Bリーグ2季目で9年前の再現狙う琉球 大型補強に現れるクラブの断固たる決意

鈴木栄一

堅守を基盤にしたチーム作り

チーム最大の持ち味は激しいディフェンス。堅守からの速攻が今季の琉球の鍵となる 【(C)B.LEAGUE】

 そして上記の強力メンバーを率いる新指揮官として、元日本代表アシスタントコーチである佐々宜央を招へいして臨む今季の琉球だが、チーム最大の持ち味は激しいディフェンスとなる。運動量豊富なガード陣がどんどんプレッシャーをかけていき、ゴール下にはアームストロング、ブラウン、マーティンという守備力の高い選手たちが待ち構えている。アームストロング、ブラウンの実力はすでに昨季のBリーグで実証済み。そしてマーティンもプレシーズンゲームを見る限りは、前評判通りのプレーを見せてくれている。

 8月下旬の富山グラウジーズとのプレシーズンゲームからアーリーカップ、そしてマカオで開催された東アジアの強豪クラブが集った国際大会『The Super 8』と多くの実戦を重ねた今、佐々HCは次のようにチーム状況を語る。

「激しいディフェンスを1試合通してやり切る。それを積み重ねることでアーリーカップでは優勝することができました。The Super 8では(5日で5試合の過密日程もあり)それをやり切れなかったことで、最後は連敗で終えてしまった面がありました」

 チームの基盤となる守備については今オフでも一定の収穫を得ている。一方でオフェンスについてはエースの古川が故障離脱中かつ、新しいメンバーだらけということもあり「ピック&ロールを中心に規律、戦術を重視していますが、精度は低いです」と守備以上に発展途上な面は否めない模様だ。

 とはいえ、攻撃面でもポジティブな要素は出てきている。富山との最初のプレシーズンゲームでは、1対1をどんどん仕掛けて局面を打開していくタイプの少なさを不安要素の1つに挙げていた指揮官だが、「マーティンがインサイドで起点になってきています。日本人では津山、須田などがいい形になっているなど、積極的に仕掛けてくれる選手が出てきてくれています」とコメント。ボールシェアでバランスよく攻めることを大前提としつつも、「そこから自分がやるぞと出てくる選手を待っています」と、古川と並ぶエース格の台頭にも期待を寄せている。

「(The Super 8でも)最後は、みんなの調子を上げるための選手起用をしていました」と、開幕に向け着実にチーム作りを進めてきた佐々。「不安はありますが、今までやってきた事がどれだけ見せられるのか楽しみが大きいです」と意気込みを語る。

 そして「まずは、ディフェンスでどれだけ突き抜けられるか。堅い守備から速攻をどれだけ出していけるのか。ハーフコートオフェンスの時間が増えていくようではいけないと思います」とキーポイントを挙げた。

bjリーグ2年目の再現なるか

 琉球の歴史を振り返ると、bjリーグ時代の参入初年度にカンファレンス最下位に沈んだチームは、オフシーズンに前年まで3連覇を達成していた大阪の中心選手ジェフ・ニュートンを獲得するなど大型補強を行った。そして迎えたbjリーグ2シーズン目、プレーオフセミファイナルでニュートンが自身の背番号と同じ50得点を挙げて大阪を撃破し、奇跡の優勝を達成。その後も琉球を常勝軍団へとけん引し、現在ニュートンの50番は永久欠番となっている。

 そして、Bリーグ2年目を前にした今オフ、琉球は前年王者の栃木から中心選手の古川を筆頭にした大型補強を実施。そして図らずも古川の背番号は51となっている。今季、9年前の再現を果たし、bjリーグに続きBリーグでも常勝軍団への始まりのシーズンとすることができるのか楽しみだ。

「今はまだまだ個々の選手が、どんな個性なのかを知り始めた時期。それは新しいHC、新しい選手が多いチームのマイナス面です。一人一人の考え方が合致した時、本当にやりたいバスケができると思います」と指揮官が語るように、他のチームと比べてもまだまだ琉球はコンビネーションにおいて発展途上だ。

 ただ、そこから試合を積み重ねるごとに成長していき、チームのスローガンのような“熱く、激しい”バスケットボールで沖縄だけでなく、アウェーで全国のバスケファンにも見せられた時、9年前と同じ飛躍が実現するはずだ。

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著者プロフィール

1977年、山梨県生まれ。アメリカ・オレゴン大学ジャーナリズム学部在学中に「NBA新世紀」(ベースボールマガジン社)でライター活動を開始し、現在に到る。毎年、秋から冬にかけて母校オレゴン・ダックスの成績に一喜一憂している。

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