ロイヤルズが16歳投手を獲得した理由  担当スカウトが語る結城海斗の可能性

清水岳志

順調に成長すればダルになれる素材

188センチと長身の結城投手。体をムチのようにしならせる柔らかい投球フォームから最速144キロのストレートと多彩な変化球を操る 【写真は共同】

 結城投手は中学2年生で神宮球場で行われたシニアの全国大会に出場、3年では日本代表に選ばれ、7月にアメリカ・イリノイ州で行われた全米選手権に出場した。そこで、アメリカでやりたいという気持ちが沸いた、と本人は言う。

――全国の高校から勧誘があったのでは?

 20校ぐらいかなと思っていたら50校ほどあったらしいです。まあ、獲得競争ですわ。あまりにたくさんでご両親が困ってしまったそうです。本人の憧れもあるし、ならばいっそ、アメリカに行こうと。私と彼は6年生からの付き合いですからね。アメリカへの憧れも知っていたし、(私の)手元においておきたい気持ちもあった。結城家としても、うち(ロイヤルズ)からオファーされることを待っとったと思います。そんな言葉にできない信用、信頼関係は築いてきました。

――投手としての長所は?

 球速はマックスで144キロです。変化球はスライダー、カーブ、チェンジアップ、スプリット、ツーシーム、カットボールを投げます。三振が取れるのは落差の大きいスプリットです。ダルビッシュのように変化球を投げるのが好きで、工夫したり、たくさん吸収したいというプロ意識があります。188センチ73キロで手足が長くて、体全体が柔らかい。フォームの特徴は体をムチのようにしなって使ううまさがある。ダルビッシュを中3で見ていますが、魅力が重なります。この2人以上の素材は見たことがない。順調に成長すればダルビッシュのようなピッチャーになると信じてます。

――どれくらいでメジャーに上がれますか?

 ルーキーリーグを3年ぐらいはやらないといけないでしょう。そこから1A、2A、3Aと上がっていく。5、6年はかかる。22歳ぐらいにメジャーに上がれれば順調と言えるでしょうね。まだまだ幼い、おぼこい(無邪気な、うぶな、初心な=大阪ことば辞典より)です。でも、負けず嫌い。マウンドでは必死やもんね。それがええんです。今の初心を忘れずにしてほしいですね。

――高校を経ないでアメリカに行くというのはリスクもありますが?

 昨年、アメリカでやったときに言葉は通じないのに、同じ野球ができた喜びがあったようです。そこで日本のプロ野球という選択はなくなってしまった。彼のスポーツに対する感性なんです。身体的なポテンシャルは重要ですが、一番大事なことは強い意志ですよ。ご両親も反対せずに見事な決断をした。彼らの意志を信じて私も未来に賭ける、ということでもあります。確かに中学を卒業してすぐにアメリカに行って成功した者は少ないです。でも、日本でドラフトされて成功するのは2割ほど。アメリカという土地で、その2割の成功者の仲間にしてあげることが球団の使命です。

成功すれば大きな道しるべ

「甲子園よりアメリカでしたいという気持ちが強くなった」

 会見での結城投手の言葉だ。このフレーズは日本球界関係者にはショッキングだ。日本の高校野球を経験せずにメジャーで活躍したのはマック鈴木(元ロイヤルズほか)ぐらいか。成功すれば大きな道しるべになるし、そうならなかったら多難な道ということをあらためて思い知らされる。

「早くアメリカに行って野球がしたい」

 まずは、ピュアでおぼこい、16歳の選択を尊重したい。

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著者プロフィール

1963年、長野県生まれ。ベースボール・マガジン社を退社後、週刊誌の記者を経てフリーに。「ホームラン」「読む野球」などに寄稿。野球を中心にスポーツの取材に携わる。

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