ラグビー早慶戦100周年記念対談『再会』 第2回 佐藤健次×中山大暉

チーム・協会

【春の早慶戦後のお二人(本人提供)】

【早稲田スポーツ新聞会】取材・編集 川上璃々、鬼頭里歩、山田彩愛

 第2回を飾るのは、早慶共に不動のフッカーとして存在感を発揮する、佐藤健次(スポ2=神奈川・桐蔭学園)と中山大暉(慶大)が登場。お二人は、桐蔭学園高では花園2連覇に大きく貢献した逸材であり、宿敵として戦う今は良きライバルとしてあり続けている。そんな二人の意外な共通点とは――。桐蔭学園高での思い出や早慶戦への意気込みを幅広く伺った。

※この取材は11月18日に行われたものです。

【早稲田スポーツ新聞会】

かつての仲間

――お互いの第一印象を教えてください
佐藤 初対面は…。「似てるなぁ」ですかね(笑)。
中山 一緒です! 僕は、元々中高一貫で通っていたので、高校から、強くて顔が似た子が入ってくると聞いていました。やっぱり似てるし、うまいなって思った気がします(笑)。
――特に顔のどこが似ているのですか
佐藤 全部似てるって言われます(笑)。顔も、体型もですね(笑)。
――高校が同じだったということで、高校時代の印象を教えてください
佐藤 スキルフルでなんでもできる印象でした。(中山は)高校時代、選手兼マネージャーを勤めていたので、しっかりしているなって思ってましたね。2年生から一緒にスタメンとして出場していたので、その中でも信頼している選手でした。
中山 (佐藤は)僕たちの代のキャプテンでした。コロナ禍の厳しい状況の中でも僕たちを引っ張ってくれて、言葉に重みがありましたし、プレーでも発言もチームを引っ張ってくれていたので、人間としても選手としても尊敬しています。今は目標にする選手っていう感じです。
――では他己紹介をお願いします
佐藤 中山大暉君です。桐蔭学園高校から慶応大学に入っています。桐蔭(桐蔭学園高)の頃からフッカーをやっていて2、3年生の優勝メンバーです。プレーヤーとしては、アタックもディフェンスもなんでもできて、ジャッカルやラインブレイク、ショートパスなどラグビーで必要な技術を全部持っている選手です。性格としては、全体の前ではしっかりしていますが、仲良い人といるときは結構ふざけるというか、お調子者の一面もあるので、そのギャップが魅力なのかなと思います(笑)。
中山 (笑)。佐藤健次選手は、中学生時代から有名な選手です。横浜ラグビースクールでプレーしていて、全国のラグビーファンの中で中学生一の有名選手でした。高校1年生からスタメンで出場していて、高校2、3年生は花園の優勝メンバー、高校3年生はキャプテンを務めていました。高校2年生の時はU17のキャプテンもしていました。プレーは、すごくパワフルで体の芯が強くて、さらにラグビーIQもすごく高いです。限界を超えたプレーをしてくれるので、ラグビーファンに刺さったり、僕たちにも「こんなラグビーがあるんだ」と驚かせてくれますね。あとは言葉に重みがありますし、何か決める時には、健次の意見がすごく響きます。すごく頼れる存在で、人に好かれる人です。すごく優しいですし、いつもニコニコしているので(笑)。僕はあんまり愛想が良くないので、対照的な感じですね。話を聞くだけではなく話してもくれるので一緒にいて楽しい存在だと思います。
――お互いに連絡は取り合いますか
佐藤 最近は、スパイクのことを聞きましたね(笑)。試合で会う時とかも話したりしますね(笑)。
――スパイクについて、どのような相談をしたのですか
佐藤 僕が気になるスパイクがあって、そのスパイクでスクラムが組めるかどうかを聞きました(笑)。
――一緒に遊びに行ったことはありますか
佐藤 何回か家に行きました!
中山 高校生の時、僕の家に来てました(笑)。高校卒業してからはあんまり無いですね。オフが合わないので。
――もし遊びにいくならどこに行きたいですか
佐藤 アハハ(笑)。
中山 (笑)。
佐藤 なんですかね(笑)。今年でみんな20歳になるので、明治の秋濱(悠太)、帝京大の青木(恵斗)とかと仲が良いのでその辺を含めてみんなでご飯に行けたらいいなと思います!
中山 僕も同じ感じなのですが、ただご飯に行くというよりも、1泊2日の旅行でもしながら飲んでみたいですね!

