ソフトB千賀滉大の長くて濃い1年 苦しみの末に手に入れたもの
タイトル獲得は不思議な感じ
最高勝率のタイトルを獲得した千賀(写真左)。来年は「先発投手として1番の魅力」と語る最優秀防御率1位を狙う 【写真=BBM】
そうですね。みんなには「投げないほうがいい」って言われましたけど、僕自身、納得できるピッチングがあまりなかったですし、その前の試合も良くなかったので(9月25日、ヤフオクドームでの東北楽天戦で6回7失点)。背中が痛い中でもしっかり納得するものを出さないと、クライマックスシリーズ(CS)への不安もありましたから。もしCSや日本シリーズがないのであれば、正直投げなかったと思います。でも、この先のことを考えると自分の調子というものをしっかり取り戻さないといけない。だから投げるしかないという感じでしたね。
――6回3失点で降板し、このままでは負け投手になってタイトルも逃すという9回2死から上林誠知選手が同点タイムリーを放ち、タイトルを手にしました。
不思議な感じでしたね。もうない、と思っていたものがいきなり転がり込んできましたから。ただただ、「ありがとう」という感じでした(笑)。
――やはりタイトルへのこだわりはありましたか。
最初は「取れたらいいな」くらいでしたけど、後半戦になるにつれて「取れるんじゃないか」という気持ちも出てきました。でも先ほども言いましたが、最後は自分のボールをしっかり投げることのほうを優先していましたね。それでタイトルがついてきたらいいし、ついてこなかったらついてこなかったで、また来年頑張ればいいと思っていたので。もちろん、手に入ったときはうれしかったですけど。
気持ちが入っていた日本S初戦
いや。何戦目に投げようが勝たなければならないことに変わりはありませんから。球場の雰囲気もファンの声援の圧がいつもより大きかったですし、1戦目に投げるからには相手バッターにプレッシャーをかけたい、チームに悪い流れを持ってこないようにとか、そういうことは考えていました。でも、だからといって自分自身に何か変化があったわけではないですし、普通だったと思います。
――7回1失点で勝利投手になりました。
やっぱり気持ちは入っていたので、それなりのボールが投げられましたね。それにチームがヨーイドンで(初回に)点を取ってくれたので、最少失点で回るだけでしたから。しっかり投げることができました。
――横浜で連敗して3勝2敗で福岡へ戻ってきた第6戦。先発を予想されていましたが、マウンドに上がったのは東浜巨選手でした。
僕は最初から7戦目で先発する予定でした。相変わらず背中の痛みはありましたけど、中6日でも(第6戦に)行ける状態ではあったんです。でも、最後に(第7戦で)回ってきたら絶対に負けられない試合になるので、そこでしっかり投げるために準備をしようと。正直、その前に決まると思っていたし、「決まってくれ」「回ってくるなよ」と思っていたんですけど(笑)。それが横浜で連敗して、少しずつ緊張感が増してくる中で、「来るのかな」という気持ちも出てきて。でも、最後は投げる投げないに関係なく、日本一になることができたので。
防御率1位に魅力がある
とにかく背中が痛いのは本当に苦しかったですから。投げて苦しい、投げて苦しいの繰り返しは本当にイヤなので。そうならないようにしっかり鍛え上げていきたいと思います。
――投球の内容についてはいかがでしょうか。17年はそんな状態でも球速は出ていました。
振り絞らなくても今くらいのボールが放れるようになりたいですね。もっともっと全部の能力を底上げできるように。(16年は)12勝、(17年は)13勝ときていますけど、満足することはできていませんから。もっと上を目指していきたいです。
――とはいえ2年連続で勝率第1位を争うほど17年も“負けないピッチャー”でした。
そこに関しては野手の方が打ってくれたというのもありますし。でも、負けないピッチャーということは計算できるピッチャーということでもあると思いますし、そういうふうになっていきたいと思っていたので、その点はいいことかなと思います。
――18年に狙っていきたいタイトルはありますか。
勝ち星に関してはチームの状況にも左右されるので、やっぱり防御率。今年の(菊池)雄星さん(埼玉西武)もそうですが、防御率で1位になるというのは先発ピッチャーとしての一番の魅力だと思いますし、そこで名前が挙がるような選手になりたいですね。18年はタイトルを1つだけじゃなくて、たくさん取れるような数字を残せたらと思います。
(取材・構成=杉浦多夢)