福浦の背中に見つけた理想の将来像 ロッテ菅野剛士が味わうプロの壁

千葉ロッテマリーンズ

鮮烈デビューから5カ月、浦和球場でもがく日々

同じくルーキーの藤岡(右)と初めてのお立ち台に上がる菅野剛士。4月1日、プロ3戦目のことだった 【写真提供:千葉ロッテマリーンズ】

 猛暑日のロッテ浦和球場。2軍本拠地の試合後、菅野剛士は汗を拭って話した。

「夏場の暑さでバットが重く感じたり、動きが鈍くなったりするので、試合に出させてもらいながら1年間やり続ける体力をつけることが必要ですね。体調管理をしながらやっています」

 春季キャンプの実戦からオープン戦にかけて、持ち前の打撃力を存分に発揮した。新人ながら開幕スタメンの座を勝ち取り、4試合連続安打の鮮烈デビュー。同期の藤岡裕大とともにヒーローインタビューに登場し、チームに新風を吹き込むインパクトを残した。

 ZOZOマリンスタジアム特有の風も経験した。マリーンズの外野手として必ず適応しなくてはならない課題については「風が吹いている方向にボールが来るわけではないので、風の跳ね返りを考えながら自分でボールを追わなくてはいけない。ライナーが伸びたり、一歩でも間違えたら捕れなかったり、慣れるのには苦労しますね」と周りの選手の助言を受けながら、何度も風の確認作業を繰り返した。

 しかし、本格的に相手に分析されだすと、当初あった打席での手応えが薄れていくのを菅野は感じたという。7月下旬からは再び1軍を目指す日々だ。

「1軍のバッテリーは、自分の弱いところを徹底して投げてきますし、どのピッチャーもボールの質が良くて失投も少ない。一球でも甘い球がきたときには逃さずしっかり打てるように、技術と準備が必要だと思いました」

 現在は、守備力を磨きながらも「僕は打たなくては使ってもらえないので」と精力的に打撃に取り組む。大村巌2軍打撃コーチは、1打席ごとに良かったところや悪かったところ、細かい癖などを指摘してくれる。自身の感覚と照らし合わせながら、対話をするのは毎試合のことだ。

2軍に伝わる主力選手の残像

2軍の本拠地がある浦和で、菅野は1軍で見つけた自身の課題に向き合う日々を送る 【写真提供:千葉ロッテマリーンズ】

 2軍球場でやるべきことを終えて選手寮に戻ると、夕食時の食堂のテレビでは1軍の試合中継が流れる。少し前まで一緒にプレーしていた藤岡は現在もレギュラー出場を続けている。テレビ画面越しに見る仲間の姿に「同期は一生同期。活躍は僕の励みにもなりますし、また1軍に上がって活躍しなければという気持ちになります」と菅野は活力をもらう。試合が始まると、「相手バッテリーの攻め方を見ます。自分と似たバッターの打席はとくに意識して見ていますね」と来るべきときに備えることも忘れない。

 1軍には多くの見習うべき先輩たちの姿があった。とくにプロ25年目の福浦和也の背中には、自分が目指す理想の将来像を見た気がした。

「福浦さんは後輩からも慕われていて、あの年齢であのパフォーマンスを出せる理由は練習や準備にあると思いますし、実際にすごいので、福浦さんのような選手を目指してやっていきたいです。根元(俊一)さんや岡田(幸文)さんもそうですけど、長くグラウンドに立っている選手は、常に準備をしているイメージがあります」

 今いる2軍球場にも、主力選手の残像が存在している。菅野が複数人のチーム関係者に聞かされたのは、今も2軍で語り継がれている数年前の角中勝也の練習姿勢だった。試合が終わるとすぐにマシン打撃に向かい、一人で黙々と納得するまで打ち続ける。当時の角中の習慣を知った菅野は「1軍でも2軍でも、どんな環境でも練習を怠らない。それをしっかりやっているから1軍で結果が出ているのだなと思います」と再昇格への決意をにじませながら話した。

「勝ちに貢献できる選手になりたいです。ここぞという場面で活躍して、チームを勢いづけられるような、マリーンズを代表する選手になりたいですね」

 そう意気込んだのは、試合後のロッテ浦和球場の室内練習場でのことだった。数多くの選手が汗を流した場所で、この日もマシン打撃の打球音が静寂の中にこだましていた。

長谷川美帆(千葉ロッテマリーンズオフィシャルライター)
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