開幕好スタートの新生メッツ 新監督の手腕とベテランの統率力が融合

杉浦大介

先発投手を中心に安定感は随一

リーグ屈指のリーダーであるフレージャーらベテラン勢が先頭に立ち、チームを盛り上げている 【Getty Images】

 もちろんまだシーズンは始まったばかりなのだから、メッツがこのまま突っ走ると断言はできない。好調に勝ち進む中で、実は懸念材料も見え隠れしている。

 正捕手のトラビス・ダーノーが開幕直後に右肘手術で今季絶望になったのに続き、2番手のケビン・プラウェッキも死球で左手を骨折し、捕手は早くも人材難になった。投手陣では5年前はオールスターに先発したマット・ハービーが低調で、すでに先発ローテーション落ちを言い渡されている。ブルペンも完璧とは言えず、今後に多少の不安を投げかけている。

 ベテラン補強が成功したのはすでに書いてきた通りだが、高齢ゆえ、シーズンを通じた貢献が期待できるかには疑問が残る。健康面のリスクもあり、1年のどこかでケガ人がかさむ可能性は否定できない。

 ただ、それでも、今季のメッツはプレーオフ争いには残ると予想する関係者は少なくない。最初の20戦中で計12奪三振以上のゲームが9戦もあるなど、先発を中心とした投手陣の安定感はやはり心強い。ハービーが外れても、昨季18勝の左腕ジェーソン・バルガスがまもなく復帰する。ブルペンはシーズン中でも補強可能だけに、大崩れはないと見られているのだろう。

開幕17戦中13勝でワールドシリーズ確実?

“今季のメッツは無印のまま世界一に駆け上がった13年のレッドソックスに似ている”。『ニューヨーク・デイリーニューズ』紙のジョン・ハーパー記者は、開幕直後にそう記していた。あの年のレッドソックスはシェーン・ビクトリーノ、マイク・ナポリ、ジョニー・ゴームス、デビッド・ロス、上原浩治といった仕事人的なベテランの頑張りが起爆剤になり、前年最下位から奇跡的な優勝を果たしたのだった。同じように、ベテラン、若手をうまく融合させ、“ミラクル・メッツ”はこのまま上位進出を果たせるか。

「このチームでは誰もがヒーローになれる。そんなふうに感じられるよ。多くの選手が“これまでプレーした中でもっとも才能にあふれたチーム”と言っているくらいに層が厚いから、僕はまだ多くの打席に立てていない。ただ、それでも僕はワールドシリーズに勝てるチームでプレーしたいんだ」

 11年のドラフト1巡目(全体13位)指名選手ながら、今季は控えで貢献しているブランドン・ニモーはそんな言葉を残していた。“ワールドシリーズに言及するのは早すぎる”と嘲笑することなかれ。メッツが開幕直後の17戦中13勝を挙げたシーズンは今季以外に過去2度あり、1986年、2015年はどちらもワールドシリーズに進出している。だとすれば……。ヤンキースと比べてまだ地元での注目度は低いが、メッツが本拠地を置くクイーンズに盛大なBuzzが戻って来る日は、もしかしたら近いのかもしれない。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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