桐蔭学園高時代を振り返って

筑波大戦で相手を突破しようとする佐藤 【早稲田スポーツ新聞会】

――共通点はありますか
佐藤 共通点…全部似ているので、全部共通点じゃないですかね(笑)。そのまま2人同じ人がいる感じです。
中山 似てるね、シルエットもね。
――中身はどうですか
佐藤 そんな変わらないです。変わらないからこそ家に行ったりできたのかなって。さっき大暉が「愛想が悪い」みたいなこと言ってたじゃないですか。でも実際人に好かれるような人なので(笑)。
――二人の一番の思い出は
佐藤 少し堅苦しくなりますが、花園出場時にリーダー陣でミーティングしていて、ケア室とかでずっと一緒にいたので、花園の期間とかはすごく濃い思い出です。
中山 高校3年生の時に、全国大会で優勝してから、帰りの新幹線の中でニ人のことを聞かれるという取材を受けた時です。健次から「大学ではフッカーをやりたい」っていう話を聞いていたので、同じポジションでやるんだっていうライバル意識が出ましたね。これまでは一緒にグラウンドに立って来たのですが、早慶という伝統ある学校にお互いに行くってなったので、そこも含めてライバル意識が芽生えましたね。あとは、スローの練習などを最初少し教えたのが印象に残っています。
――桐蔭学園高の練習はやはりきつかったですか
中山 Vランがきつかったですね。
佐藤 うんうん(笑)。
――Vランとはなんですか
中山 グラウンドをVの字に走るっていう桐蔭の名物ランメニューです。その時はきつすぎて、ちょっと「ラグビー辞めたいな」って思ったことはありました(笑)。
佐藤 僕もVランですかね。多分桐蔭生にこの質問すればほぼVランって言うのかなって(笑)。僕たちの代はコロナ禍ってこともあって、あんまり走ってないのですが、一つ上の代の時に20本を一気に走ったりっていうのがあったので、それが一番きつかったですね(笑)。
――コンタクト練習よりランメニューなんですね
佐藤 そうですね。桐蔭がずっとバチバチに当てていたってわけじゃなかったので、ランの方がきつかったですね。

「自分たちの言葉で話すチーム」(佐藤)

――コメントも取材も慣れているのは桐蔭時代から取材を受け続けてきたからですか
佐藤 そういうわけではない(笑)。僕が思うに桐蔭学園の選手は誰にインタビューしてもみんなコメントできるのかなって思います。早稲田は自分たちでミーティングをやるというよりかは、監督やコーチが中心となっていて、それはプロのチームでもそうなのかなと思います。桐蔭学園は一から、攻め方から自分たちで考えて相手のビデオを見て、自分たちの言葉で話すチームっていう教育をされているので、全員がコメントできるのかなって思いますね。これが桐蔭のスタンダードって感じですね(笑)。
中山 僕も取材慣れしているわけではないのですが(笑)。高校時代に自分の意見を話さなければいけない場面が多かったので、そういうのが生きてるのかなって思います。
――戦術も作ってアナリストのようなことも選手自身で行っていたのですか
佐藤 そうですね。ビデオも全部自分たちで見て、キーマンも自分たちで挙げて、相手の強み弱みも研究してって感じです。花園の時のミーティングはすごかったと思います。決勝とかすごかったよね?
中山 うん。ホワイトボードの部屋があったのですが、自分のトイ面とかが一人一人に割り振られているので、試合を見て思ったことをホワイトボードに一人一人書いていくことをやっていました。ホワイトボードに決勝で戦う選手の「この選手はこんな感じ」「強みはこれ」というのを書いていました。
――今でも自分でやることはありますか
佐藤 やってないですね(笑)。でもフッカーは見ますね。それは大暉もそうだと思うのですが、ノートにまとめたりはしないですけど、試合を見るときはフッカーを見ちゃいますね。やっぱり負けたくないので(笑)。
中山 そうですね。どういうプレーしているのかなってところだったり、ノットストレートの数を見たり(笑)。「ここの部分では」とか思いながら見たりしますね。
――早慶戦前にもお互いの大学の試合を見ると思うのですが、やはりお互いのことを目で追ってしまいましたか
佐藤 はい(笑)。僕は桐蔭出身の人を基本的に見るので、多分見てました(笑)。
――桐蔭出身だったら全員見るのですね
佐藤 見ますね(笑)。青学だったら榎本拓真(青学大)とか(笑)。各大学にいっぱいいるのでその選手の動きを見て面白い部分があったら切り抜いたりしてますね(笑)。
――面白いシーン探しもしているのですね(笑)
佐藤 そうです(笑)。切り抜いて送ってます(笑)。
中山 見るっていうか見ちゃうんですよね(笑)。
――佐藤選手は粟飯原謙(スポ1=神奈川・桐蔭学園)選手が同期から後輩になりましたが、やりにくさはありませんか
佐藤 もはや後輩じゃないですね(笑)粟飯原はタメ口ですし(笑)。それでいうともう一人いるんですよ(笑)。
――どなたでしょうか
佐藤 山口湧太郎(スポ1=神奈川・桐蔭学園)です(笑)。
中山 (笑)。
佐藤 山口にはふざけて「山口、俺先輩な!」って言って敬語使わせたりしてますね(笑)。
――中山選手も粟飯原選手と仲が良いと伺いました
中山 はい(笑)! (粟飯原とは)小学校から一緒ですし、僕は謙(粟飯原)と後輩じゃないんでいつも通りって感じです。山口はこの前久しぶりに会ったらすごく下手に出てきたので、その分先輩っぽくやってます(笑)。
佐藤 ハハハ(笑)。

