GM会議で本格化するストーブリーグ 大谷らMLB挑戦組の動向も左右

丹羽政善

ダルビッシュの動向はウィンターミーティングが山場?

ダルビッシュの動向は12月のウィンターミーティングが山場か 【写真は共同】

 一方、FA選手に目を向ければ、なによりイチローとダルビッシュの去就が注目だ。

 ただ、マーリンズが来季のオプションを行使しなかったイチローは、長期戦が予想されている。各チームとも、代打、代走、守備固め、レギュラーが休養する場合のスタメン出場という役割の選手を探すのは、大方の補強が済んでから。15年にマリナーズと契約したのも1月28日のことだった。

 ポイントは、今のイチローの力を各チームがどう判断するか。

 例えばドジャースが、平凡な控え選手だったクリス・テイラーのポテンシャルを見出し、マリナーズからトレードで獲得すると、不動の「1番・センター」に育てたような独特な視点を持つチームが現れるかどうか。すでに代理人のジョン・ボッグス氏がアスレチックスにコンタクトを取ったという話も出ていたが、具体化するのは12月10日からのウィンターミーティングが終わってからだろう。

 キャリアで初めてFAとなったダルビッシュは、ワールドシリーズでこそ本来の力を発揮できなかったものの、相変わらず評価は高く、6年総額1億5000万ドル(約170億円)の攻防と見られている。

 そうなると、30歳以上の投手と長期高額契約をしない方針を持つドジャースは撤退するのではないか。また、それだけの額を払えるとなると球団は限られ、かといって、レッドソックス、ヤンキースはほぼ先発枠が埋まっているので、その場合、柱になる先発投手が欲しいエンゼルス、カブス、マリナーズなどが候補に浮上するかもしれない。こちらはウィンターミーティングが山場か。

 シーズン終盤に右肩の手術を受けた岩隈久志と、終盤を欠場し、プレーオフのロースターに入れなかった上原浩治の去就には、不透明な部分も多い。

 岩隈に関しては、マリナーズがマイナー契約を交わしてキャンプに招待し、そこで結果が残せば、メジャー契約に切り替える、というシナリオが想定できる。まずは、キャンプまでに投げられるようになるかどうか。

 上原もまずは、体に問題のないことを証明する必要があるが、肩、肘の故障ではないので、実績も考えればメジャー契約は可能ではないか。ただし、年俸は抑えられるかもしれない。出来高がどこまで付帯するか。

 メッツをリリースされた青木に関しては、本人に米国に残る意志があれば、メジャー契約ができるはず。レギュラーを争う立場になるかもしれないが、3ポジションを守れるため、使い勝手もいい。ただ、日本へ復帰することも匂わせており、流動的だ。

平野は高評価、牧田も好感触

 日本からの移籍予定組では、平野の評価が高い。米スカウトに聞くと、もう、行き先が絞られているような口ぶりだった。彼の場合、フォークが武器だが、大リーグでは見慣れない軌道。相手打者は慣れるのに時間がかかるだろう。セットアッパーを任せられるだけの力はある。

 見慣れない軌道という点では牧田も同じ。大リーグにもアンダースローはいるが、どちらかといえばサイドスローに近い。また、「ロングでもいける」と評価する米スカウトもおり、汎用性も契約の決め手になりうる。あとはポスティング制度がどうなるか。

 涌井に関しては、米スカウトらに聞く限り、先発4、5番手という評価。「日本にいたほうがいい」と言うスカウトもいた。

 確かに、20代前半の力はないかもしれないが、それなりの経験もあり、どのチームも先発投手が慢性的に不足している状況を考えれば、契約できるのではないか。ただし、先発ローテーションに食い込むとしたら、キャンプではそれなりの結果が求められよう。

 さてここまで、ざっと現況をたどったが、目下の焦点は、なによりもポスティング制度の行方。果たしてGM会議の期間中にまとまるのかどうか。大谷、牧田にとっては移籍に向けた重要な局面だ。

 なお、GM会議では通常初日の夕方に、全球団のGMが取材に応じることになっており、そこから本格的なストーブリーグの幕が開く。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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