ケガの苦しみを乗り越えた新井涼平 新たな自信を手に入れ日本記録更新目指す

折山淑美

首も補強することで技術的にもケガにも強い体に

ケガを経験したことで、今まで以上に自分の体を見つめなおし、コンディショニングもできるようになった 【写真:松尾/アフロスポーツ】

 ケガをして自分の体を見つめ直したことで、自分で体のコンディショニングもできるようになったという。これまでは痛みが出るとすぐに治療に行くなど他人任せにしていたが、今ではまずセルフケアをするようになった。ケガをしそうな予兆も痛みの具合で判断でき、練習をセーブできるようになった。

「社会人1年目だった14年くらいの体力に戻さなければいけないと思いますが、技術は固まってきつつあると思うので、戻すのは簡単だと思いますね。練習では86メートルを投げていた時と同じような投てき練習もできているんです。体力的にまだだと思う状態でそれをできているので、技術的にはドンドンいい方向に行っていると思います。それに以前と同じことをできていても、体が疲れないというのがあるんです。体力的な部分で本数はまだ投げられないというのはあるけど、投げ自体でここが疲れて動かなくなるとか、痛みが出る手前やケガの手前という疲れがないんです」

 14年の頃は初速だけで投げていて、やりを吹き上げさせなければ80メートルを超えるという感じだった。だが今はやりが吹き上がらない投げが安定してできるようになっている。

 初速を高めようとするだけではない、他の技術にまで意識ができているという証拠だ。
「最近は両足と両腕のうまい使い方を意識することで、軸も使えているなというのが以前との大きな違いだと思います。以前は右腕を引くことを意識するだけで、左腕は投げる瞬間に止めれば右が出てくるので思い切り振って、という感じでした。でも今は全部が連動して動かせている感覚なんです。特に首の補強をするようになって軸の取り方がうまくなったのかなと思いますね。体幹トレーニングといっても多くの人は腰のあたりをやればそれで終わってしまうそうですが、首も体幹の大きな軸になるのでそれをやるとバランスが変わってくるそうなんです。首の補強をやるようになってからは投げる時に軸が乗るようになったし腰痛もなくなってきたので、本当にいい方向に進んでいると思います」

アジア大会は「一発に合わせていきたいです」

アジア大会では「一発に合わせていきたい」と語る新井(右)。チームメートの斉藤真理菜(左)とともにメダル獲得を目指す 【スポーツナビ】

 約11カ月間ケガで苦しんで落ちた体力は、同じくらいの時間をかけなければ取り戻せない。さらに大きなビジョンで考えれば、今年1年間は体力をしっかり戻す年にして、来年はドンドン技術を上げていき、2020年につなげられるのがベストだという。

 だが今年は8月にアジア大会(インドネシア・ジャカルタ)がある。
「理想を言えば、東京五輪へ向けていい準備ができるようにするためにも、来年には日本記録を投げられるのがベストですね。だからそのためにも、今年のアジア大会を大きなステップにしなければいけないし、悪くても85〜86メートルを投げて優勝を狙えるようにしなければいけないと思います。今の練習でできているものを見ればそれは可能だと思うし、それをできれば今年の後半には87メートルも狙えるようにもなると思うので。無理やりやるのではなく、冷静に体力をしっかりあげていってアジア大会の一発に合わせていきたいですね」

 苦しんだ1年間があったからこそ得られた新たな自信。新井の表情は明るい。
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アジア大会 8月19日〜30日
TBS系列連日生中継
陸上競技は大会8日目25日から男子100m予選

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著者プロフィール

1953年1月26日長野県生まれ。神奈川大学工学部卒業後、『週刊プレイボーイ』『月刊プレイボーイ』『Number』『Sportiva』ほかで活躍中の「アマチュアスポーツ」専門ライター。著書『誰よりも遠くへ―原田雅彦と男達の熱き闘い―』(集英社)『高橋尚子 金メダルへの絆』(構成/日本文芸社)『船木和喜をK点まで運んだ3つの風』(学習研究社)『眠らないウサギ―井上康生の柔道一直線!』(創美社)『末続慎吾×高野進--栄光への助走 日本人でも世界と戦える! 』(集英社)『泳げ!北島ッ 金メダルまでの軌跡』(太田出版)ほか多数。

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