薬物の"有害さ"で1位のアルコール|害のある飲み方とは?知られざる飲酒リスク
【Getty Images】
※リンク先は外部サイトの場合があります
リスクのある飲み方とは?
WHO(世界保健機関)が作成したAUDITを使い、自分や家族などの身近な人の飲酒リスクをアセスメントしてみましょう※。
・低リスク飲酒
・中リスク飲酒(問題飲酒)
・高リスク飲酒(アルコール依存症が疑われる飲酒)
アルコール依存症が疑われたり診断基準を満たしているレベルでなくても、中リスク飲酒あたりから徐々に「アルコール乱用」と呼ばれる状態になってくる可能性があります。アルコールが関連して下記のようなことが生じていれば「あの人は酒癖が悪い」などと片付けず、アルコール依存症と同じように対処した方が良いでしょう。
・遅刻や無断欠勤が繰り返される
・飲酒運転
・対人関係の悪化やトラブル
・暴力や借金問題などの社会問題
習慣的な飲酒や多量飲酒※※は精神依存や身体依存につながりやすく、アルコール関連問題の中で最も重症度の高い精神障害としてのアルコール依存症の状態へと進行していきやすいと言われています。女性、高齢者、遺伝的に脆弱性を持つ人など、少量・短期間の飲酒でも依存症になりやすい性質の人もいます。その他、妊娠中や授乳中の女性、慢性疾患がある人の飲酒は危険ですし、各種薬剤との併用にも気をつける必要があります。
WHOの定めた診断基準は下記の6項目で、そのうち3つ以上あてはまるとアルコール依存症ということになります。1. アルコールに対する病的に強い欲求
2. 飲酒行動や飲酒量をコントロールできない
3. 離脱症状がある(飲酒をやめているときに
4. 耐性がある(以前と同量では酔わなくなり、酔うためにより多く飲む)
5. お酒のことで頭がいっぱいになり、その他の楽しみについての関心が薄れる
6. 飲酒によって有害な結果を招くことがわかっているが、飲酒を続けてしまう
厚生労働省研究班の調査(2013年)によると、アルコール依存症の予備軍であるハイリスク飲酒者は約980万人、依存症者は約109万人にのぼると推定されていますが、依存症治療を受けているのは僅か4〜5万人程度と考えられています。「もしかして?」と思ったら早めに情報を集め、専門機関に相談しましょう。
※診断基準ではありません。正確な診断は専門医の診察を受けることをお勧めします。
※※飲酒1日平均において純アルコール換算で60gを超える飲酒
実は薬物の「有害さ」で第1位のアルコール
使用者自身への害
他者への害
社会への害
※アルコールが起因する国内年間死亡数は3万人以上、社会的損失は年間4兆円以上と推計されています。
公共の場所へのアルコールの持ち込みに罰金(95ユーロ)を課すことを知らせるポスター(オランダ アムステルダム市) 【公共の場所へのアルコールの持ち込みに罰金(95ユーロ)を課すことを知らせるポスター(オランダ アムステルダム市)】
気づかないうちにアルハラしてるかも?
自分が相手に害のある存在にならないために、以下のようなことに気をつけましょう。
・リスクのある飲み方やアルコール依存症についての正しい知識を得ましょう。
・飲みたくないと言っている人にお酒を勧めたり、現在断酒している人に再飲酒を勧めることはやめましょう。
・「うちの◯◯(地元・会社・世代など)はみんな飲むのが好き」「相手があまり飲んでいないのは緊張しているから。もっと飲ませてあげないと」「飲みたくないなら相手がそう言えばいいだけ」など、自分の思い込みや固定観念を他者に当てはめようとするのはやめましょう。義務感や仲間はずれになる不安からみんなに合わせて飲んでいたり、断りたくても断れない人もいます。
・コールなどで相手に一気飲みのプレッシャーを与える、相手を酔い潰す、飲酒した相手に車の運転をさせるなどの行為は命を奪うこともあり、大変危険です。
当事者のための支援
依存症はまた、「孤独の病」とも言われます。ストレスや孤独感などを埋めあわせるために飲酒を繰り返してきた過去があるかもしれません。アルコール依存症は意思の弱さなどが原因ではなく、脳の意思や計画を司る部分が薬の作用によってハイジャックされる病気で、治療をすることで再社会化が可能です。一人で何とかしようとせず、早めに支援を求めましょう。
・専門医療機関
・断酒会
・AA(アルコホーリック・アノニマス)
・CRA(コミュニティ強化アプローチ)など
依存症から回復した当事者や依存症家族が書いた書籍やマンガ、体験談なども増えてきています。症状の表れ方などには個人差がありますが、自分と似た体験をした人や、そこから回復した人の話からは勇気がもらえるかもしれません。
当事者に近しい人のための支援
家族、カップル、友人などは、本人を治療につなぐことができる影響力を持っています。最近では家族などの近しい人向けの支援も少しずつ増えてきていますので、諦めずに情報をたぐりよせ、自分自身のQOL(生活の質)の向上や、問題行動のある方へに治療を勧めるプロセスを模索してみてください。
・専門医療機関
・アラノン(家族や友人のための自助グループ)
・CRAFT(コミュニティ強化アプローチと家族トレーニング)など
その他、当事者向けの支援団体(断酒会、AAなど)に連絡することもできます。
回復者を支援し受け入れる社会へ
日本でも、2013年に「アルコール健康障害対策基本法」が成立してアルコール関連問題への啓発や支援が整備されつつあるおかげで、アルコール依存症が治療可能な病気であるということが認知されつつあります。この病気は、きっかけがあれば誰でもなりえます。アルコール問題を抱える人を非難、拒絶するのではなく、治療を促し回復を支援しましょう。前編・後編を通し、アルコールと自分の立ち位置を振り返り、飲酒のリスクを知ることで、自分・他者・社会への害を少しでも減らせるといいですよね。自分自身や大切な人のためにぜひ情報を役立ててみてください。
国家資格キャリアコンサルタント/バルーン・コンサルティング代表/高輪こころのクリニックカウンセラー/MBTI®認定ユーザー/龍村ヨガホリスティックヘルスコンサルタント/ASK依存症予防教育アドバイザー/A/CRA/FT ASIA事務局
企業での社内・社外相談や個人向けキャリアコンサルティングで多くの方の悩みに寄り添っており、嗜癖行動や依存に関するカウンセリング実績も多数。
- 前へ
- 1
- 次へ
1/1ページ