バトンが鈴鹿で順応性の高さを証明 8月のスーパーGT参戦は「とても光栄」

吉田知弘

「そう簡単に乗りこなせるものでもない」

好タイムを記録するなど順応性の高さを証明したバトン 【写真:吉田成信】

 そして、いざ自分のテストの番になりマシンに乗り込みコースインをすると、いきなりレギュラーの2人と遜色ないタイムを記録。特に2日目の午前はタイムをさらに伸ばし1分49秒706というベストラップを記録した。ライバルチームとほぼ変わらないペースで周回し、早くもマシンを乗りこなしている様子だった。

「楽しく走ることができたよ。ダウンフォースが多くて、特にS字などでのコーナリングスピードの速さは、小さなF1に乗っている印象だった。各セッションで10〜20周を走ったけど、正直GT500のマシンはそう簡単に乗りこなせるものでもないので、まずはバランスに慣れることが重要。僕には、このクルマでもっと経験をする時間が必要だなと感じた」と、2日間のテストを終えたバトンは、限られた時間の中でのテストで得るものは大きかったようだが、“本音を言うともっと走り込みたい”という印象だった。

 一番懸念していたのは、スーパーGTの特徴でもある「混走」。今回のテストではGT500、GT300合わせて17台が参加していたが、レース当日はこの3倍にあたる45台がエントリー予定。決勝レース中は、常にGT300を追い抜きながら戦っていくことになる。

「GT300のマシンはストレートスピードが思ったより速くて、今回のテストでは“トラフィック(遅い車が走行の妨げとなること)”という感覚があまりなかった。GT300との差はブレーキングやコーナリングでの違いだけなのかなと感じている。でも、レースでは必ずトラフィックとの付き合い方が重要になると思う。現時点では6月末のテストには来られないし、そのままぶっつけ本番になる」

「経験できていないから本番ではタフなレースになるかもしれないけど、僕は慣れるのが早いから、そこに賭けるしかないかなと思っているよ」

 ただ、ワールドチャンピオンだからという偉ぶった態度も一切なく、チームには「自分は第3ドライバー」という立場をしっかり理解した上で接しているのが印象的だった。さらにスタッフにも話を聞くと、非常に勉強熱心で、事前にスーパーGTの過去のリザルトやレース動画をチェックし、限られた時間と環境の中でも自分に有益な情報を得ようと貪欲になっており、関係者は終始感心していた。

 わずか2日間、周回数にして60周程度ではあったが、早い段階からレギュラー陣と遜色ないタイムを記録する順応性の高さを証明したバトン。まだまだ不安要素はあるのだが、8月末の鈴鹿1000km本番では、どんな走りを見せてくれるのか、今から楽しみだ。

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著者プロフィール

1984年生まれ。幼少の頃から父の影響でF1に興味を持ち、モータースポーツの魅力を1人でも多くの人に伝えるべく、大学卒業後から本格的に取材・執筆を開始。現在では国内のSUPER GT、スーパーフォーミュラを中心に年間20戦以上を現地で取材し、主にWebメディアにニュース記事やインタビュー記事、コラム等を掲載。日本モータースポーツ記者会会員

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