早慶戦に向けて

明大戦でラインアウトモールを押し込む中山大(慶大) 【早稲田スポーツ新聞会】

――今のそれぞれのチームの状態は
中山 チームの状況としては、前回明治相手に自分たちの思うようなラグビーができなくて、自分たちが想定していたよりも強い相手ですごく反省する内容が多かったです。今練習の中で出た課題をつぶしています。練習の中で早稲田の試合も見て、すごく良いチームだなって印象があって、早慶戦では10年近く勝てていない相手なので「今年こそは」っていう思いが強いです。去年も後半追い上げて、ギリギリのところで負けてしまったので、今チームの状態も上がってきているのでリベンジしたいです。
佐藤 チーム的には僕たちも帝京にしっかり負けて、意識的なところが変わったと思っています。今までは何人かが頑張るというか、キャプテン(相良昌彦主将、社4=東京・早実)とか岡崎颯馬(スポ3=長崎北陽台)をはじめとして何人かが声を出して、みたいな雰囲気があったのですが、今は意識的に全員で話すようになって、僕たちがやりやすい雰囲気を僕たち自身で作るようになりました。あとはプレッシャー下での練習もやっていて、仕上がりとしてはまだまだですがチームの雰囲気としては徐々に良くなってきています。あと残り少ない時間でしっかりと詰めるところを詰めて勝てればいいかなと思っています。
――佐藤選手から見た、今年の慶大の印象を教えていただけますか
佐藤 やっぱり全員が勝つことにがむしゃらになるというか、早稲田にはないものがあるなと思っています。1本1本のタックルも絶対にひかないですし、ブレイクダウンの圧力やディフェンスの圧力があるチームということにプラスして、BKにスキルフルな選手が多いです。僕たちも好き勝手やらせてもらえないと思うので、お互いに我慢比べのような試合になるのかなと思っています。
――早慶戦でマッチアップしたとき、お互いに「ここは負けたくない」というところを教えてください
中山 僕はスクラムです。慶応はスクラムが良くなってきているということを僕たち自身が感じていることです。その中で早稲田相手にどこまで自分たちが通用するかというところで、2番の駆け引きが重要になってくると思います。あとはタックルや全体的なディフェンスの粘り強さが伝統的な強みだと思うので、そういったところで勝ちたいなって思います。
佐藤 桐蔭の時は僕がFWの中で、1番後ろで大暉が前で、という感じでしたが、今は同じポジションです。スローインやスクラムワークなフィールドもですが、フッカーとしてのスキルが高い選手だということは知っているので、全部負けたくないってところはあります。フィールドであれば2番と8番でも対決できますが、僕がフッカーになったからこそスクラムワークやセットプレーで勝負できるので、もう一度自分のコンディションをしっかりと整えて、良い勝負ができるように頑張りたいです。
――それではお互いにメッセージをお願いします
佐藤 メッセージか(笑)。
中山 (笑)。
佐藤 同じポジションで同期で、早慶でプレースタイルも似ててっていう中で一番思っているのは試合ができるのが楽しみ。大暉と試合できるのが楽しみなので、試合中もそれを忘れずにやります。元チームメイトですが今は敵なので、コンタクトする場面があったら他の人より気合が入っちゃうのかなって。ニ人のバチバチと桐蔭学園選手内でのバチバチを見ていただけたらと思います!
中山 僕も楽しみです。周りからも「2番対決だね、楽しみにしてる」って言われるので。高校の時から同期の中で目標にしていた選手で、同じ背番号を背負って秩父宮の伝統ある試合で戦えるっていうことはすごく珍しいことだと思います。あとは佐藤健次って名前は強いので(笑)。それに対してもっとアピールして楽しみながら人気をこっちにもってくれるように(笑)したいと思います。
佐藤 アハハハハ(笑)。テレビ放送あるしね(笑)。
中山 うん(笑)。映ることもあるかもしれないので、楽しんでやりたいと思います。
――佐藤選手のファンの多さがうらやましいのですか(笑)
中山 はい(笑)。やっぱり早稲田ってファンの方が多いじゃないですか。うらやましいですね(笑)。
――相手にキャッチコピーをつけるなら
佐藤 漢字一文字になっちゃうんですけど、「柔」です。プレーもしなやかですし、全部がうまいというかそれを含めて柔軟ってことで「柔」ですね! 
中山 漢字だったら「強」ですね(笑)。
佐藤 (笑)。
中山 コンタクトの強さって言うのは対抗戦(関東大学対抗戦)の中でもトップだと思います。あとは性格的な強さとしても、プレッシャーの中で良いプレーができますし、主将という責任を持ちながら全国優勝に導いた精神的な強さもあると思うので、「強」ですかね! 
――最後に早慶戦への意気込みをお願いします!
佐藤 まずはしっかり勝つことです。フッカーというポジションがラインアウトに関しても、スクラムワークに関しても勝ちに直結するポジションだと思っています。しっかり貪欲にがむしゃらに自分たちから勝負を仕掛けていきたいです。個人的にも2年連続POM(Player Of the Match)を取って一番輝きたいと思います!
中山 伝統ある試合に出場できることがううれしいです。そういう大舞台で自分がしなければいけないプレーを発揮できるのが良い選手だと思うので、そういう選手になれるように「自分のプレーを果たす」ことをしたいです。あとは、ここ10年早稲田に勝てていないのですし、そろそろその流れを切りたいタイミングではあるので、100周年で流れがきれるように、慶応らしくひたむきに頑張りたいと思います!
――ありがとうございました!

