「自分はサッカー人生の敗北者」チームの昇格に“人生を懸けた”日本人Kリーガー、石田雅俊とは何者か

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【写真=ピッチコミュニケーションズ】

蔚山現代(ウルサン・ヒョンデ)の天野純を筆頭に、目覚ましい活躍を披露する日本人Kリーガーたち。そのなかで、確固たる思いで韓国の舞台を戦う一人の選手を紹介したい。

その選手とは、大田(テジョン)ハナシチズンに所属する石田雅俊。

2019年、「マサ」の登録名でKリーグ2(2部)の安山(アンサン)グリナースに加入すると、翌2020年は同カテゴリーの水原(スウォン)FCに移籍し、チームのKリーグ1(1部)昇格に貢献した。

昨年はKリーグ1の江原(カンウォン)FCで前半戦を過ごし、後半戦はKリーグ2の大田にレンタルされプレー。今季から完全移籍に切り替わり、韓国4年目のシーズンを送っている。

「敗北者」発言が韓国国内で話題に

「僕は個人的に、今までのサッカー人生を通じて敗北者だと思っています。それでも、こうして人生を変えられる試合がいくつもあります。いずれにしても昇格、そのために人生を懸けてやりましょう。やります」

この言葉は、昨年10月のリーグ戦でプロ初のハットトリックを達成した石田が、試合後のヒーローインタビューで伝えたものだ。通訳に頼らず、たどたどしい部分がありながらも自らの韓国語を駆使する姿は、Kリーグを超え韓国国内に大きな反響を巻き起こした。

「敗北者というのは常に自覚しています。自分が敗北者であることを意識すると、試合で意外とパワーが入るんですよ。だから、(あの言葉は)普段から自分が思っていることをただ伝えただけです」

石田雅俊。背景はホームタウン・大田の町並み 【写真=ピッチコミュニケーションズ】

インタビューが話題になった当時、「敗北者」発言の背景をそう語っていた石田。高校時代は“市立船橋のスーパーエース”と呼ばれるも、Jリーグで在籍した京都サンガF.C.、SC相模原、ザスパクサツ群馬、アスルクラロ沼津では思うような活躍を見せられなかった。

そうした苦い経験を重ねてきたゆえに、自らを「敗北者」と戒めるが、韓国で彼に後ろ指を指す者はいない。

何しろ、昨シーズンは大田でプレーした後半戦だけで15試合9ゴール1アシストの活躍を見せ、2部の年間ベストイレブンに選ばれた。Kリーグの年間表彰において、日本人選手が個人タイトルを獲得したのは石田が史上初の快挙でもある。

しかし、肝心の1部昇格の夢は叶わなかった。大田はリーグ戦2位で1部下位との入れ替え戦に進むも、ホーム&アウェーの2戦合計で2-4と敗れ、7年ぶりとなる昇格をあと一歩のところで逃したのだ。

入れ替え戦当時の石田雅俊 【写真=韓国プロサッカー連盟】

「1部昇格は最低限の目標」

それだけに、今季こそ昇格という思いは強い。24試合まで消化した現在(7月29日時点)、大田は12勝8分4敗の勝ち点44とし、Kリーグ2で11チーム中2位と上位につけている。

石田も21試合出場で7ゴール3アシストを記録し、ラウンドMVPに1度、ラウンドベストイレブンに4度選出。得点数ではチーム2位、アシスト数ではチーム3位と、昨季に引き続き攻撃の主軸としてチームをけん引する。

「どうすれば突き抜けられるか、圧倒できるかというイメージは頭の中で整理できているので、あとはどれだけピッチ上で示せるかを意識しています。頭で理解している以上、あとは身体を動かすだけなので、残りの試合でそこに挑戦したいと思っています。1部昇格は最低限の目標であり、どんな形であっても、絶対に成し遂げなければなりません」

まっすぐな目で、残りシーズンでの活躍を誓うとともに、昇格への並々ならぬ思いも明かした石田。大田の昇格に「人生を懸ける」と宣言した男が、今季こそ“二度目の正直”でチームに悲願をもたらすことができるか。Kリーグ2で挑戦を続ける石田の奮闘を、ぜひ日本の多くのサッカーファンに注目していただきたい。

石田雅俊 【写真=韓国プロサッカー連盟】

【取材・編集=ピッチコミュニケーションズ】
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著者プロフィール

アジア初のプロサッカーリーグとして1983年に創設。現在はKリーグ1(1部リーグ/12クラブ)、Kリーグ2(2部リーグ/13クラブ)で構成。 最新ニュースはもちろん、ACL出場クラブや日本人選手たちの活躍なども紹介していきます。

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