山口慶が吉田麻也のサッカー観に迫る 「メンタル」よりも大切にしていること

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「こうだ」と決めたこと貫き通すことが大事

子供たちとのトレーニングを楽しむ吉田(左)と山口 【赤坂直人/スポーツナビ】

――一番は試合に向けて準備をすることが大事だということ?

 準備をすることが大事だし、自分を律することがすごく大事だと思います。例えば、僕は中学校のとき、お菓子を食べない、炭酸を飲まないと心掛けていました。それが必ずしも、良い悪いというわけではないんです。海外の選手は毎週コーラも飲むし、ハンバーガーも食べる。日本の選手のほうがよっぽど節制しているけれど、(海外の選手と日本人選手の)差はついてしまう。

 だから、食べる・食べないではなくて、一度自分が「こうだ」と決めたことを貫き通すことができるメンタルが大事なのではないかと思います。自分がブレるかブレないか――そこを養えるかどうかだと思います。

――麻也は試合に出ていないときに連絡を取っても、いつもと変わらないテンションで対応してくれる。それは試合に勝っても負けても一緒。自分の中で、気持ちの保ち方を意識している?

 もちろん落ち込むし、うれしいこともあるけれど……。センターバック(CB)というポジションは特に、1、2試合で結果が変わるということはあまりないので。ワンシーズン、もしくは1〜2カ月と、長いスパンで見て、やっと結果が伴ってくるポジションだと思っています。

 落ち込んで、そこで気持ちが折れてしまって、次の試合がダメでその次もダメで……となるよりは、浮き沈みの波を高いところでなるべくキープしたい。もちろん、フィジカルもメンタルも低いところではなくて、高いところでキープできるように心掛けています。

――先ほどイメージトレーニングの話もあったけれど、メンタル面でも同じようにイメージをしている?

 そうですね。例えば、開始5分で自分のミスで失点してしまったというときに、やはりCBというのは失点に絡むことが多いポジションなので、ミスが起こり得る。そこで、開始5分で(気持ちが)落ちてしまって、残りの85分をずっと気持ちを引きずって、低調なペースのまま終わるのか。1度気持ちを切り替えて、失点したところからキックオフだと思って、そこからハイパフォーマンスを出すのか――そこがすごく大事なところです。

 僕もグランパスにいるときはできなかった。(失点して落ちてしまうことが)すごくあったし、慶くんも知ってると思いますけれど(笑)。試合の中で波が大きく出てしまうことが多々ありましたが、たくさんミスをして、CBとしてのキャリアも積んだからこそ、ミスをしても、そこからまた良いパフォーマンスを出そうというメンタルの切り替えがうまくなったと思うし、それが普段の生活にも生きています。

「もっている」と言われるのは好きじゃない

吉田は自らを「もっている」と評されるのは好きではないという 【赤坂直人/スポーツナビ】

――例えば、日本代表の(11年9月のアジア3次予選)北朝鮮戦で、アディショナルタイムに決勝ゴールを決めたり、麻也はいつも良いタイミング、結果を出さなければいけないところで、しっかり結果を出している印象がある。プレミアでも今季の序盤は出場機会を失う時期もあったが、チャンスをつかんで試合に出られるようになった。そういった「結果を出すコツ」のようなものがある?

 よく「もっている・もっていない」という言い方をされますが、僕は「もっている」と言われるのは嫌なんです。プロとして、結果を出すまでのプロセスはすごくやっている。「北朝鮮戦で点を取った」ところしかテレビではやらないし、みんなも知らないけれど、それまでには「試合へのアプローチ」をしっかりしている。でも、その過程は絶対にフォーカスされない。結果を出したときにだけ評価されるし、逆に結果を出していない選手は何もなかったかのようにスルーされる。

「何でいきなり(クラブで)試合に出れるようになったんですか?」と聞かれますが、出番がないときでも、プロとしてやるべきことをしっかりやって、自分がチャンスを与えられたときにモノにできるよう、準備はしていました。(チャンスを)つかめるかそうではないかは自分次第ですし、プロの世界はそこで結果を出した者だけが残っていく世界。みんなが見ていないところでやっているからこそ、結果を出すことができるんだと思います。

 昔、てんぐになっていたときは自分でも「恵まれた星の元に生まれているのかもしれないな」と思っていましたが(笑)。プレミアリーグでやっている選手はみんなそうなんです。みんなが恵まれた星に生まれていて、そんな選手たちが集まっているので、その中では「もっている・もっていない」の差がないんです。みんなが「もっている」から。だから後は、自分がいかに準備をするか――。そこで心を砕かれて、しっかりやらなきゃいけないと思いました。

(構成:木村郁未/スポーツナビ)

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