“大谷シフト”は有効なのか? 相手チームの思惑と打撃停滞の背景

丹羽政善

相手が警戒するのは大谷の長打

大谷は相手シフトの裏をかき、バントを試みる場面も 【Getty Images】

 このあたりは、エンゼルスがあまりシフトを好まない根拠でもあり、ソーシア監督は、「対象とする数字次第だが、(シフトは)そこまで効果的ではない」と話し、続けた。

「それは、ウチのデータ部門が分析した結果でもある」

 大リーグで一番シフトを多用するのはアストロズの39.3%(左打者に対しては61%)。一番頻度が低いのがエンゼルスで3.3%(同8.2%)。シフトについては、チーム間でもこれだけ考え方に温度差があるのである。

 アストロズとエンゼルスのどちらが先を行っているかだが、大谷に話を戻すと、今のところは結果に大きな差があるだけに、今後、シフト比率が上がっても不思議はない。

 大谷は先月、シフトに対して何度かバントを試みて揺さぶりをかけたが、おそらくそれで相手がシフトをやめることはないだろう。バントヒットなら、むしろ歓迎。相手が一番警戒しているのは、大谷の長打なのである。

 相手にとって悩ましいのは得点圏で大谷を迎えた場合。大谷の得点圏打率は3割6分1厘と高いが、得点圏でのシフトが10回なのに対し、シフトなしは26回。さすがにランナーがいる場面では大胆なシフトを敷きにくい。そして大谷はそのシフトなしのケースで.590という驚異的なwOBAを誇る。よって8月2日、大谷は先頭打者として代打に起用されたが、ソーシャ監督は、「得点圏の方が理想」と口にしたのだった。

 2点差。得点圏に走者が進んだら大谷――。この日の試合展開では、そうした思惑通りには、いかなかった。

2/2ページ

著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント