球宴最大の目玉アーロン・ジャッジ、ヤンキースの若き大砲は至って謙虚

杉浦大介

変わらぬ姿勢を先輩も称賛

ホームランダービーを制し、前評判通りの実力を見せつけた 【Getty Images】

 もっとも、これほどの大ブレークにもかかわらず、前半戦終了間際のジャッジは必ずしもハッピーに見えなかった。冒頭で記した通り、ディマジオを抜いた7日のブリュワーズ戦後ですらも言葉数は少なめ。なぜかと言えば、この日のゲームでヤンキースは敗れ、その時点で3連敗となっていたからに違いない。

 今季はリーグ最大級のサプライズチームとなってきたヤンキースだったが、夏を迎えて失速気配。7月9日までの25試合中18敗を喫し、ア・リーグ東地区で2位に転落してしまった。自分がどれだけ優れた個人成績を残そうと、チームが勝たなければ最大限には喜べない。悔しさを押し殺しながら質問に答えるジャッジの横顔からは、そんな思いが透けて見えてくるようだった。

 ただ……逆に言えば、そんな姿勢もジラルディ監督以下、ヤンキースのチームメート、そしてファンを微笑ませているのだろう。

「前日に5打数4安打2本塁打だろうが、4打数0安打で4三振だろうが、彼の態度は変わらない。自分の成功の度合いに関わらず、姿勢は同じなんだ。そんな姿がチームメートにも好影響を及ぼしているよ」

 ヤンキース最古参選手になったブレット・ガードナーの言葉は大げさだとは思わない。実は昨季のジャッジは27試合で84打数42三振という驚異のペースで三振を量産したが、それでも落ち着いた態度、成熟したメディア対応は変わらなかった。いいときばかり話したがる選手が多い中で、その冷静さには感心させられたもの。開幕直後にジラルディ監督が言及した通り、勝利にこだわる執着心は実際に“キャプテン”デレック・ジーターを彷彿(ほうふつ)とさせる。

「オールスターに出場できるのはすごいことだし、ほとんど非現実的に感じられる。すべてはチームメートの支えがあってこそなんだ」

 サイズ、パワー、身体能力に恵まれた怪童が、これほど献身的な姿勢を保てば近未来は間違いなく明るい。選手としてのタイプは違うが、ジーターのようにニューヨーカーが未来を託せる選手が再び現れた。目を見張るほどの長身で、誰よりも打球を遠くに飛ばし、それでいて謙虚――。そんな25歳のスラッガーの行く手には、まさに無人の広野が広がっているのだろう。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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