石浦が経験を生かして強さを発揮 スーパーフォーミュラ2度目の王者

吉田知弘

「決勝で強いレースができた」と振り返る石浦

最終戦は雨のなか予選が行われたが、決勝は中止となった 【写真:吉田成信】

 最終的に0.5ポイント差で勝敗が分かれたチャンピオン争い。今シーズンを振り返った石浦は調子が悪いレースでも、しっかりポイントを稼いだことが勝因に挙げられる。

 実際に第6戦まですべてのレースでポイントを獲得した石浦。特に第2戦岡山Race1ではグリッドにつく前トラブルが発生したが、チームが迅速に修復し8位で0.5ポイントを獲得。第4戦もてぎでも予選Q1敗退という不運から見事な挽回し、4位入賞。第6戦SUGOではトラブルでスタートがうまくいかず後方に下がるものの、狭いコースで果敢にオーバーテイクを見せ、6位入賞。こうした一つ一つの積み重ねが、最終的にガスリーとの0.5ポイント差を生み出した。

 石浦も第4戦については「19番手まで下がってから、3位が目の前というところでゴールしました。自分たちもそこまで行けるとは思っていなかったです。やはり諦めずに最後まで行けたということと、決勝のペースで強いクルマをエンジニアが作ってくれたからだと思います。前回チャンピオンを取った時は予選でポールポジションを何度も取っていましたが、今年は逆に決勝で強いレースができました」と振り返る。

 その安定感は大雨となった最終戦の予選Q1でも発揮された。

 大雨により、1コーナー手前に大きな水溜りができ、それに足元をすくわれたローゼンクヴィストやガスリーらがスピンを喫した。しかし、石浦はコースオフすることなく周回。Q1では4番手タイムを記録した。

「とにかく自分の中では飛び出して、ノーチャンスになることだけは避けたかったので、細心の注意を払って戦っていました。1コーナーも『昔からあそこに大きな川があったっけ?』と思いましたが、この間のF1(日本GP)を見ていても、そこで皆同じ状況になって挙動を乱していたので……」と予選セッションを振り返る。この辺の落ち着いた対応ぶりは、まさに今シーズンの石浦を象徴するものだった。

「1回目(2015年)は、僕にとっては岡山が初優勝でした。あのタイミングではチームの誰も僕がチャンピオンになるとは思っていなかったでしょうし、あの時の方が遥かに緊張していました。自分のレースキャリアにとっても1回(王座を)取る取らないは大きな違いなので、体が動かなくなるような感覚がありました。今は自信を持っているので、そこまで緊張することもなく、チームと一緒にクルマを作り上げられれば、いい戦いができると思っていました」

 2回目のタイトルを手にした石浦はこう語る。やはり、すでに1度スーパーフォーミュラを制した経験が自信につながり、前回より“強いレース”をしたのが印象的だった。

真似したくなる存在だったガスリーら

 それでも、石浦にとっては、今年のガスリーとローゼンクヴィストは、間違いなく強敵だったと言う。

「ピエール(・ガスリー)選手はとても才能があって、チャンピオンを取ろうが取るまいが誰もが速いということは分かっている。実力を持っていると僕も思っていますし、リスペクトしています。こういうコンディションになってしまったので、正直どっちが取っても仕方がないと思っていました」

「初めてのサーキットに行って、その時初めて会うスタッフと仕事をする難しさを僕も知っているつもりです。彼らが日本に来て、さすがにパッと勝つことはないだろうとか、いい成績を出してもチャンピオン争いに加わることはないだろうと想像はしていましたが、2人は完全にその想像を上回ってしまいました」

「ガスリー選手は第4戦もてぎでの初日のクラッシュから挽回して優勝もしていましたし、ローゼンクヴィスト選手は僕たちが想像もしていない作戦をやり遂げていました。世界レベルを見せてもらった感じでした。2人ともスタートがうまかったです。予選中に流れていたオンボード映像を見ていても、真似したくなるところもたくさんありましたね」

 決勝レースがないままのチャンピオン決定で不完全燃焼になった部分は間違いなくある。しかし石浦にとっては彼らと真っ向から戦ったことで、中身の濃いシーズンを過ごせたことは確かだ。

 これで来年は再びカーナンバー1をつける石浦。「まだまだ2回のタイトルで辞めるつもりはないので、3度目のタイトルを目指していきたいです」と、来年以降もチャンピオン獲得に意欲を見せており、今後の活躍にも目が離せない。

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著者プロフィール

1984年生まれ。幼少の頃から父の影響でF1に興味を持ち、モータースポーツの魅力を1人でも多くの人に伝えるべく、大学卒業後から本格的に取材・執筆を開始。現在では国内のSUPER GT、スーパーフォーミュラを中心に年間20戦以上を現地で取材し、主にWebメディアにニュース記事やインタビュー記事、コラム等を掲載。日本モータースポーツ記者会会員

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