレジェンド、コービー・ブライアントがフィラデルフィアで州大会優勝を成し遂げ、レイカーズに入団するまでの軌跡を描いています。コート上の話だけでなく、アメリカの黒人文化や社会構造、また大学リクルートの過程などさまざまな要素が若きコービーに影響を与える様が綿密に描かれているファン必携の一冊です。