「5レーン」「ハーフスペース」とは? 現代サッカーの戦術を分かりやすく解説
マンチェスター・シティのジョゼップ・グアルディオラらが実践する「ポジショナル・プレー」とは? 【写真:ロイター/アフロ】
横3分割と縦4レーンの考え方
例えば、自陣では安全第一でリスクを冒さないプレーをすべきだが、敵陣では相手を抜けばシュートやラストパスにつながるならばリスクを負って1対1の勝負を仕掛けるべきだというように、選手に求められるプレー内容を整理するための区分けである。もちろんフィールドの中に横線が引かれているのはハーフウェーラインとペナルティーエリアだけで3等分する線は引かれていない。考え方を示したものだ。
同じような考え方として、今度はフィールドを縦方向へ区切るようになる。1990年代あたりまでは4分割だった(右、中央右、中央左、左)。こちらはプレーのガイダンスというよりも主に行動範囲の指針だ。例えば、右のレーンにいるFWが中央右のレーンに移動するのは良いが、中央左のレーンまでは移動しない。あまり大きくポジションを移動してしまうと、全体のバランスと位置関係を損ねるからだ。4レーン理論はゾーンディフェンスの普及と重なっていて、攻守にわたって4つのレーンを効率的に使ってアンバランスを回避しようという考え方である。
5レーン理論とハーフスペース
【図1】 【スポーツナビ】
中央を細分化したのは、ハーフスペースと呼ばれる中央右と中央左のレーンを強調する意図からだ。ゾーンディフェンスの普及によって、ゾーンの攻略方法も広まっていった。ゾーンが普及し始めた1980年代末には、バイタルエリアが攻略ポイントとされていた。
バイタル(vital)は英語で「死活的な、極めて重要な」という意味。攻撃側にとってゴールへつながる生命線となる地域という認識である。具体的には、MFのラインとDFラインの中間にあるスペースを指す。ここへパスをつなぐと、DFの1人を釣り出すことができる。例えば、4バックのセンターバック(CB)を釣り出すと、守備側のDFラインは4人から3人に減る。そして前へ出たCBのカバーリングポジションをとるために、残りの3人はボール方向へ移動する。そのDFの移動によって生じるスペースが攻撃側にとってラストパスを狙える場所になるわけだ。(図1)
【図2】 【スポーツナビ】
守備側が4−4−2のフォーメーションでMF4人、DF4人のラインを形成して4−4の守備ブロックを組んだ場合、各選手を線で結ぶと3つの四角形がある。バイタルエリアとして想定されていたのは、主に3つのうち左右の四角形だった。
なぜ、中央の四角形ではないのか。主な理由は3つある。第一にその場所へのパスの入れにくさ。単純に中央は守備側がより重点的に固めているエリアだからだ。第二に、そこでパスを受ける選手は相手ゴールへ背を向ける格好になるため、次のプレーへの視野が確保しにくい。第三に、そこからラストパスを通すとしても、中央から斜めへのパスコースとなり、ゴールから遠ざかる方向へのパスになってしまう。(図2)
【図3】 【スポーツナビ】
簡単にいえば、中央よりも中央の左右のスペースのほうが侵入しやすく、そこからの展開もしやすい。4レーンよりも5レーンとすることで、この中央左右の場所(ハーフスペース)を意識することができる。そのために5レーンで考えるようになっているわけだ。