国際審判員がみた "日本女子サッカー"

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【©WE LEAGUE】

日本サッカー協会(JFA)が実施する「審判員交流研修プログラム」で来日したキルスティ ダウル氏。イングランドの女子スーパーリーグでプロ審判員として活動している彼女が、審判員としてのキャリアやイングランド女子サッカーの現状、そしてWEリーグの試合を担当して感じた"日本女子サッカー"の魅力について語ってくれた。

日本のWEリーグはとてもテクニカル、そして「正直さ」がある

ーー審判員になった経緯を教えてください
自分でもなぜかわからないのですが、大学在学中に、審判についての論文を書きました。その際に、多くの審判員にインタビューをする機会があり、ある時「やってみれば?」ということになって、ちょっとやってみたのがきっかけです。プロの審判員になる前は、鉄道の不正乗車の取締りをしてました。ひと駅分の切符を買って、長距離乗車する人を取り締まる仕事です。多くの人が、最初は不正を認めないんです。毎日粘り強く見張って、言い訳できないような確固たる証拠を得てから捕まえるんですが、不正者はあの手この手を使って言い逃れしてくるので、どのように認めさせるのか、あらゆるコミュニケーションの方法を取りましたね。それは、選手や監督と話す、今の審判活動に活きていると思います。

ーー プロの審判員として
現在、イングランドには、6名の女性プロレフェリーがいます。イングランドで女子のプロレフェリー制度ができたのは昨年(2022年)からで、プロになるかどうかは、自分で選ぶことができます。協会や女子リーグ、男子リーグからお金をもらっています。女子のプロレフェリーは、男子プレミアリーグからみると6段階下(LEVEL3)なので、まだまだやることはあります。プロになったことで、自分自身のトレーニングや休息に時間をかけられるようになりました。

ーーイングランド女子サッカーの現状は?
イングランドがEURO 2022で優勝したことをきっかけに注目が集まり、観客数も増えました。以前は、1000~2000人の会場で開催していて、年に1-2回、男子のプレミアリーグが行われるような大きなスタジアムで招待券を出してリーグ戦をしていましたが、今は大きな会場で開催することも増えました。ほぼ有料で、チケットは10ポンド(1500円程度)くらいです。

ーー 今回の来日で、日本の女子サッカーについてどう感じましたか?
実際に見てみると、細かく短いパスが多い。そして、とてもテクニカル。イングランドのダイナミックなサッカーに慣れていたので、始めの試合はポジショニングにも戸惑いました。課題は、当たりの強さやパフォーマンスの強度ですが、技術の高さには舌を巻きました。あと「正直さ」(honesty)は、大切にしてほしい。近年、イングランドの女子サッカーは、観客が増えたり、男子トップリーグで指導していた指導者がいるせいか、勝利にこだわるあまり、わざと倒れたり、時間を浪費したりというプレーが増えてきたと感じます。日本のWEリーグでは、そのようなことは見られず、転んでもすぐに立ち上がり、気持ちよくレフェリングができました。審判への態度にもリスペクトが感じられました。良いところは失わずに、日本らしいサッカーで進んでいってほしいです。


【プロフィール】
Kirsty Dowle (キルスティ ダウル)
1991年8月23日生まれ
イングランドでは女子スーパーリーグを主に担当
2020年より国際審判員

【審判交流プログラム】
日本サッカー協会は、審判員やインストラクターの国際経験を積むため、2008年より海外のサッカー協会や連盟と「審判交流プログラム」を提携し、各国との国際交流とともに国際経験の機会創出に注力。派遣される審判員は、海外でのリーグ戦や国際試合を担当し、現地のインストラクターの指導を通して、技術向上を図り、異なる文化や環境下でも審判ができる柔軟性や適用力を養うことを目的とし、海外から日本に招聘した審判員はJリーグや国際試合を担当。
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著者プロフィール

2021年9月に開幕した日本初の女子プロサッカーリーグです。WEリーグは「Women Empowerment League」の略称で、この名称には日本に“女子プロサッカー選手”という職業が確立され、リーグを核に関わるわたしたちみんな(WE)が主人公として活躍する社会を目指す、という思いが込められています。現在12クラブが所属。ホーム&アウェイ方式による総当たりのリーグ戦「2024-25 SOMPO WEリーグ」(2024年9月14日~2025年5月17日)とリーグカップ戦「2024-25 WEリーグ クラシエカップ」(2024年8月31日~12月29日)を開催しています。

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