【全日本大学駅伝】青山学院大、連覇逃した誤算と不安材料 箱根駅伝は「3強」か 勢力図の変化も

石井安里

安定感と経験値で青山学院大 ライバル2校も強力

予選会を経て全日本を制する快挙となった神奈川大。エース・鈴木の存在もチームに安定感をもたらしている要因だろう 【写真は共同】

 出雲駅伝を終えた後、原監督は距離が延び、区間数が増える全日本、箱根に自信を見せていた。青山学院大と「2強」を形成していた東海大の主力選手たちに、短い距離に強いスピードランナーが多いからだろう。しかし、全日本大学駅伝を制した神奈川大を加えた「3強」となった今、状況は変わってきている。

 優勝に必要な要素を見ていくと、安定感と経験値では青山学院大がライバル2校を大きくリードしているが、選手層は東海大も厚く、エースの力では前回の箱根駅伝で2区区間賞、今回の全日本大学駅伝でも8区で逆転した鈴木健吾(4年)を擁する神奈川大に劣る。

 出雲駅伝で優勝、全日本大学駅伝2位と着実に結果を残した東海大は、箱根駅伝では前回の10位から躍進を図る。短距離、フィールド種目を含め、陸上競技部全体が強豪である東海大は、チーム事情から主力選手たちが9月初旬の日本インカレに照準を合わせた。そのため、夏の間も1区間20キロ以上の箱根駅伝に向けたトレーニングが少なかった。箱根駅伝は距離が長いだけでなく、コースがさまざまな特性に富んでいることから不安要素もあるが、層の厚いチーム内にはスタミナ型の選手もいる。關颯人、鬼塚翔太、館澤亨次、阪口竜平ら、スピードのある強力世代の2年生に注目が集まるなか、箱根駅伝になれば3・4年生の力が生きてくることは間違いない。初優勝のチャンスは十分にあるだろう。

 前回の箱根駅伝で5位に入り、12年ぶりにシード権を獲得した神奈川大は、20年ぶり3度目の優勝も見えてきた。全日本大学駅伝では、1区のスペシャリストである準エースの山藤篤司(3年)がトップと5秒差の4位と好スタートを切ると、中盤は5区の越川堅太(2年)が区間賞で流れを引き寄せ、アンカーの鈴木にトップ・東海大と17秒差の2位でタスキを託し、逆転優勝につなげた。神奈川大は昨年度、全日本大学駅伝の予選会で山藤が体調不良を起こして途中棄権したことから、本大会に不出場。今年は再び6月の予選会から仕切り直し、1位通過で本大会に駒を進めた。予選会を経ての優勝は、2003年の東海大以来、14年ぶりの快挙となった。箱根駅伝でも前回同様に1区・山藤、2区・鈴木なら、序盤から突っ走る可能性もある。

4位以下は全日本上位校が有力か

6区途中まで先頭を奪った東洋大は1年〜3年で構成されたメンバーで5位。箱根ではチーム一丸で10年連続の3位以内を目指す 【写真は共同】

 全日本大学駅伝のシード権は6位までとなっており、神奈川大、東海大、青山学院大のほか、駒澤大、東洋大、中央学院大が次回の出場権を得た。

 史上初めて、8区間すべて異なる大学の選手が区間賞を獲得するなど、各校の力も拮抗(きっこう)していたが、4〜6位は順位こそ入れ替わったものの、前回と同じ顔ぶれだった。箱根駅伝は「3強」に次ぐ争い、10位までに与えられるシード権争いが混戦になりそうだが、やはり全日本大学駅伝でシードを得た大学が有力だろう。

 2年連続4位の駒澤大は、8月のユニバーシアード(台北)のハーフマラソンで金メダルの片西景(3年)、銀メダルの工藤有生(4年)が1、2区で流れを作り、6区の堀合大輔(3年)が区間賞を獲得した。箱根駅伝では前回の9位から巻き返しを期す。

 1年生3人を含む3年生以下のメンバーで5位に入った東洋大は、1区の相澤晃(2年)が区間賞を取ると、6区の途中までトップを走った。箱根駅伝では4年生も加わり、総力戦で10年連続3位以内を狙う。

 中央学院大は主力の横川巧(2年)を欠きながら、1区から手堅いレースを展開して6位。区間10位の選手が1人いたのみで、7人は区間一桁順位で走った。前回6位だった箱根駅伝では、全員が区間一桁で総合上位を目指す。

 そして早稲田大、日本体育大、帝京大、順天堂大らがどこまで上位争いに絡むか。残り2カ月の取り組みで勢力図に変化が出るのか、注目される。

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著者プロフィール

静岡県出身。東洋大学社会学部在学中から、陸上競技専門誌に執筆を始める。卒業後8年間、大学勤務の傍ら陸上競技の執筆活動を続けた後、フリーライターに。中学生から社会人まで各世代の選手の取材、記録・データ関係記事を執筆。著書に『魂の走り』(埼玉新聞社)

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