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ロッテ岡田、無安打続くも失わぬ情熱
下積みの頃を思い「とにかく謙虚に」

“エリア66”を生んだ秘訣

“エリア66”と称される守備範囲の広さは健在。指揮官からも「スペシャル枠」と一目置かれている
“エリア66”と称される守備範囲の広さは健在。指揮官からも「スペシャル枠」と一目置かれている【写真:BBM】

 恩師は守備でもいる。「代田さんですね」。入団時、2軍外野守備走塁コーチだった代田建紀氏だ。


「1軍で飯を食うには守備と足だよ」


 打撃は水物だとよく言われる。だからこそ、不調時に武器になるものを持てとの教えだった。何本のノックを受けたか覚えていない。春夏秋冬、とにかく、打球を追った。そうして見えてくるものがあった。


「センターからは捕手の構えるコースは分かる。あとは打者の打つタイミング。それを考えて予測する」


 このコースの球にこうバットを出せば、どのあたりに飛んでくるかが体に染みついた。だからボールを見ている時間は極端に少ない。いわゆる「目を切る」時間が長いのだ。


「最初は目を切ることが怖かった。でも、たとえ10メートルでも全力で走ることで、進める距離は全然違うんですよ」


 その守備範囲は“エリア66”と呼ばれ、11年にはリーグ記録にあと2に迫る351刺殺を記録し、外野手としてリーグ新のシーズン連続守備機会無失策359を達成。同年6月15日の巨人戦で2、5、8回と完全に外野の間を破ったかに見えた打球をすべて好捕したスーパープレーは語り草だ。


 ユニホームを脱ぎ、心から落ち着くことができるのは12年に建てたマイホームのある栃木へ帰るとき。ZOZOマリンでの試合が続く日曜日の夜に家へ戻り、家族で食卓を囲む。何気ない話をするのはかけがえのない時間だ。


「仕事辞めて(こっちに)来たらどう?」


 プロ野球選手として、それなりの給料をもらえるようになった岡田は、何度か持ちかけたことがあった。ただ、由美子夫人の答えはいつも「子どもたちも友達がたくさんいるし、それはできないよ」だった。


 そう言われることは分かっている。それでも、聞いてみたい衝動に駆られるのは、常に心のどこかに孤独を抱えながら戦ってきたからだろう。


 ただ、グラウンドではそんな心の内をみじんも見せない。出場は試合途中に限られていても、若手と同等か、それ以上に肉体を追い込んでいる。


 自主トレをともにする42歳の福浦和也のことは「考え方、人間性が素晴らしい方」と心酔する。一番心に響いたのは「年を取って(練習を)やらなくなったら終わりだよ。きついけど、動かさなければ衰える」という言葉。酷暑の今夏、練習前の時間からグラウンドに姿を見せ、玉の汗をかきながら走り込む姿があった。前に進む力があれば、衰えにも抗える。それは25年目のベテランから教わった哲学だ。

岡の加入で2軍へ…「また戻れるように」

 そんな岡田に突然の通告が待っていた。北海道日本ハムから俊足の外野手・岡大海をトレードで獲得。球団から発表された7月25日の福岡ソフトバンク戦の試合後に2軍行きが通告され、翌26日には出場選手登録を抹消された。


 ただ、帰京する福岡空港でチームメート、スタッフにあいさつをする姿に悲壮感はなかった。「(2軍は)暑いでしょうね。また、戻ってこられるように頑張ってきます」。切り替えはもう、済んでいた。


 なぜ、それだけ情熱を失わずに戦い続けられるのか。そう、岡田に聞いたことがある。


「24歳でプロ入りしたとき、今の姿なんて想像もつかなかった。とにかく、謙虚に謙虚に、です。毎日、同じことを繰り返し、勝つときもあれば負けるときもある。野球をやらせてもらっている。その感謝の気持ちだけは忘れません」


 引きこもりになった青年が、一度は断念した夢の舞台。それでも、数え切れないほどの人の「手」が背中を押してくれ、このユニホームに袖を通すことができている。くじけるわけにも、あきらめるわけにもいかない。その瞳の輝きは24歳のときのままである。


【文=田口礼(フリーライター)】

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