「航空後進国」を変えた1人のエース
室屋義秀と日本スカイスポーツの4年間

室屋自ら次世代育成に本腰

多くの報道陣に囲まれる室屋。拠点の福島では次世代の育成にも励んでいる。
多くの報道陣に囲まれる室屋。拠点の福島では次世代の育成にも励んでいる。【写真:Predrag Vuckovic/Red Bull Content Pool】

 日本人選手が強くなることでファンが増え、競技が盛り上がることは他スポーツでも証明されている通り。しかしスカイスポーツ後進国である日本では、「見る側」を増やせても、「やる側」を増やすことは容易ではない。果たして、室屋の後継者はこれから現れるのか。


 こうした課題には、室屋本人がパイロットとして活動しながら長期的に取り組んでいる。福島の農道空港だった「ふくしまスカイパーク」を拠点に、地元の人々と航空文化の振興活動を続けてきた。何もない状態からエアショーや航空教室を開催し、「見る側」と「やる側」の機会をつくり続けているのだ。


 室屋は言う。「次世代は育ってきているのを実感しています。航空教室で単に『航空』や『スカイスポーツ』について学んだり体験するだけでなく、その経験や過程を通じて、やる気を育んだり、生き方を考えるきっかけになれればと願っています。航空教室で目を輝かせながら参加している子どもたちが、将来の日本を担う人材に育ってくれることを期待しています」。


 拠点とする福島で室屋を知らない人はまずいない。エアレースで年間優勝を遂げた昨年は福島県から県民栄誉賞が授与された。地域の支援と繋がりから、次なるステップへ。室屋は昨年より、次世代への継承を目標にした「VISION 2025」という、航空人材育成と航空産業創出を基軸としたプロジェクトを始動させている。


 2025年をひと区切りとする理由は、「プロジェクトを始めた頃に空を体験した子どもが成長し、大人になって仕事の選択を考える年代を指しています」。


 今後は、ふくしまスカイパークにパイロットの養成実習を行う大学の進出も予定されている。今秋にも専用の施設をふくしまスカイパークに設置し、来春開校予定で航空教室も定期開催していくことで、それらの人材が就業し始める2025に向けて航空産業の創出・誘致を働きかけるのだという。


 室屋が子どもの頃は、曲技飛行やエアレースを見聞きする機会もなく、先人もいなかった。自身がパイオニアとして、日本で実践的に飛行できるまでに要した歳月は実に20年。次世代には、こんな苦労をさせたくないと室屋は道を切り拓き続けている。いつかは福島でのエアレース開催を夢見る。「航空後進国」日本は、1人のパイロットの出現によって、千葉と福島から、着実に進化を遂げつつある。

松山ようこ

兵庫県生まれ。翻訳者・ライター。スポーツやエンターテインメントの分野でWebコンテンツや字幕制作をはじめ、関連ニュース、企業資料などを翻訳。2012年からライターとしても活動をはじめ、J SPORTSで東北楽天ゴールデンイーグルスやMLBを担当。その他、『プロ野球ai』『Slugger』『ダ・ヴィンチニュース』『ホウドウキョク』などで企画・寄稿。2018年よりアイスクロス・ダウンヒルの世界大会Red Bull Crashed Iceの全レースを取材。小学館PR月刊誌『本の窓』にて、新しい挑戦を続けるアスリートの独占インタビュー記事「アスリートの新しいカタチ」を連載中。

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