21年ぶりの両リーグ野手新人王なるか!? 開幕3カ月ルーキー通信簿
奮闘の中継ぎ陣と苦悩のドラ1
セットアッパーとして15ホールドをマークし、オリックスの勝ちパターンを担う黒木 【写真は共同】
目立つのは中継ぎ陣の奮闘ぶりだ。29試合で13ホールドを挙げているドラフト5位の森原康平(新日鉄住金広畑→東北楽天)を筆頭に、同4位に菅原秀(大体大→楽天)が20試合、同9位の高梨雄平(JX‐ENEOS→楽天)が12試合に登板して好調なチームを支えている。ただ、開幕から勝利の方程式の一角を務めて5月中旬まで防御率0点台を誇っていた森原が、5月下旬から調子を崩して防御率4.50まで急落。6月10日に登録を抹消された。心身ともにリフレッシュして、再びフル回転できるか。首位を走るチームにとっても大きなポイントになる。
そして、この楽天の新人トリオを大きく上回るピッチングを続けているのが、黒木優太(立正大→オリックス)である。開幕からセットアッパーとして好投を続け、ここまで30試合に登板して4勝1敗15ホールド、防御率2.03の好成績を収めている。また、ドラフト1位の山岡泰輔(東京ガス→オリックス)も9試合で2勝5敗と白星にこそ恵まれていないが、防御率2.59と先発として安定感のある投球を続けている。風向きが変われば、ここから一気に2ケタ勝利到達も十分に可能だ。
その他では、藤平尚真(横浜高→楽天)が6月16日の阪神戦(甲子園)に先発し、高卒ルーキー一番乗りでプロデビュー。5回2失点で負け投手になったが、ファームでも新人最多の51イニングを投げて防御率3.35と結果を残しており、プロ初登板を糧にした今後の成長が非常に楽しみだ。
その一方で新人王候補と目されたドラフト1位勢が苦戦中。佐々木千隼(桜美林大→千葉ロッテ)は、4月6日に5回1失点でプロ初登板初勝利の幸先の良いスタートを切ったが、徐々に打ち込まれる場面が目立ち、ここまで9試合で2勝6敗、防御率5.98で先発ローテも崖っぷちの状態だ。さらに“10年に一人の逸材”とうたわれる田中正義(創価大→福岡ソフトバンク)は右肩の不調が長引き、ようやく対外試合初登板のメドが立ったという状況。苦悩の日々を乗り越えて真価を発揮したいところだが、現段階ではいつ1軍デビューできるかも不透明だ。
不動の「2番・遊撃手」が出色の働き
開幕からスタメン出場を続ける西武の源田 【写真は共同】
また、ドラフト2位入団の石井一成(早大→北海道日本ハム)も1軍戦力として働いている一人。二遊間を守りながら56試合に出場しているが、打率1割8分4厘の打撃面をどこまで改善できるかが今後の鍵になる。同じく大卒新人の森山恵佑(専大→日本ハム)はイースタンでリーグ2位タイの9本塁打を放って長打力をアピール中。1軍では5打数無安打ながら、リーグ戦再開後にもう一度、1軍でチャンスを与えてみても面白い。
パ・リーグでの野手新人王は1998年の小関竜也(西武)以来となる。仮に、セ・パ両リーグともに野手からの新人王誕生となれば、96年に仁志敏久(巨人)と金子誠(日本ハム)の2人が選ばれて以来21年ぶり。50年の新人王設置以降を見ても、52年の佐藤孝夫(国鉄)&中西太(西鉄)、59年の桑田武(大洋)&張本勲(東映)、69年の田淵幸一(阪神)&有藤通世(ロッテ)、81年の原辰徳(巨人)&石毛宏典(西武)、84年の小早川毅彦(広島)&藤田浩雅(阪急)と過去57年間で6例しかない。2人の新人遊撃手が、プロ野球新時代の到来を告げるのか。ルーキーたちの今後の活躍に注目しながら、夏の到来を待ちたい。
(三和直樹/ベースボール・タイムズ)