ガスリー「来年に向けて学んでくれ」 当たり前ができなかった2018年トロロッソ

F1速報

ガスリーはスーパーソフトのアドバンテージ生かせず

 一方のガスリーはハイパーソフトタイヤでスタートしなければならないQ3進出組とは違いスーパーソフトタイヤでスタートできるアドバンテージを生かしてレースを有利に進めるはずだったが、マーカス・エリクソン(ザウバー)に抑え込まれてカルロス・サインツJr.(ルノー)を追いかけることができず、後ろのフェルナンド・アロンソ(マクラーレン)によるアンダーカットを阻止するためにピットインをしなければならなかった。

 レース序盤に目の前にいたサインツとは実力がそれほどかけ離れていたわけではなかったのに、レース展開の中でピットストップまでに15秒も大きく引き離され、サインツが中団グループ最上位の6位でフィニッシュしたのに対し、ガスリーはハース勢との10位争いが精一杯だった。

実力を結果に結び付けられなかった今シーズン。ホンダPUの信頼性不足も一因だ 【Toro Rosso】

 思い返せば、今年のトロロッソ・ホンダはそんなレースが極めて多かった。

「中団グループはとても接戦で、僕らもその中にはいた。何度か自分たちのパッケージのポテンシャルをフルに引き出すこともできたけど、それができなかったこともあった。結果としては他チームより50点も少ないポイントになってしまったけど、持っている実力としては中団グループの中ではかなりの接戦だったし、この結果は本当の実力を反映したものだとは思わない。だからこそランキング9位に終わってしまったのはガッカリだね」(ガスリー)

 予選でICE(エンジン)が壊れた上に最後はPU(パワーユニット)からのオイル漏れでリタイアとなってしまったように、ホンダPUの信頼性不足が足を引っ張った部分も少なからずあった。特にスペック3を投入してからの終盤戦ではその傾向が顕著だったが、アブダビGPでは予選・決勝ともに実力を結果に結びつけられなかった最大の要因となってしまった。田辺豊治テクニカルディレクターもこう語る。

「決勝ではパワーユニット自体が壊れたわけではなくトラブル自体は深刻なものではないんですが、ちょっと締め直せばまた走れるようなことでも止まってしまえばレースは終わってしまいますし、0か100かで言えば(レースを失って)0ですから、結果としては同じことだと思っています」

「予選では1気筒の出力が出ていませんでした。ICEそのものの問題です。来年に向けてしっかりと分析して学びたいというところもありますから、ここで下手にいじらないでHRD Sakuraに返して解析したいと思っています。ガスリーも最後のブリーフィングで『来年に向けてきちんと学んで良いものを用意してくれ』と言ってくれましたけど、(壊れたPUを)きちんと分析して来年につなげていきたいと思っています」

実力を発揮できなかったのもまた実力

2019年はレッドブルとフェラーリにそれぞれ昇格するピエール・ガスリー、シャルル・ルクレール(右) 【Toro Rosso】

 ホンダは2019年シーズンに向けた実走テストという意味合いも含めてスペック3を投入し、本来必要とされる7戦分の耐久性を確保する必要もない中でとにかく実際に走らせることを優先させてきた。そこで得られたデータは来季型の開発に向けて極めて有益なものになったはずだ。

 しかし、最終戦アブダビGPで確実に3日間を通して使用できるように、第18戦アメリカGPや第20戦ブラジルGPでは金曜にスペック2を使ったり、第19戦メキシコGPはスペック3使用を断念したりなど準備してきたにもかかわらず、土曜日に壊れてしまった。

 マシンパッケージとしての実力が十分でないというのもさることながら、実力を実力通りの結果に結びつけるという当たり前のことができていない。それがトロロッソ・ホンダが2018年シーズン、最後まで果たしきれなかったことだ。第2戦バーレーンGPや第12戦ハンガリーGPで中団トップに立つ力を見せながらも、接戦の中団グループの中で最下位と言ってもいいランキング9位に終わったのは、アブダビGPのようなレースがあまりに多すぎたからだ。

 ドライバー、開発、セットアップ、戦略、ホンダ。その全てが噛み合ったのが2回だけしかなく、噛み合わないことの方が圧倒的に多かった。アブダビGPは改めてそれを思い知らされるようなレースになった。言葉としては矛盾しているように思われるかもしれないが、実力を大きく下回る結果しか手にすることができなかったのもまた、チームとしての実力だったと言うべきだろう。

(Mineoki Yoneya)

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