羽生連覇の要因、勝敗を分けた差は? 安藤美姫が平昌五輪の男子FSを解説

構成:スポーツナビ

田中選手はトップで争うスタート地点に立てた

18位という厳しい結果に終わった田中刑事だが、安藤さんは「もっと強くなる」と期待を寄せる 【写真:松尾/アフロスポーツ】

 銅メダルのハビエル選手は、非常に落ち着いていたと思います。普段はもう少しキャラクター性が見えるスケーティングや表情をするのですが、今回は冷静だった印象の方が強いです。落ち着いていられたのはやはり五輪に3度出ている経験が大きいですし、その冷静さとメダルを取るという気持ちの強さのバランスがうまく取れていたんじゃないかと思います。

 4位の金博洋選手(中国)は惜しくもメダルに届きませんでした。後半の4回転トウループを下りていたら、メダルが取れたかもしれません。今回一番悔しい思いをしたのは金選手だと思います。金選手も羽生選手と同様にケガからここまで復活してきた。4回転ジャンプは負担がかかりますし、その中で4回転ルッツを決めるまでに状態を戻した。その努力を思うと胸が痛くなります。でも2022年の五輪は北京で行われます。「そこで輝け」と言われているんだと思って今後も頑張ってほしいです。

 日本からもう1人出場した田中刑事選手(倉敷芸術科学大)は、18位と厳しい結果に終わりました。しかし、4回転サルコウをきちんと決めましたし、後半の4回転トウループも小さいミスで終えています。今回は初めての五輪でしたし、トップで争うスタート地点に立てたように思います。SPもしっかりと通過し、そこでのミスも修正してきた。そうした修正力や、大舞台でエレメンツを決める実力も備えている選手なので、今後もこれを良い経験にしてほしいと思います。同じ国に五輪の1位と2位がいることなんてほとんどないですし、それを幸せな環境にいると感じて、頑張っていけばもっと強くなると思います。

2つの歴史的瞬間を見届けられた幸せ

歴史を塗り替えた羽生、宇野、そしてハビエル・フェルナンデス。互いの健闘をたたえ合った 【写真は共同】

 大会全体の総括としては、第1グループから4回転ジャンプが見られる時代がやってきたということで、男子シングルの時代が変わったなと思いました。今回はノーミスする選手が少なかったので、欲を言うとSPとFSで完璧な演技を見たかったです。

 一番心に残ったのはネイサン選手です。先ほども言いましたが、あのSPからここまでのFSをやってきた。4回転フリップで手をついた以外は完璧でした。あとは米国のビンセント・ジョウ選手です。4回転ジャンプが注目されていますけれど、最後の手を上げて3回転ルッツからシングルループを挟んでの3回転フリップは難しいコンビネーションなので、それをさらっとやってのけるところを見ると、将来的には日本にとって怖い存在になるかと思います。

 それでもこうして全体的にレベルが上がった中で、羽生選手の優勝と宇野選手の2位は日本の誇りですし、歴史を塗り替えたと思います。あとはハビエル選手のスペイン人初のフィギュアスケート五輪メダリストというのも歴史に残る瞬間だと思うので、2つの歴史的な瞬間を見届けることができたのは幸せでした。

(取材・文:大橋護良/スポーツナビ)

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