頭脳明晰・研究熱心だった指導者ラミレス 「奇抜な采配」との批判は的外れだ
筒香の二番起用など大胆な用兵も話題に
そして、その筒香がメジャー挑戦で同年オフに退団した際には、佐野恵太を「四番・左翼」で主将に任命した。当時レギュラーにさえ定着していなかった佐野に、それまで筒香が担ってきた役割をすべて託したやり方には、「荷が重すぎる」と懐疑的な見方が大半だったが、ラミレスさんは「大丈夫。必ず結果を出す」と断言。結果、コロナ禍で120試合制となった2020年シーズンの佐野は、打率.328、20本塁打、69打点の好成績を残し、自身初の首位打者を獲得するのだ。
ラミレスさんはヤクルトでプレーしていた現役時代から、「将来は日本で監督になりたい」という目標を口にしていた。それは当時、途方もない夢物語のようにも思えた。選手として好成績を残すだけでなく、指導者としての手腕も認められなければ不可能だし、言葉の壁もあったからだ。
しかしラミレスさんは、次々と試練を乗り越える。メディアの注目度も重圧も大きく、「外国人が活躍するのは難しい」と言われていた巨人に移籍が決まった際には、その未来を不安視されたが、08年からの在籍4年間で本塁打王1回、首位打者1回、打点王3回、そして2年連続のMVP受賞と大活躍。さらに、原辰徳監督の采配や選手との接し方、勝利への執着心を間近で見て学び、将来指導者となる上での大きな財産も得ている。
その後、DeNAを経て14年に独立リーグの群馬ダイヤモンドペガサスで現役を引退。そのまま群馬のシニアディレクターに就任し、オリックスの巡回アドバイザーも兼務していた頃も、会うたびに「NPBで監督をやりたいんだ」と口にしていた。
DeNAから監督就任のオファーが舞い込んだのは15年オフ。球団史上初の外国人監督が誕生した。夢を見続けた者しか、夢は叶えられない。野球に限った話ではない。その生き様から大事なことを教えられた。
「短期決戦の鬼」をいつか侍ジャパンで…
第4戦、左腕・濱口遥大が8回1死までノーヒットノーランの快投を見せて息を吹き返すと、5戦目も左腕・石田健大を先発に立てて、苦しみながらも救援陣の踏ん張りで2勝目を挙げる。そして迎えた第6戦は、先発の左腕・今永昇太が7回11奪三振・2失点の好投でリードしたまま試合終盤へ。白星をつかみかけたが、しかし守護神・山崎康晃が9回に内川聖一に同点弾を浴び、延長11回の末に力尽きた。結局2勝4敗で日本一には手が届かなかったが、それでもソフトバンクに冷や汗をかかせたその戦いぶりは見事だった。
DeNAの監督として、一度も優勝を果たせないまま20年シーズンを最後にユニホームを脱いだラミレスさん。今回の真中満さんとのYouTube対談では、「今後、また監督をやりたいか?」という質問に対して、やや意外な回答をしていたが、今思えば「それもラミレスさんらしいな」と納得できる。
ただ個人的に期待してしまうのは、侍ジャパンの監督としての勇姿だ。日本球界を代表するトッププレイヤーたちをどのように起用し、いかにして世界の強豪国と戦うのか。「短期決戦の鬼」とも評されたラミレス采配を、いつか国際舞台で見てみたい。
(企画構成:YOJI-GEN)