選手名鑑ツッコミどころ大賞2018・パ編 秋山翔吾の趣味が庶民的すぎる

カネシゲタカシ

昨季首位打者に輝いた西武・秋山の趣味は意外と地味 【写真は共同】

 以前スポーツナビで、週刊ベースボール増刊「プロ野球 12球団写真名鑑号」(以下「写真名鑑号」)から、個人的に「おや?」と思うところに勝手にツッコむ記事を書いた。2016年の春だった。
 
 あれから2年。選手の顔ぶれも変わり、新たなツッコミどころを探してみることにした。題して「選手名鑑ツッコミどころ大賞2018」。開幕直前にふさわしい下世話な企画で恐縮だ。なお、今回は球団別に見ていきたい。まずはパ・リーグから。

福岡ソフトバンク編:話だけでも3年いけるなら……

 まず気になったのは、横浜高からやってきた期待のルーキー・増田珠につけられた番記者寸評。

「あこがれの先輩・松田との対面には『話だけでも3年頑張れる!』と無邪気な反応も」

 なるほど。“○○だけでご飯3杯はいける”みたいな表現を、増田流に野球に置き換えるとこうなるらしい。話だけで3年頑張れるなら、ハイタッチで5年、打撃指導で10年は余裕だろう。そんな増田くんの「理想のタイプ」欄をみてみると「野球のことを第一に考えてくれてお尻に火をつけてくれる人」とある。

これ、もう松田宣浩そのものじゃないか。 【イラスト:カネシゲタカシ】

 マッチ&マスっちの師弟コンビ誕生で、鷹の黄金時代はまだまだ続くだろう。

 さらにツッコミどころを探す。例えば16年に入団した育成の渡辺健史。彼が挙げる「思い出のシーン」が「03年日本シリーズ第6、7戦の杉内、和田の好投」と、ただただホークスファン目線になってるのは味があっていい。この欄に自分以外の試合を書いているのは、球界広しといえど彼ぐらいだ。

 あと細かいところでは栗原陵矢と、尾形崇斗が掲げる「理想のタイプ」。栗原が「新垣結衣みたいな人」、尾形が「深田恭子みたいな人」。これってそれぞれ「新垣結衣」と「深田恭子」で良くないだろうか?

埼玉西武編:庶民派が過ぎる秋山翔吾の趣味

 秋山翔吾は、去年も首位打者を獲得するなど華々しい成績を挙げるも、“地味キャラ”と言われることが多い。裏を返せば親しみやすいということだが、それは写真名鑑号に書かれた秋山の「趣味・特技」からも伺える。

「ラジオ聴取」

 若手を中心に「YouTube視聴」や「Netflix」なんて趣味が登場するなか、秋山の「ラジオ聴取」は庶民派が過ぎる。そのうち「アマチュア無線」とか「鉱石ラジオの組み立て」が追記されることを願う。

 また、微笑ましい郷土愛を感じる趣味といえば、静岡出身の2年目、鈴木将平の「富士山グッズ集め」。ちなみに西武は山川穂高、外崎修汰、多和田真三郎と“富士大選手集め”にいそしんでいるので、気が合うといえば合う。ちなみに富士大は岩手県花巻市にある。

東北楽天編:思い出のシーンがやたらと充実

 楽天の選手に限った話ではないが、最近の写真名鑑号は、やたらと「思い出のシーン」欄が具体的で充実している。これも個人が主役となる今の時代の傾向なのだろう。

野元浩輝「高3夏の最後の試合。甲子園を目指していたが自分の力を出しきれず敗退。今までで一番悔しかった。忘れられない試合」

西宮悠介「高校3年夏の県大会準決勝(宇都宮工高戦)、9回二死二、三塁の一打同点の場面で打てなくて、頭が真っ白になったこと」

 これらは字数が限られる選手名鑑において、なかなかのスペースを占めている。番記者寸評で「もう後がない」とか余計なことを言われたくない選手には、この欄を目一杯書くことをお勧めする。

