楽天・則本は会社でもスーパーエース!? 記録より大切な、その立ち居振る舞い

松山ようこ

移籍の岸にも率先して声掛け

メディア関係者には丁寧に言葉を紡ぐ一方、ファンに対しては盛り上げ役に徹する 【写真は共同】

 則本は自分をつくることはないが、いわゆるTPOにふさわしい立ち居振る舞いをする。その場面や状況に応じて、周囲やファンが期待していることに応えるのだ。

 今回のように記録がかかった時など、大勢のメディア関係者がつめかけた会見では、誤った解釈が起きないよう、一つ一つの質問に、丁寧に言葉を紡いで答える。少人数になったとしても報道陣の取材である限り、あまり変わらない(多少リラックスした表情を見せることはあるけれど)。自分の言葉が誤って届かないよう、細心の注意を払いながらも、しっかりと応対する。

 だが、これが地元ファンへの直接の言葉となると別だ。ホームで勝利してお立ち台に上れば、ここぞとばかりに場を盛り上げる。「明日は楽天市場がポイント2倍ですよ!」と毎回のようにアピールするのもお約束。その堂に入ったさまは、スーパー営業部長のようだ。

 ホームでは勝利した試合後、スタジアム前の特設ステージでもファンにお披露目をする。その時はさらに盛り上げ役に徹するから、ファンはますます一体感を覚えて、則本の人柄にロックオンされるのだろう。

 則本のそうした献身ぶりは、“外交面”に留まらない。チームでは今年、埼玉西武からベテランの岸孝之が移籍してきたが、実績のある他球団の元エースにも、則本は最初から率先して声を掛けた。どちらかというと自分から積極的に話すタイプではない岸は、キャンプ当初から「則本がよく話してきてくれる」と笑い、すぐになじんだ様子だった。チーム内でも、大事なところで気配りや目配りが行き届いているのだ。

 少し前にも投手陣の練習中、与田コーチ含めて、みんながワッと笑った場面に遭遇した。何を話していたかは分からないが、その時、岸はちょうど走り込みをしていた。だが、その輪に戻るや否や則本が何やら説明をし、すぐに岸も笑顔になったということもあった。

 試合前の練習を終えると、待ち構えた取材陣の質問に答えたり、OBやゲストやその他関係者とあいさつをしたり。則本は、そのどれもおざなりにすることなく、時に誰よりも気さくに相手を笑顔にしている。よく会社でも、上司や部下から慕われて、結果も出す、それをできる人材を「スーパーエース」というが、則本は文字どおりのスーパーエースで、そうした意味でもスーパーエースなのだ。

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著者プロフィール

兵庫県生まれ。翻訳者・ライター。スポーツやエンターテインメントの分野でWebコンテンツや字幕制作をはじめ、関連ニュース、企業資料などを翻訳。2012年からライターとしても活動をはじめ、J SPORTSで東北楽天ゴールデンイーグルスやMLBを担当。その他、『プロ野球ai』『Slugger』『ダ・ヴィンチニュース』『ホウドウキョク』などで企画・寄稿。2018年よりアイスクロス・ダウンヒルの世界大会Red Bull Crashed Iceの全レースを取材。小学館PR月刊誌『本の窓』にて、新しい挑戦を続けるアスリートの独占インタビュー記事「アスリートの新しいカタチ」を連載中。

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