ほぼ毎日走るライター南井正弘が厳選! 気に入った2017上半期のランニングシューズ

南井正弘

5.ニューバランス フレッシュフォームザンテv3

ニューバランス フレッシュフォームザンテv3 【写真提供:南井正弘】

 ニューバランスが誇る高機能ミッドソールテクノロジーであるフレッシュフォームを搭載した人気シリーズの第3弾。ソフトな着地感と着地時に過度に脚が内側に倒れこむオーバープロネーションにも対応した優れたサポート性能により、世界中で数多くのランナーを魅了してきたランニングシューズだ。

 今回セレクトしたホワイト/ブラックのカラーリングは、アッパー前足部から中足部にかけて、通気性を高めたエンジニアードメッシュを採用したブレサブルモデル。高温多湿の日本の夏でも快適に走ることができた。そしてこのモデルで筆者が気に入ったのはその外観。段差の少ないデザイン要素を極力排除したフォルム、そして爽やかな印象のホワイトを基調としたカラーリングは、本当に美しく、個人的には近年のニューバランスのランニングシューズでは最も美しいと思った。もちろん機能性も高く、前述のエンジニアードメッシュは猛暑日のランでも靴内部を快適な状態にキープしてくれた。

6.アシックス fuzeX Rush

アシックス fuzeX Rush 【写真提供:南井正弘】

 2016年にアシックスの新たなコンセプトのスポーツシューズコレクションとして発表されたfuzeXの2017年春モデル。補強パーツを廃したジャガードメッシュのアッパーを採用しており、写真でわかるように従来のアシックスのランニングシューズらしくないダークトーンのカラーリングは、ストリートシーンでの着用でも重宝した。

 もちろんランニングシーンでの機能性も高く、軽量性に優れたこのモデルは、fuzeGelを前足部とかかと部に内蔵しており、高いクッション性もキープしている。シリアスランナー向けのプロダクトではないが、走ることを楽しむファンランナーや体力維持のために走るフィットネスランナーにはピッタリな存在で、完成度が高いシューズだと思った。多少サイズが小さ目なので、足型にもよるが普段履いているシューズよりも0.5からワンサイズ上げたほうがいいかもしれない。特に足幅が広いランナーは店頭での試履きはマストだろう。

7.アンダーアーマー UA チャージド バンディット2

アンダーアーマー UA チャージド バンディット2 【写真提供:南井正弘】

 シーズン毎に機能性を向上させているアンダーアーマーのシューズコレクション。特にランニングカテゴリーは他ブランドの担当者が脅威を感じるだけのプロダクトがいくつか登場している。UA チャージド バンディット2もそのひとつであり、日本の市場でも良好なセールスを記録していた。

 筆者もこのモデルの伸縮性、軽量性、通気性に優れながらもファッションテイストの追求も忘れないアッパーデザイン&カラーリング、ランナーのかかとにピッタリフィットする一体成型のヒールカップ、自然と足が前方に送り出されるような推進力を生むチャージドクッショニングといったスペックに魅了され、オンにオフに着用回数が多くなった。日本向けに2Eラスト(木型)も用意されたが、足幅が広すぎることもなく、自分の足の一部のようにフィットしてくれた。写真は2016年F/ Wのカラーリングだが、2017年S/Sのカラーリングも落ち着いたカラーリングで汎用性が高かった。

8.ブルックス フロー6

ブルックス フロー6 【写真提供:南井正弘】

 ブルックスのフロー6は、4mmのオフセット(かかととつま先部分の高低差)によるナチュラルな走行感、高いフィット感と適度なクッション性を始めとして前作フロー5の好評だった点をキープしつつ、機能性向上のために一部スペックを変更したさじ加減が絶妙。前作や前々作でこのシリーズを気に入ったユーザーを決して裏切らないプロダクト開発の手法であり、前モデルからの変更のし過ぎはランニングシューズ業界でも少なくないが、ブルックスはその点はしっかりと留意していた。

 日本展開モデルのメンズだけでも6色と豊富なカラーバリエーションをラインアップするが、写真は日本限定モデルであり、シックなデニムブルーのカラーリングは登場以来日本のランナーから高い評価を得ているという。そして忘れてならないのが、その価格設定。高い走行性能を提供するため数々のスペックを結集しているにも関わらず、税込みで1万800円というリーズナブルプライスを実現。

9.サッカニー フリーダムISO

サッカニー フリーダムISO 【写真提供:南井正弘】

 中足部のサポートパーツをアッパーから浮いた状態で取り付けることにより、シューズ内部で自然な足の動きをキープしつつ高いフィット感の確保に成功したのが、サッカニーの誇るフィッティングテクノロジーであるISO。これまでトライアンフやハリケーンといったプロダクトに搭載されていたが、フリーダムというニューモデルにも採用されることとなった。

 このフリーダムだが、アッパー以外にもいくつかの特筆すべきスペックを備えているが、そのひとつがミッドソール。エバーランと呼ばれるクッション性と推進力を両立したマテリアルをふんだんに使用することで、ランナーを力強く前方へと運んでくれる。

