DeNA・伊藤光、再び輝く場所へ 「期待には結果で応えるしかない」

週刊ベースボールONLINE

初めてバッテリーを組む投手たちから刺激を受け、捕手として新たな発見の毎日が続く 【写真=井田新輔】

「打てる捕手」として、経験豊かな司令塔の加入は横浜DeNAが抱えるウイークポイントを埋めるための大きな補強となった。しかし、パからセへ、シーズン途中での捕手の移籍は苦労も大きい。新天地で切磋琢磨する伊藤光は、そうした中で捕手の本分を再認識、真摯な姿勢で自分の役割と向き合っている。

 7月9日、伊藤光、赤間謙と高城俊人、白崎浩之の2対2の交換トレード成立がオリックスとDeNAの両球団から発表された。リーグが異なるとはいえ、シーズン中の捕手同士のトレードはインパクトが大きかった。当事者である伊藤光自身も大きな驚きを持って、知らせを聞いた。

〜晴天の霹靂〜まさかの電撃トレード

 トレードの通達はオリックスの2軍の球場で赤間と一緒に聞きました。本当に驚きました。正直な話、これ本当なのかな? と。『Yahoo! ニュース』で確認して、初めて事実を受け入れたという感じでした。それくらい急だったんです。オリックス時代にも移籍してきた選手はたくさんいて、これまではトレードしてきた選手を迎える立場だったので、いざ自分がチームを移籍する立場となってみると今までお世話になったオリックスに対して感謝とともに、寂しさがありました。同時に新しいチームでプレーするワクワクする気持ち、不安も感じました。不安というのは、いろいろなサインを覚えられるかとか、ほぼゼロから投手とコミュニケーションを取って、関係を築いていくことに関してでした。

 DeNAは自分より年下の選手が多いので、「先輩がやって来た」というような雰囲気で迎えてもらいました。侍ジャパン(2013年)で一緒だったカジさん(梶谷隆幸)をはじめ、宮崎(敏郎)さんら面識のある選手もいたので、すぐに溶け込むことができましたね。初めての関東での暮らしも徐々に落ち着いてきました。引っ越しはこれからですが、住む家など時間があるときに探しています。

 今季、僕はずっとファームでプレーしてきました。それだけに必要とされてこのチームに来たことを強く感じていますし、これまでやってきたことを全力で表現して、大きなチャンスをつかみ取るという気持ちで横浜にやってきました。高田(繁)GMやラミレス監督からは、打撃面はもちろんですが、今まで経験してきたことをグラウンドで出して、投手陣を引っ張っていってほしいと言葉をかけてもらっています。

〜新天地〜第2のプロ野球人生

7月20日の阪神戦では移籍後初アーチを放った 【写真=高原由佳】

 移籍が決まった以上、前に進むしかない。横浜という新たな場所で再スタートを決意。加入を心待ちにしていたDeNA側は、パ・リーグから来た司令塔をわずかな準備期間でスタメン起用させた。

 7月11日に入団会見に出席して、オールスター明けの東京ヤクルト戦(16日)でスタメン出場。本当に慌ただしく時間が過ぎていきました。サインを覚えることに対しての不安はありました。さらにバッテリーを組む投手のボールを受けたことがなかったので、それぞれの特徴などを把握するのにも時間をかけました。短期間でこうした経験は初めてだったので、苦労というより難しさを感じましたね。とはいえ、できることは球場や自宅で映像を見て、分析することしかできませんでしたが。

 野球に対する不安はまったくありませんでした。初先発のヤクルト戦も緊張することはなかったです。あれだけスタンドが埋まっている中でプレーすることが僕にとっては久しぶりで、新しいユニホームを着て、初めて1軍で試合に出場したような新鮮な気持ちになりました。

 ヤクルト戦の2回には(雄平に)盗塁を仕掛けられるもアウトにすることができ、形としてはあいさつ代わりじゃないですけど、うまくいった。最初が肝心という意味では、いい印象を与えることができたかなと思います。

 出場3試合目(18日)のヤクルト戦での勝利(ウィーランドとのコンビで8回1失点の好投を演出)は僕にとって特別な1勝となりました。移籍して連敗していたので、本当に良かったです。僕の中では忘れられない試合になると思います。

 20日の阪神戦では移籍して初めての本塁打を打つことができましたが、僕は元来、長距離ヒッターではありません。しっかりスイングした結果が本塁打につながりましたね。今はリード、打撃のどっちつかずにならないよう、両方に集中できるようにしています。リードで頭いっぱいで打撃はダメだと言い訳にしたくはありません。

 毎試合、僕にとって新しい投手をリードしてやりがいはありますが、現時点でチームが苦しい状況で、個人的なやりがいだけを感じるのではなく、チームの勝利に結びつけていかないといけません。チームが勝って初めて捕手の存在価値が認められるわけですから。そこに結びつけられていないのが、自分としてはつらい状況ではあります。リードに関しては投手としっかり話し合い、スコアラー、コーチとミーティングを踏まえたうえで僕が状況判断を下すよう努力をしています。

 いろいろな方にセ・リーグの打者の印象を質問されますが、「対打者」を考えるよりも、投手をどうにかしてあげたいという気持ちのほうが強いですね。投手が苦しんでいるときにうまくリードしてあげたい。先発ローテで投げる投手であっても、シーズンを通してすごく調子のいい試合は2、3試合です。多くの登板が普通か、あまり調子が良くないことがほとんどです。「今日はこの変化球がよくないな……」など感じながら投げています。そんなときに、打者を「こう抑えよう」と捕手が考えても、投手がボールを投げ切れなかったらどうしようもありません。そこでうまく判断していくのが僕の役割です。やりがいでもあり、難しさです。

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