連載:プロ野球・好きな球場ランキング

最年長左腕・能見篤史が好きな球場TOP3 “甲子園以上に投げやすい”球場とは?

大利実

声援も野次もよく響く甲子園

能見は阪神に在籍した16年間で104勝をマーク。12年には最多奪三振のタイトルを獲得した 【写真は共同】

――阪神に入団した05年から20年まで、長らく本拠地として投げてきた阪神甲子園球場はどうでしたか?

能見 実は18.44メートルがいちばん遠く感じていたのが甲子園でした。

――それは驚きです。マツダスタジアムとは真逆ですね。

能見 かつてのホームグラウンドなので、あまり悪いことは言いたくないのですが(笑)。甲子園はバックネット裏のフェンスが低いので、マウンドと観客席の目線が同じぐらいに感じます。それよりもフェンスは高めの方が、バッテリー間の距離が近く感じるので、僕にとっては投げやすい。とはいえ、甲子園は投げる機会が多いので、実際はあまり気にしないようにはしていました。

――マウンドの硬さはどうでしたか?

能見 グラウンドキーパーの方に「ちょっと柔らかめで」とお願いしていました。前足が掘れやすいほうが、体重移動がしやすいので。

――それは土の配合を変えるということですか?

能見 そうではなくて、マウンドの固め方です。僕が先発するときは、あまり固めすぎないようにしてもらいました。

――そうなると、能見投手が先発で投げる日は、甲子園のマウンドが柔らかいわけですね。中継ぎ陣に影響が出る可能性がありますね。

能見 そうですね。僕の後に投げる外国人投手は投げにくかったかもしれません。

――甲子園球場の雰囲気はどうですか。声援だけでなく、野次も容赦なく飛ばしてくるのが阪神ファンだと思いますが。

能見 声援も野次も、両方ともよく聞こえていましたよ(笑)。甲子園は8割方が阪神ファンで埋め尽くされるので、相手チームの声援は小さいんですよ。だから、僕が投げてヒットを打たれたりすると、相手チームの声援以上に阪神ファンのため息の方が大きく聞こえたくらいですから。
 

衝撃を受けた神宮球場のマウンド

――以前、あるプロ野球の投手を取材した際に「ブルペンとグラウンドでマウンドの傾斜が異なる球場がある」という話を聞いたことがあります。実際にあるものですか?

能見 ありますね。神宮球場がそうです。三塁側ブルペンのマウンドはしっかりと傾斜が付いていて投げやすいですが、グラウンド上のマウンドは傾斜が緩めになっています。あと、神宮はホームベース側が他の球場よりも高く感じるんです。マウンドよりも打席の方が高いんじゃないかと思うくらい。

――それはどういう意味ですか? マウンドから投げ下ろす感覚が得られないということですか?

能見 そうです。感覚的に投げ下ろすことができないんです。阪神入団1年目のとき、はじめて神宮のマウンドに立ったときはびっくりしました。マウンドとバッターボックスが同じくらいの高さに感じたんです。もちろん、実際にはマウンドより打席の方が高いなんてことはあり得ないですよ。それに今は大分変わってきていて、僕が若い頃に感じたマウンドとバッターボックスの高さの感覚はもうほとんど感じないですね。

――何か対策は行ってきましたか?

能見 若い頃、投手コーチには「ワンバウンドを投げるくらいの意識でいけ」と言われていました。それくらいのイメージで投げないと、ボールが高めに浮き上がってしまうので。

――三塁側ブルペンとグラウンドのマウンドの傾斜の違いは、今も続いていますか?

能見 今もそうですね。だから、ブルペンでは低めにずっと投げ続けています。試合になれば傾斜が緩くなるので、その意識でちょうどストライクゾーンに入る感じです。
 

能見篤史が好きな球場第1位は?

能見への取材は2月3日、宮崎キャンプの練習後にオンラインで行った 【画像:スリーライト】

――経験豊富な能見投手ならではのエピソードの数々、とても興味深いです。せっかくなので、ここまでの話をまとめて「好きな球場トップ3」を挙げてもらうことはできますか?

能見 いいですよ。この取材のはじめに「マツダスタジアムが好き」と言いましたが、実は現在(オリックス)の本拠地・京セラドーム大阪と、あと札幌ドームも好きな球場なんです。順位をつけるなら、1位は京セラドーム大阪、2位はマツダスタジアム、3位は札幌ドームです。阪神時代の本拠地・甲子園は4位かな(笑)。

――1位に挙げた京セラドーム大阪のマウンドはいかがですか?

能見 京セラはマウンドに傾斜があって、バックネットまでの距離が近い。凄く投げやすくて、いま最も好きな球場です。

――札幌ドームのマウンドは硬いと言われています。柔らかめのマウンドを好む能見選手が3位に挙げたのは意外でした。

能見 札幌ドームはマウンドが硬くて、バックネットまでの距離も遠い球場です。ただ、フェンスの色が黒色で、これが僕にとってはすごくありがたいです。洋服でもそうですけど、黒は細く見えるじゃないですか。ぼやっと膨張しない。だから、マウンドから捕手がはっきり見えて投げやすいんです。

――フェンスの色までピッチングに影響するのですね。

能見 ここ、結構大事なポイントですね。

――能見投手は昨季から投手兼任コーチとして、若手に教える立場でもあります。マウンドの違いで苦労する投手がいたら、どのようなアドバイスを送りますか?

能見 ここでアドバイスを送ることがほとんどないですね。オリックスの若い投手たちは、ちゃんと対応できているので。それだけ高い修正能力を持っているということです。

――気にしすぎないことも大事なのでしょうか。

能見 そうですね。数えたことはありませんが、僕は17年間の現役生活で相当な数の球場で投げてきました。あえて若手投手にアドバイスを送るなら「マウンドが合わないからといって、投げやりになってはいけないよ」ということですね。

(企画構成:スリーライト)

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著者プロフィール

大利実

1977年生まれ、横浜市出身。大学卒業後、スポーツライター事務所を経て独立。中学軟式野球、高校野球を中心に取材・執筆。著書に『激戦 神奈川高校野球 新時代を戦う監督たち』(インプレス)、『高校野球継投論』(竹書房)、『高校野球界の監督がここまで明かす! 打撃技術の極意』(カンゼン)、『部活はそんなに悪者なのか!? 脱ブラック部活! 現役教師の挑戦』(インプレス)などがある。

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