春の早慶戦後のお二人 【本人提供】

◆佐藤健次(さとう・けんじ)(※写真左)
 2003(平15)年1月4日生まれ。177センチ。105キロ。神奈川・桐蔭学園高出身。スポーツ科学部2年。座右の銘は「自信は努力から」。フッカー転向に順応するために積み重ねてきた努力の成果を存分に発揮し、伝統の一戦で2年連続「POM獲得」を目指します。セットプレーを支える姿やダイナミックなプレー、輝かしい笑顔と見どころあふれる佐藤選手に注目です!

◆中山大暉(なかやま・たいき)
 2002(平14)年12月3日生まれ。176センチ。102キロ。神奈川・桐蔭学園高出身。環境情報学部2年。趣味はゴルフ。中山選手にとってラグビーとは「人生の充実度を上げてくれたもの」。早大選手は粟飯原選手とも仲が良いそう。正確なスローイングと共に、チームのセットプレーに安定をもたらしています。冷静沈着な中山選手の迫力あるプレーから目が離せません!
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著者プロフィール

「エンジの誇りよ、加速しろ。」 1897年の「早稲田大学体育部」発足から2022年で125年。スポーツを好み、運動を奨励した創設者・大隈重信が唱えた「人生125歳説」にちなみ、早稲田大学は次の125年を「早稲田スポーツ新世紀」として位置づけ、BEYOND125プロジェクトをスタートさせました。 ステークホルダーの喜び(バリュー)を最大化するため、学内外の一体感を醸成し、「早稲田スポーツ」の基盤を強化して、大学スポーツの新たなモデルを作っていきます。

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