森保ジャパンが臨むAFC U-23選手権とは? チーム作りとサバイバルレースの第一歩

川端暁彦

「U−21」としてもベストオーダーではない

EAFF E−1サッカー選手権でA代表に選出された初瀬は体調不良で離脱。招集を見送られた選手もおり、ベストオーダーではない 【写真は共同】

 大会は参加16カ国を4チームずつ4ブロックに分けてのグループステージ(総当たり戦)を実施し、各ブロックの上位2チームがノックアウトステージ(決勝トーナメント)へ進むオーソドックスな方式だ。B組に属する日本は、初戦(10日)で中東のパレスチナ、第2戦(13日)で東南アジアのタイ、そして第3戦(16日)では同じ東アジアの海を挟んだ隣国・北朝鮮と対峙(たいじ)することになる。

 いずれもU−23、というより日本以外はすべての国がU−23の編成でこの大会に臨んでいるので、基本的には年上を相手に戦う大会となるため、「アジアの大会なんだから勝つべし」とは言い切れないところもあるのだが、やはりやるからには勝利を目指すのも当然。森保監督は優勝を目指すのは当然としつつも、「(決勝か3位決定までの)6試合をやりたい」と語っているから、4強進出をひとつのラインに設定しているようである。前々回大会の手倉森ジャパンが8強でイラクに敗れていることを考えても、妥当な目標設定だろう。

 そもそも日本は「U−21」のカテゴリーでもベストオーダーではないという事情もある。シーズンを通じてフル稼働してきた選手たち、たとえばDF中山雄太(柏レイソル)、杉岡大暉(湘南ベルマーレ)、DF冨安健洋(アビスパ福岡→シントトロイデン/ベルギー)といった選手たちの選出は疲労を考慮して見送られ、昨年は2つの世界大会に出場したFW久保建英(FC東京)も同様に選外となった。

 さらに海外でプレーするようになったMF堂安律(フローニンゲン/オランダ)のような選手も呼べない。さらに堺の直前合宿に参加していた東アジアE−1選手権のA代表にも選ばれたMF初瀬亮(ガンバ大阪)と、昨年大ブレークを遂げた期待のFW前田大然(水戸ホーリーホック)が体調不良と負傷で離脱。さらなる戦力ダウンを余儀なくされてしまった。

勝利を目指すのは当然のこと

タイ遠征で結果を残した神谷優太(10)。サバイバルレースの第一歩が始まる 【写真は共同】

 とはいえ、森保監督はこの大会を2年後の決戦に向けて使える選手の層を掘り起こして広げる「ラージグループを作っていく」過程ととらえているので、かえって新しい選手にチャンスが来たとも言えるかもしれない。昨年12月のタイ遠征では昨年のU−20ワールドカップで選外だった選手ばかりを集めて「発掘」に励んでもいる。その成果が問われることになりそうだ。

先発のフォーメーションは3−4−2−1の形がベースになりそうだ 【スポーツナビ】

 先発のフォーメーションは広島時代にも採用していた3−4−2−1の形がベースになりそうだ(別表)。4−4−2との併用も考えられており、「対戦相手や試合状況に応じて複数のシステムを使い分けられるチーム」(森保監督)が1つの到達目標であり、大会中もあえて使い分ける機会が出てくるだろう。

 日本代表のユニホームを身にまとって戦う以上は、勝利を目指すのは当然のこと。だからこそ得られるモノもある。その上で、2年後の東京五輪に向けて戦っていける、あるいは鍛えていく価値のある選手かどうかを指揮官が見極める、そういったシビアな場にもなるだろう。最初の公式戦となる今大会はチーム作りとしての第一歩であり、サバイバルレースとしても第一歩。東京五輪まで残すは2年半。長いようでいて、そう長くもあるまい。

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著者プロフィール

1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。フリーライターとして取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。創刊後は同紙の記者、編集者として活動し、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月からフリーランスとしての活動を再開。古巣の『エル・ゴラッソ』をはじめ、『スポーツナビ』『サッカーキング』『フットボリスタ』『サッカークリニック』『GOAL』など各種媒体にライターとして寄稿するほか、フリーの編集者としての活動も行っている。近著に『2050年W杯 日本代表優勝プラン』(ソル・メディア)がある

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