スーパーGT2017シーズンが決着 第7戦のタイが勝敗を分ける

吉田知弘

GT300クラスはグッドスマイル初音ミクAMG

10シーズンで3度のチャンピオンを獲得した初音ミクGTプロジェクト 【写真:吉田成信】

 昨年は国産マシンの活躍が目立ったGT300クラスだが、今年は欧州のFIA−GT3マシンが優勢。その中でも開幕戦の岡山を制し、シーズンを通して安定したパフォーマンスを披露していた#4 グッドスマイル初音ミクAMG(谷口信輝/片岡龍也)が14年以来となるシリーズチャンピオンを獲得した。

 国内で絶大な人気を誇るボーカルアンドロイド『初音ミク』のデザインが描かれているマシンということで、レースファンのみならず初音ミクファンからも注目を集めているチーム。今年は「初音ミクGTプロジェクト」発足10シーズン目と節目のシーズンで、今ではお馴染みとなっている“痛車”として始めてスーパーGTに参戦したことでも有名だ。

 最初は異端のような目で見られたことも多かったが、11年に谷口が加入し初のチャンピオンを獲得。翌12年には片岡を招き入れ、14年に2度目となるタイトルを獲得した。15年からマシンをBMWからメルセデスに変更。2年間は苦戦を強いられるも、我慢しながらも努力してきたことが今年ようやく実を結び、3度目となるシリーズチャンピオンにつながった。

「まずはホッとしています。ポイントリーダーとしてもてぎへ来て、それなりに差もあったのですが、まったく余裕はなかったです。厳しいレースになり、14年みたいに3位を苦労して獲得するという流れになりました。本当に今日は勝てませんでしたが、チャンピオンを獲得できたことにホッとしております」と谷口。過去2回のチャンピオン獲得時には涙を見せていたが、今回はどちらかというとプレッシャーから解放された安堵(あんど)感の方が大きかったようだ。

 また片岡は「開幕戦の優勝から始まって、ヨコハマタイヤさんとここ数年苦労しながら開発してきたタイヤが、結果として現れてきました。毎レース、スピードあるマシンとタイヤでした。自分のキャリアでも、これだけ手応えのあるシーズンはなかったと思います」と、今シーズンを振り返った。

片山右京監督「本当に厳しい戦い」

 チームを指揮する片山右京監督も「今年はGT300はGT3の各自動車メーカーが本当に力を入れていて、本当に厳しい戦いでした。その中で横浜ゴム100周年ということもあり、『今年は負けられない』と年頭から目標にしてきました。いい時ばかりでなく、厳しい時もありましたが、ドライバー2人がしっかりと耐えて、最終的にチャンピオンを取ってくれて感謝しています」と、ドライバーやチームスタッフ全員に感謝の気持を伝えていた。

 そして彼らも、今季の勝敗を分けたのは“第7戦タイ”だったと言う。

「第7戦タイですね。今年のGT300はメルセデスが強い流れにある中でライバルたちがタイでポイントを取りこぼしたのは大きかったですね。それがあったからチャンピオンにつながったところは大きかったと思います」(谷口)

「まずは優勝した開幕戦でいいスタートを切れました。その後は不運もあってポイントを思うように稼げないレースもありましたが、同時にライバルたちも不運に見舞われて、そこまで差が広がらなかったのがポイントでした。その中でタイで2位に入ってポイントリーダーになれて、最終戦に臨めたのも気持ち的には大きかったです」(片岡)

“痛車”と呼ばれ、時には批判的な声も少なくないなかで歩んできたグッドスマイルレーシングの初音ミクGTプロジェクトだが、わずか10シーズンで3度のチャンピオン獲得。気がつけばGT300クラスには欠かすことができない「名門チーム」にまで成長した。来年以降の活躍からも目が離せない。

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著者プロフィール

1984年生まれ。幼少の頃から父の影響でF1に興味を持ち、モータースポーツの魅力を1人でも多くの人に伝えるべく、大学卒業後から本格的に取材・執筆を開始。現在では国内のSUPER GT、スーパーフォーミュラを中心に年間20戦以上を現地で取材し、主にWebメディアにニュース記事やインタビュー記事、コラム等を掲載。日本モータースポーツ記者会会員

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