騒動に揺れるバルサと覇気のないレアル クラシコをきっかけに浮上できるか

工藤拓

慢性的な得点力不足は解消されず

レアル・マドリーの頼みはベンゼマ(左)、ビニシウスの2人のアタッカー。ゴールに直結する役割が期待される 【Getty Images】

 ピッチ外の騒動が絶えないバルサとは対照的に、今夏のレアル・マドリーはいつになく静かなオフを過ごした。

 コロナ禍の影響を受けたフロレンティーノ・ペレス会長は、かつてないほど経営者としての手腕を発揮。無観客開催が続く状況を利用してサンティアゴ・ベルナベウの改修工事を急ピッチで進めつつ、悪癖の“衝動買い”に走らず余剰戦力の放出に専念した。

 結果として今季の顔ぶれはマルティン・ウーデゴーの復帰以外に真新しさがなく、チームの課題も昨季から持ち越すことになった。慢性的な得点力不足と、高いモチベーションを毎試合維持できないメンタルの問題である。

 ここまで公式戦6試合で総得点は8。チーム得点王はビニシウス・ジュニオールの3ゴールで、他はカリム・ベンゼマ、セルヒオ・ラモス、フェデリコ・バルベルデ、ルカ・モドリッチが1ゴールずつ、そして相手選手のオウンゴールがひとつあるだけだ。

 ベンゼマに続くスコアラーがS・ラモスだった昨季と同様に、ジネディーヌ・ジダン監督は失った得点力を取り戻すべく試行錯誤を続けているが、いまだに明確な解決策を見いだせていない。

 ビニシウス、ベンゼマ、ロドリゴを前線に並べたレアル・ソシエダとのシーズン初戦はスコアレスドロー。続く2試合はベンゼマ、ルカ・ヨビッチを2トップに並べ、ベティス戦はウーデゴー、バジャドリー戦はイスコをトップ下に配置する4-3-1-2を試した。この2試合は3-2、1-0で制したが、いずれも2トップは不発に終わっている。

 システムを4-3-3に戻したレバンテ戦は今季ここまでのベストゲームで、ビニシウスとベンゼマのゴールにより2-0で勝利を手にしている。フィニッシュ、チャンスメークの両面で不可欠な存在であり続けるベンゼマ、そして致命的に下手だったシュート技術に改善が見られ始めたビニシウスは、ここまで及第点のプレーを見せている数少ないアタッカーだ。2人にはクラシコでもゴールに直結する役割が期待される。

S・ラモスは強行出場の予定だが…

守備の安定に主将セルヒオ・ラモスは欠かせない。大一番だけに強行出場が見込まれている 【Getty Images】

 レアル・マドリーが抱えるもうひとつの問題、インテンシティーの欠如は直前の2試合で顕著に見られた。カディス戦、シャフタール・ドネツク戦ともチーム全体がコンパクトにまとまれず、個々がバラバラにプレスをかけては簡単にはがされ、高く押し上げたディフェンスラインの裏を何度も突かれている。

 それでもGKティボ・クルトワや両センターバックの好守で何とか失点を逃れてしまうのが昨季の強みだったが、S・ラモスがケガで不在だったシャフタール戦は最終ラインが大混乱に陥った。S・ラモスはクラシコに強行出場する予定だが、CLとリーガの連戦が続く中で無理はさせたくないはず。彼の負担を減らすためにも、ジダンはダニエル・カルバハル不在のサイドバックにフェルランド・メンディとナチョ・フェルナンデスを起用してサイドの守備を固め、間延びしがちな中盤を4人のMFで引き締めてくるのではないか。実際、3月のクラシコではMF4人+ビニシウス左、ベンゼマ中央の変則2トップでスタートし、2-0の勝利を手にしている。

 ジダンは監督として過去に5回カンプ・ノウを訪れ、2勝3分けといまだ負け知らずだ。直前の2連敗で早くも進退問題がささやかれ始めているが、これまで彼は同様の危機に追い込まれるたび、大一番での勝利をきっかけにチームを立て直してきた。

 今回のクラシコがそのきっかけとなったとしても不思議ではない。

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著者プロフィール

東京生まれの神奈川育ち。桐光学園高‐早稲田大学文学部卒。幼稚園のクラブでボールを蹴りはじめ、大学時代よりフットボールライターを志す。2006年よりバルセロナ在住。現在はサッカーを中心に欧州のスポーツ取材に奔走しつつ、執筆、翻訳活動を続けている。生涯現役を目標にプレーも継続。自身が立ち上げたバルセロナのフットサルチームは活動10周年を迎えた。

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