 ブラックのカラーリングを採用していることから普段履きにも多用したが、その際にはフワフワした履き心地で快適性を強調するのに対し、ランの際には比類なき反発性が強調されるという二面性が、フリーダムというモデルの魅力だと思った。

10.プーマ イグナイト リミットレス

プーマ イグナイト リミットレス 【写真提供:南井正弘】

“RUN THE STREET”のキャッチコピーとともに2017年春にリリースされたモデル。グラミー賞受賞アーティストのTHE WEEKENDをフィーチャーするなど、厳密にはランニングカテゴリーのプロダクトではなく、ライフスタイルのカテゴリーにラインアップされていたが、衝撃吸収&反発性能に優れたイグナイトフォームをミッドソールに内蔵するなど、その走行性能は決して低くなく、km/6分〜5分30秒程度のペースのランなら充分に対応してくれた。

 そしてイグナイト リミットレスの真骨頂はなんといってもそのスタイリッシュなアッパーデザイン。このシューズを履いて出かけると、「そのシューズカッコいいですね!?」とか「初めて見たシューズですけど、何という名前のモデルですか?」と声を掛けられることがしばしば。このシューズに興味を持った人々は異口同音にこのシューズのデザインの独自性を評価していた。

次点

On クラウドフラッシュ 【写真提供:南井正弘】

On クラウドフラッシュ

ミズノ ウエーブシャドウ 【写真提供:南井正弘】

Onが2017年2月の東京マラソンEXPOで世界に先駆けてリリースしたランニングシューズ。リオ五輪女子トライアスロン競技銀メダリストのニコラ・スピリグのようなトップアスリートから一般アスリートまで幅広く対応する点が新しい。筆者は4月のホノルルハーフマラソン ハパルア2017で着用し、その優れた保護性能と推進力のハーモニーを体感。共同創業者のひとりであるキャスパー・コペッティ氏が「自己記録更新を狙うレースなど特別な機会に履いてほしい1足!」と語っていたが、アスリートが持つパフォーマンスを引きだしてくれる1足だと思う。ブラック、グレー、ネイビーといったカラーリングであればもっと着用機会が多かったと思う。


ミズノ ウエーブシャドウ

サロモン ソニックプロ 2 【写真提供:南井正弘】

ドロップ(かかととつま先部分の高低差)が4mmとミズノのラインアップでは珍しくこの数値が低いモデルであり、ナチュラルな走り心地が楽しめた1足。実際に走ってみると快適な走行感で、気に入ったシューズのひとつだが、筆者は最近ラン用シューズとストリートシーンのシューズを1足で済ませることが多く、そうなるとこのシューズのようなカラーリングは登場回数が減ってしまうのだ。


サロモン ソニックプロ 2

リーボック フロートライド 【写真提供:南井正弘】

新たにVIBEと呼ばれるテクノロジーパッケージを採用したサロモンのオンロード用モデル。複数のテクノロジーを組み合わせたこのシューズは、トータルバランスに優れており、前作のソニックプロよりも厚手のミッドソールは衝撃吸収性が明らかに向上していると思う。走行中は他ブランドのクッショニングテクノロジーのような派手さはないが、ランの翌日に疲労感が少ない気がした。このシューズも派手なレッドカラーのために登場回数が少な目となったが、かつてサロモンが展開していたブラック ラボ リミテッドエディションのようなカラーリングだったら確実にヘビーローテーションモデルになっていたと思う。


リーボック フロートライド
リーボックが新たに開発したミッドソールテクノロジー、フロートライド搭載モデル。実際に履いてみるとわかるが、沈み込みが少ない割に反発力が高いので、走っているときにテクノロジー名のようにまるで浮いているかのような走り心地を感じることができる。フロートライドという名称は決して大袈裟ではないのだ。今回このテクノロジーを搭載したモデルはヒール部分を始めとしてかなり大胆なデザインを採用しているが、「もっと一般的なランニングシューズデザインにこのテクノロジーを採用してくれたら……」と思っているランナーは少なくないだろう。

まとめ

 筆者は最近ランニング用シューズを街履きにも使用することが多いが、それは筆者に限ったことではなく、全世界的にランシーンとオフシーンのシューズのシームレス化の傾向が進んでいる。それもあってカジュアルテイストながらフィッティング性能の高いニットアッパーのランニングシューズが増えている。ちなみに今回紹介した14足のシューズ中4足がニットアッパーであった。

 それとドロップやオフセットと呼ばれる、かかととつま先部分の高低差の少ないシューズがポピュラーになっており、ミズノもウエーブシャドウでこのタイプのランニングシューズをようやくリリースした。今後もロードロップのランニングシューズの勢いは止まらないだろう。

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著者プロフィール

フリージャーナリスト。1966年愛知県西尾市生まれ。スポーツブランドのプロダクト担当として10年勤務後、ライターに転身。スポーツシューズ、スポーツアパレル、ドレスシューズを得意分野とし、『フイナム』『日経トレンディネット』『グッズプレス』『モノマガジン』をはじめとしたウェブ媒体、雑誌で執筆活動を行う。ほぼ毎日のランニングを欠かさず、ランニングギアに特化したムック『Runners Pulse』の編集長も務める

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