東京五輪のバレーにとって一番の選択とは 大会の統一性と競技特性の狭間で――
ローザンヌにある国際バレーボール連盟でも定期的に会議を行っている(中央が藤野さん) 【Photo by Tokyo 2020】
バレーボールのスポーツマネジャーを担当する藤野隆弘さんは、昨年12月にスイスのモントルーで行われていた国際会議に出席。IOCやFIVB(国際バレーボール連盟)の担当者に大会準備の現状なども報告し、会議後には、国際バレーボール連盟の本部があるローザンヌに足を運び、担当者との情報共有や意見交換などを行った。各組織の調整は、どのように行われているのか。藤野さんに話してもらった。
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立場が違えば見解も変わる
12月に行われた国際会議では、バレーボール競技における各関係組織の担当者が一堂に会した 【Photo by Tokyo 2020】
昨年発表させていただいた競技時間も、調整が必要でした。もちろん一番大切なことは「アスリートファースト」ですが、放送権を持つテレビ局の意向や、運営する会場の都合も考慮しなければいけません。東京オリンピックのバレーボールでは、一番早い試合が午前9時に開始します。当初、国際バレーボール連盟は、アスリートの観点から「早過ぎる」と話していました。前回のリオデジャネイロ大会は、9時半開始です。しかし、最終試合が終わる頃には24時を回って日付が変わっていました。東京大会では、試合の途中で観客が帰らなければならない事態は避けたいところです。そこで解決案を探ったのですが、細かくスケジュールを見ると、リオでは選手村から試合会場までの移動に車で約1時間かかりましたが、東京では選手村と会場が隣接しているのでそれほど時間は掛かりません。ですから、選手の行動時間はあまり変わらないということが説得材料になり、9時開始案で合意に至りました。
観客席の設置方法に関しても、国際バレーボール連盟からは「なるべくコートに近付けてほしい」という要望が出ています。演出面を考えると、観客にとっても、映像を通して試合を見る人にとっても、臨場感が伝わりやすくなるからです。しかし、会場によっては「観客席をコートに近づけることで、視界が遮られてしまう席が発生してしまう可能性がある」という問題が出るところもあります。
実際に会って話をすることが大切
また、自ら率先して話を進めていかなければ、調整が間に合わなくなってしまう可能性があるので、今後に予定されているテストイベント等は、率先して関係各所に働きかけています。テストイベントを行うことがゴールではなく、そこで出た課題を解決するための調整を本大会までに行わなければなりません。東京オリンピック・パラリンピックまで、500日を切りました。素晴らしい大会になるように、今後も多くの協力を得て調整を行っていきたいと思っています。
プロフィール
1987年、神奈川県出身。成城大学卒、筑波大学大学院修了。高校、大学とバレーボール部に所属。2010年より公益財団法人日本バレーボール協会において世界選手権、ワールドカップ、ワールドグランドチャンピオンズカップ等の主要バレーボール国際大会の運営に携わる。現在は、公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会のバレーボールスポーツマネジャーとしてバレーボール、ビーチバレーボールの競技運営を統括している。
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