書籍連載『THE RISE 偉大さの追求、若き日のコービー・ブライアント』

「23歳のマイケル・ジョーダンの13歳版」だったコービー “完全体に近づいたジョーダン”との初対面

ダブドリ編集部

ジョーダンとの初対面

 コート上でもコート外でもコービーはまさしく「23歳のマイケル・ジョーダンの13歳版」だった。自分一人で全てやることが可能であり、自分はこのチーム唯一の希望と救いであると信じ、パスをすることは本質的に無益だと考えており、彼が打つシュートはすべて自らのエゴを満たすものだった。

 ジョーダンはリーグ入りしてから七年目の1991年六月、コービーが八年生になるまで初めてのチャンピオンシップを勝ち取ることはできなかった。やがて六度のNBA優勝を果たしたジョーダンだが、そのうちの一つの優勝決定戦では、最後の一分でジョン・パクソンを、また別のではスティーブ・カーを信頼することを学んだ。ジョーダンはフィル・ジャクソンとテックス・ウィンター、そして自己を犠牲にして団結することが不可欠となるトライアングル・オフェンスに身を捧げた。そのおかげで全盛期を迎えたジョーダンは、まだサナギから羽化し姿を現したばかりだった。

 コービーにもこの完全体に近づいたジョーダンを近くで見せるべきではないか? 

 元NBA選手のジョーにはそれが実現可能だった。シカゴ・ブルズがシクサーズと対戦するためにフィラデルフィアに来たときに、コービーをスペクトラムに連れて行けばいいのだ。

 そしてそれは実現した。1992年3月8日の試合前に、父は息子をアリーナのロッカールームへ連れて行き、コービーはマイケル・ジョーダンに挨拶した。ジョーダンは挨拶を返し、彼にリストバンドを渡した。ジョーダンに会ったコービーが緊張していたり言葉につまったりたじろいでいたという記録はない。二人の間で交わされた会話はその挨拶だけだった。ジョーダンは他に言うこともなかった。コービーも同様だった。彼はブルズのフォワードだったホーレス・グラントに自己紹介した。

「君もバスケをするの?」とグラントは尋ねた。

「はい」とコービーは答えた。「でもまだ八年生なんです」。

「君はいつかスーパースターになるのかい?」

「はい」とコービーは答えた。「なるかもしれません」。

書籍紹介

【写真提供:ダブドリ】

 父ジョーからはバスケットボールを、母パムからは規律を学んだコービー・ブライアントは、幼い頃からコート上でその才能を輝かせていた。しかし、13歳でイタリアからフィラデルフィアに戻ったコービーは、バスケットボールという競技だけでなく、逆カルチャーショックやイタリアから来たよそ者というレッテルとも戦うことになってしまうのだった……。

 本書はNBAレジェンド、コービー・ブライアントがフィラデルフィアで州大会優勝を成し遂げ、レイカーズに入団するまでの軌跡を描いています。コート上の話だけでなく、アメリカの黒人文化や社会構造、また大学リクルートの過程などさまざまな要素が若きコービーに影響を与える様が綿密に描かれているファン必携の一冊です。

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著者プロフィール

異例の超ロングインタビューで選手や関係者の本音に迫るバスケ本シリーズ『ダブドリ』。「バスケで『より道』しませんか?」のキャッチコピー通り、プロからストリート、選手からコレクターまでバスケに関わる全ての人がインタビュー対象。TOKYO DIMEオーナーで現役Bリーガーの岡田優介氏による人生相談『ちょっと聞いてよ岡田先生』など、コラムも多数収載。

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