バトンがスーパーGTで本領発揮 初Vで近づくチャンピオンの座

吉田知弘

予想外の出来事に対応力を発揮

ルーキーイヤーながら対応力の高さを発揮しているバトン 【写真:吉田成信】

 このコースで、しっかりとした走り込みができておらず、さらに週末の天候状況も影響して新品タイヤをつけて予選アタックのシミュレーションをまったく経験しないまま予選を迎えた。さらにセッション中にはクラッシュ車両が発生し赤旗中断になる場面もあったが、バトンはこれらを冷静に対処すると、3番手タイムを記録し予選Q2に控える山本につなぐ。

 そして山本はコースレコードを塗り替えるタイムでポールポジションを獲得。バトンにとっては12年のF1ベルギーGP以来のポールとなった。

 16日に行われた決勝レースでも、バトンはスーパーGTならではの“予想外の事態”に冷静に対応する。2番手で後半スティントを任されると、ピットアウト直後から積極的にペースを上げ、No.12カルソニック IMPUL GT−Rを逆転。その後は接近戦の争いが続いたが、まったく動じることなくトップを守り、一方の12号車は攻めすぎてしまいコースアウト。両車の差は10秒以上となり、バトンにも余裕が生まれた。

 しかし、そう簡単に勝てないのがスーパーGT。レース後半にGT300車両を無理に追い抜こうとしてしまいコースオフしてしまう。それでもバトンは冷静に対処し、マシンのダメージを最小限に抑えトップを死守した。レース終盤にはセーフティカー導入や予想外のハプニングの連続だったが、最後までトップを守り抜きスーパーGT初優勝を飾った。

不安要素は少ない次戦のオートポリス

「優勝を飾ることができて本当にうれしいし、改めてスーパーGTで勝つことの難しさを感じた。特にSUGOでの勝利は2レース分のそれに値する。正直、いい意味でクレイジーなレースだった。このサーキットでGT500とGT300が合計44台で混走するというのは、本当にタフなことだったし、すごい経験をしたなという気持ちだ」(バトン)
 これで、合計61ポイントに伸ばした山本/バトン組は、結果次第では第7戦オートポリス(10月20、21日)でシリーズチャンピオンを獲得する可能性が出てきた。さらにオートポリスでは8月末にタイヤテストのために走り込んでおり、「コースを知らない」という不安要素もない。

 だが、バトンはシリーズチャンピオンのことにはあまり言及せず、とにかく目の前の仕事を確実にこなしていくことに集中すると語った。

「チャンピオンシップでトップに戻ってくることができてうれしい。次回以降もウエイトハンデがある状態だが、スーパーGTは何が起こるか分からない。とにかくベストを尽くして1ポイントでも多く稼ぐことに集中したい」

 当初は元F1王者の来日で注目を集めたバトンだったが、今ではすっかりスーパーGTの一員という雰囲気で、シリーズ全体に溶け込んでる。同時にスーパーGTならではのレースの進め方や攻略方法もマスターしつつある。

 残り2戦となった18年シーズン、ここからバトンの“本来の実力”が発揮されるレースが見られるかもしれない。それがチームとうまく噛み合ってプラスの力になれば、バトンのスーパーGT制覇のチャンスは、より大きなものになるはずだ。

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著者プロフィール

1984年生まれ。幼少の頃から父の影響でF1に興味を持ち、モータースポーツの魅力を1人でも多くの人に伝えるべく、大学卒業後から本格的に取材・執筆を開始。現在では国内のSUPER GT、スーパーフォーミュラを中心に年間20戦以上を現地で取材し、主にWebメディアにニュース記事やインタビュー記事、コラム等を掲載。日本モータースポーツ記者会会員

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