2連覇狙うトヨタ自動車の戦力充実 社会人野球・都市対抗見どころ

楊順行

日本通運、53年ぶり頂点なるか!?

昨夏は準優勝で終わった日立製作所。いまだに都市対抗優勝がないことが社会人野球七不思議のひとつに数えられるほどだが、今季は投打にチーム力が高く、創部100周年目での悲願達成を狙う 【写真は共同】

 Cブロックは、各地区の第1代表5チームが集まった。なかでも、日本通運(埼玉県さいたま市)が優勝候補アンケートで日立に並ぶ2位と評判がいい。昨年は、日本選手権で準優勝。今季も九州大会を優勝し、南関東2次予選はチーム打率3割3分7厘、4本塁打の打線、防御率1.33の投手陣で横綱相撲だ。藪宏明(国学院大)監督も「お前たちは強い。日本一になれる」と、53年ぶりの頂点に手応えを感じているようだ。

 ただこのブロックには東京ガス(東京都)、西濃運輸(岐阜県大垣市)と、昨年の4強が2チーム。東京ガスの初戦の相手は、創部6年目で初めて九州第1代表となった西部ガス(福岡県福岡市)。「同じ業種として、創部時にはお世話になった。恩返しするつもりです」と語る杉本泰彦(東洋大)監督はかつて、日本代表を率いた経歴も持つ。西濃運輸を14年の優勝に導いた林教雄監督も67歳で、両ベテラン監督の手腕にも注目だ。

 Dブロックでは、日本生命(大阪府大阪市)と三菱日立パワーシステムズ(MHPS/神奈川県横浜市)が2年続けて1回戦で当たる。日生にとっては、チーム名が三菱重工横浜だった13年に3対4、そして15年の覇者として開幕試合で対戦した昨年は0対4と連敗で、3度目の正直に「捨て身でぶつかるだけ」と十河晃浩(近畿大)監督。対するMHPSは今季、三菱重工長崎を統合したから、2チームの選抜と見れば当然戦力は大幅アップか。「いや、1+1はそう簡単には2になりません(笑)。でも長崎組の僕らから見たら、神奈川のイメージというと日本一」という後藤隆之(九州東海大)監督が、45名の選手をどう操るか。

 京都大会優勝のNTT西日本(大阪府大阪市)、Honda鈴鹿(三重県鈴鹿市)も総合力は高い。面白いのは、きらやか銀行(山形県山形市)だ。初出場で話題になった昨年、古豪・パナソニック(大阪府門真市)から初勝利を挙げたが、立役者のエース・小島康明(東京農業大)が健在。厳しい東北2次予選では、3試合を完投して2完封と大車輪だった。

元プロ監督「1試合1試合全力で戦う」

 いずれにしても、優勝までは5試合の厳しい戦いになる。今季から日本新薬の指揮を執る吹石一徳(南部高)監督によると、「トーナメントを勝ち抜くポイントがあったら教えてほしい(笑)。いずれにしても、1試合1試合全力で戦うだけです」。近鉄の現役時代、”江夏の21球””10.19”といった歴史的ドラマを経験してきた吹石監督にして、何が起こるかわからないというのが都市対抗のトーナメントだ。

 凡打でも一塁まで全力疾走し、必死に打球に食らいつき、勝って笑い、負けて涙する。大の大人が高校球児に戻ったような熱い戦いを見に、ぜひ東京ドームへ足を運んで下さい。

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著者プロフィール

1960年、新潟県生まれ。82年、ベースボール・マガジン社に入社し、野球、相撲、バドミントン専門誌の編集に携わる。87年からフリーとして野球、サッカー、バレーボール、バドミントンなどの原稿を執筆。高校野球の春夏の甲子園取材は、2019年夏で57回を数える。

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