田中将大、消化不良で2018年終了 まだ見ぬMLB「集大成」への道

杉浦大介

次のステップはピークパフォーマンスの維持

地区シリーズ第2戦では5回1失点の好投で勝利投手となった田中。大一番での強さは現地でも認められている 【写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ】

「(優勝するのは)ほんと難しいですよ。同じ地区にボストンというチームがいて、こうも抑えるのが難しいかって思ったし、あの手この手を探すじゃないですけど、こっちもどうにかして相手より上にいこうとする。それは相手も一緒。その繰り返しだと思う。そういう難しさを今年は感じられたかなって思います」

 レッドソックス戦を終えて、メジャーでももうベテランの域に達した田中の言葉には実感がこもって感じられた。もちろんこれで終わったわけではなく、世界一という悲願達成は来季に持ち越し。難しいからこそ目指し甲斐がある究極の目標に向けて、田中にもまだ向上の余地が残っているのも紛れもない事実である。

 12勝5敗、防御率3.75という今季成績は合格点としても、エース級の投手としては突っ込みどころは存在する。夏場の故障離脱によるブランクはトータルで見ればプラスに働いた印象もあるが、156回というイニング数はやはり物足りない。まだ米国に来て200イニング突破の経験がないというのもマイナス。

 今季後半戦では最後の2登板以外はピーク時のパフォーマンスが見られたが、そのレベルで安定し、可能な限りフルシーズンにわたって維持するのが次のステップになるのだろう。

集大成のシーズンを迎えるために

「まだ良くなっていける実感はあります。年齢を重ねて方向性は変わっても、その中で向上する術を見つけてきている。(不調に悩んだ)去年の辛い経験を通じて、深みが出たんじゃないかなとは思っています。もし向上できなくなったとしたら、その時はやめるときなんじゃないですかね」

 最後にロッカーの前で声をかけると、田中はしっかりと前を向いてそう述べた。この姿勢があるかぎり、伸びしろは確実に残っている。だとすれば、消化不良だった今秋の悔しさもまた新たなモチベーションになるはずである。

 11月には節目の30歳を迎えるが、体力的にはまだピークに近い。心技体がすべて揃い、メジャーでも集大成と呼び得るベストシーズンを過ごすとすれば、あと1、2年の間が最大のチャンスか。追い求めるベストへの到達は難しいが、不可能だとは思わない。

 そして。いつかそんな日が来れば、そのときに初めて、田中は不完全燃焼のまま終わった2018年も大切な通過点として振り返ることができるようになるはずである。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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