もう「隙あらば」と言わせない! 広島4年目・野間、打撃覚醒の秘密

ベースボール・タイムズ

速球への対応に進歩

6月6日の日本ハム戦でサヨナラ打。お立ち台に上がるも、仲のいい鈴木(右)からの水かけを受けられず、その場にたたずむ。チーム全体の「いじられキャラ」だ 【写真は共同】

 3年目の昨季は98試合に出場。代走のスペシャリストとして、幾度となくチームの勝利に貢献した。スタメン出場した松山が終盤に安打を放つと、代走でベンチから一塁ベースに走る野間の姿は、勝ちゲームの定番となった。リーグ連覇を果たしたチームの一員として、欠かせぬピースであったことは間違いない。

 そして今季、課題だった打撃面で飛躍の要因となったのが、速いストレートへの対応だ。昨年までは、差し込まれて力負けしていた速球をファウルで粘った末に、最後は見事に打ち返すシーンが増えている。

「相手投手の傾向を見て、最低限の情報だけを頭に入れて打席に入っている。余計なことは考えない。浅いカウントの時は、基本的に相手の一番速い球を想定して、変化球が来れば対応する。追い込まれたら、とにかく三振しないように食らいついていくだけ。技術的には、できるだけ右肩を開かないで、速球に振り負けないように最短距離でバットを出す。基本的に逆方向を意識した打撃をしている」

 その意識は結果にも現れている。速球はファウルで粘りながらセンターから逆方向へ打ち返し、変化球はポイントをやや前にずらして思い切り引っ張る。今季1号となった前述の満塁弾を含む3本の本塁打は全て変化球を打ったもので、いずれもライトスタンドへ運んでいる。

新井譲りのいじられキャラも魅力

 野間のもう一つの魅力は、チームの誰からも愛される「いじられ役」であることだ。

 2学年下の鈴木とは、同じ外野手のライバルでありながら仲が良く、常に行動を共にしている。選手だけでなく、コーチやOBなど、誰からも声をかけられるキャラクターで、チームのムードメーカーとしても、貴重な存在となっている。

 6月6日の北海道日本ハム戦では、「生涯初」というサヨナラ打を放ってお立ち台へ。しかし、ヒーローインタビュー後の恒例となっているチームメイトからの水かけを受けられず、自らペットボトルの水を頭からかぶった。「みんなから蹴りを入れられたり、僕の時だけ祝福の仕方が違う。水も誰も用意していなかったみたいで……それもどうかと思いますが」と笑った。

 チームの精神的支柱である新井貴浩は、事あるごとに野間をいじる。若手選手との絡みでは選手の性格を考慮するという新井だが、「打率3割を切ったら、いじるのをやめると言われているので、今の打率をキープできるように頑張る」という野間の言葉が、2人の良好な関係を表している。

 丸の故障という“隙”が生まれたチームに「隙あらば」の野間が、自らのレベルアップで見事にその座に滑り込んだ。そして、球団初のリーグ3連覇へのカギを握る存在にまで成長した。その頼もしき姿を目の当たりにした新井は、ケガから復帰して今季初めて1軍に昇格した際にこんなことを言っていた。

「野間さん、今年はオールスターに出るらしいよ」

 いよいよ冗談ではなくなってきたその“いじり”が現実になった時こそ、みんなで叫ぼう。

『ノマノマ、イェーイ!!』

(大久保泰伸/ベースボール・タイムズ)

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著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

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