 また、“楽天のサブちゃん”こと福山博之の思い出がロマンチックすぎることは2年前のコラムでも述べた。

「10年8月の大院大戦で完投勝利、当日結婚式を挙げた先輩にウイニングボールをプレゼントしたこと」

 そんな福山自身が掲げる理想のタイプは「背がやや高く細くて白い人」。どうしよう。微妙にストライクゾーンが狭い。

オリックス編:全プロ野球ファンが「わかっとるわ!」

 まず最初に目に飛び込んでくる福良淳一監督への番記者寸評がいい。

「今季こそチームに“スキのない野球”を浸透させて22年ぶりの優勝を目指す」

 寸評欄を借りて“監督、スキだらけでっせ”と暗に伝える匠の技。番記者の本音が見え隠れするのが面白い。

 あとは、岡崎大輔の趣味・特技欄が「野球」で、全プロ野球ファンが「わかっとるわ!」の状態だったり、小林慶祐の好きなタレント欄「AAA」の隣に血液型「B」が載っててややこしかったり、細かなツッコミどころがある。

 それ以外で気になったのは、新入団の鈴木康平の登録名「K−鈴木」。チームに鈴木昂平がいることから、イニシャルと、三振の「K」を取って「K−鈴木」に決まったという。しかし、どうしても思い浮かぶのは「スズキの軽」。球質がそうではないことを祈りたい。

北海道日本ハム:清宮幸太郎の理想のタイプは?

 写真名鑑号の表紙には12球団の看板選手の顔がズラリと並ぶのが定番である。今年の日本ハムは清宮幸太郎だ。大谷翔平が去りしいま、この大抜擢に異論を挟む声はない。それほどの期待を背負った大器である。では清宮のプロフィール欄を見てみよう。注目は「理想のタイプ」だ。

「ヒミツ」

 壇蜜の妹分か何かの可能性もあるが、ヒミツは秘密だろう。さすが大物ルーキー、自分の立ち位置をわきまえている感じが、かえって清々しい。「明るい人。あまり年の差がないほうが良い」(石川直也)とか、「色白のショートカット」(玉井大翔)とか、積極的に情報公開する姿勢とは対照的だ。色白のショートカット、か。レアードあたりどうだろう?

千葉ロッテ:思い出のシーン相思相愛ならず!

 各選手の「思い出のシーン」欄には、チームメイトが登場するパターンがある。15年に秋田商のエースとして夏の甲子園に出場した成田翔は、思い出のシーンをこのように挙げる。

「高3夏の甲子園準々決勝で平沢大河に本塁打を打たれたこと」

では、くしくもロッテでチームメイトとなった、その平沢の「思い出のシーン」を見てみよう。

「高3夏の甲子園決勝の東海大相模高戦で敗退」

 惜しい、相思相愛ならず! しかし、お互いに悔しい思い出を挙げているところは共通している。

 今回、育成選手も含めたプロ野球選手全員のプロフィールを見たが、「思い出のシーン」に、悔しかった場面を挙げる選手は決して少なくない。多くの選手が悔しさを糧に成長し、プロ入りを果たしたと言うことがわかる。

 ただ、なかにはソフトバンク育成の長谷川宙輝のように「高校で野球をする人数がそろったこと」など、それどころじゃなかった感を出す選手もいる。将来、野球人口が減ると、こういう思い出がポピュラーなものになるかもしれない。
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著者プロフィール

1975年生まれの漫画家・コラムニスト。大阪府出身。『週刊少年ジャンプ』(集英社)にてデビュー。現在は『週刊アサヒ芸能』(徳間書店)等に連載を持つほか、テレビ・ラジオ・トークイベントに出演するなど活動範囲を拡大中。元よしもと芸人。著書・共著は『みんなの あるあるプロ野球』(講談社)、『野球大喜利 ザ・グレート』(徳間書店)、『ベイスたん』(KADOKAWA)など。

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