プレミアリーグのファンが胸をときめかす 覚えておいて損はない10代の逸材たち

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チェルシーではネクスト・アザールが躍動

アザールの代役を任されて大活躍したチェルシーのハドソン・オドイ 【Getty Images】

 そのアーセナルと現地時間8月1日にICCで対戦したチェルシーでも、見る者すべての度肝を抜くアタッカーが現れた。こちらも2000年生まれで、ロンドン出身のクラブ生え抜き。15歳でU−18、16歳でU−23チームに飛び級で参加し、昨季はFAユースカップ決勝でスミス・ロウがいたガナーズを破って優勝する原動力となった17歳。カラム・ハドソン・オドイという選手だ。

 マウリツィオ・サッリ新監督が採用する4−3−3システムの左ウイングで先発したハドソン・オドイは、自慢のスピードを生かした巧みな“裏抜け”とドリブルで、プレミア屈指の右サイドバックであるエクトル・ベジェリンを何度もぶっちぎった。緩急自在の飛び出しからPKを獲得するなどいくつも好機を作り、この日のピッチで最も輝いた選手だった。

 W杯後の休暇で合流が遅かったエデン・アザールの代役として3つの親善試合で左ウイングを任され、同じくICCのインテル戦でも複数のDFに囲まれながら巧みにボールをキープ。続くコミュニティー・シールドでも先発し、チームはシティに0−2で完敗したものの、ここでも左サイドからの仕掛けで数少ないチャンスに顔を出したのがハドソン・オドイだった。電光石火のスピードと怖いもの知らずの姿勢は、トップレベルでも十分に通用することが示された。サッリ監督はこのままトップチームに定着させる意向を明かしており、アザール、ウィリアン、ペドロに次ぐサイドアタックの“第4の矢”としてチェルシーの秘密兵器になれるかもしれない。

 チェルシーには他にも、先のW杯に出場したルーベン・ロフタス・チーク(22歳)や、夏の親善試合でダビド・ルイスとアフロのセンターバックコンビを組んで高評価を得たイーサン・アンパドゥ(17歳)、今季はフランク・ランパード監督が率いる2部ダービーに期限付き移籍しているMFメイソン・マウント(19歳)といった有望株が目白押しだ。これまで下部組織出身の若手を育てる気がないと揶揄(やゆ)されてきたクラブだが、彼らの中から次代のジョン・テリーは生まれるだろうか。

シティで期待を背負うダビド・シルバの後継者

シティが生んだ18歳の天才MFフォーデンは夏に主力入りをアピール 【Getty Images】

 最後は、前年王者シティから小柄なMFフィル・フォーデン。彼もまた2000年生まれで、8歳からシティの下部組織に在籍し、つい数年前まではエティハド・スタジアムのボールボーイだったという根っからのマンキュニアン(マンチェスターっ子)だ。

 彼のことを、ジョゼップ・グアルディオラ監督は「天才」と誉めそやし、地元紙は「ウェイン・ルーニー以来、イングランドで最も有望な才能」と記事を書き、クラブのスタッフは「ストックポートのイニエスタ」と呼ぶ。そのプレーを見ると、小さいが視野の広さ、バランス感覚、スペースを見つけるセンス、そして綺麗なボールコントロールに見る天賦の才はなるほどアンドレス・イニエスタを思わせる。

 以前からトップチームに帯同していたフォーデンは、昨季のプレミアで、優勝メダルを受け取る資格条件となる“5試合”に途中出場している。晴れて17歳でリーグ歴代最年少の優勝メダル獲得者となったのだが、「もっとやれる」と思っていた本人は決して満足していなかった。

「やせっぽちに見えるが彼はファイターなんだ。イングランド人のメンタリティーを持っていて、決して諦めない」とはペップの言葉。フォーデンは昨季の悔しさを今夏のプレシーズンにぶつけ、ICCのバイエルン戦と、セルヒオ・アグエロの先制点をアシストしたコミュニティー・シールドのチェルシー戦で主力の仲間入りを猛アピールした。気付けば32歳になったダビド・シルバの後継者として、新シーズンはより出場機会が増えていくことだろう。

 アーセナルのスミス・ロウ、チェルシーのハドソン・オドイ、シティのフォーデンはいずれも同い年で、1年前にインドで行われたU−17W杯をイングランド代表のチームメートとして一緒に戦った仲だ。見事に優勝したこの大会では3人ともそろってゴールを決めていて、久保建英らを擁した日本代表をPK戦の末に破ったラウンド16の試合にも出場していた。スペインとの決勝で2得点を挙げたフォーデンは大会MVPにも輝いている。

 そんな黄金世代の彼らは、プレミアの舞台で一定の活躍を見せれば、すぐにギャレス・サウスゲイト監督のA代表からもお呼びがかかるだろう。東京五輪にも出られる年代だが、サッカー協会の複雑な事情により12年ロンドン五輪に続く「グレートブリテン代表」が結成されるかどうかは未定で、20年に彼らを見られるかどうかは微妙なところ。しかし、その先に待っている22年のW杯カタール大会には出場する可能性が高い。今から注目しておいて、絶対に損はないはずだ。

(文:寺沢薫/スポーツナビ)

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