ハリル「満足できない選手が何人かいた」 国際親善試合 シリア戦後会見

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ハリルホジッチ監督は試合後、「満足できない選手が何人かいた。特に中盤で問題があった」と不満を口にした 【写真:高須力】

 サッカー日本代表は7日、東京スタジアムにてシリア代表とのキリンチャレンジカップ2017に臨み、1−1の引き分けに終わった。後半3分にセットプレーから先制を許した日本は、その10分後に今野泰幸のゴールで同点に追い付く。その後も日本は途中出場の乾貴士がドリブルで好機を演出するなど立て続けにシリアゴールへと迫ったが、最後までネットを揺らすことができずに試合終了を迎えた。

 試合後、ハリルホジッチ監督は「非常にいいテストになった」と試合を総括。この言葉は良くも悪くも得るものがあったことを表しているようで、「試合の入りを考えると、満足できない選手が何人かいた。特に中盤で問題があった」と不満を口にした。「何人かの選手とは話をしなければならない」としたうえで、後半に関しては「勝利に値した。インスピレーションがあり、形も整っていた」と評価もした。

 また、前半10分に相手との接触で肩を痛め途中交代した香川真司に対しては「少し心配だ。本田(圭佑)も打撲している。次の試合に向けてまだ分からない要素がある」と話した。

 日本は次戦、13日にイランのPASスタジアムでイラク代表とのワールドカップ(W杯)アジア最終予選に臨む。

このチームはまだ脆い

 シリア戦はわれわれにとって非常にいいテストになった。ただし試合の入りは悪かった。真司のけがのあと、われわれは自分たちの形ができなかった。今日の試合の入りを考えると、満足できない選手が何人かいた。特に中盤で問題があった。守備でも攻撃でも、相手にコントロールされてしまった。守備では、われわれは相手から遠すぎた。攻撃では、引いてボールを受ける姿が多すぎた。前の3枚が少し開きすぎてプレーができず、ボールを持ちすぎた場面もあり、われわれ本来のゲームができなかった。

 後半に入ると、よりボールを動かし、たくさんの決定機を作った。後半を見ると、勝利に値するゲームだったと思う。ドローという結果は、われわれへの警告となった。イラク戦という別のゲームが待っている。真司は少し心配だし、本田も打撲している。明日、移動があるが、次の試合に向けてまだ分からない要素がある。いずれにせよ、いいテストにはなった。たくさんの交代ができ、たくさんのことを試すことができた。たくさんのポイントで得るものがあった。

──前半が悪かった理由をどう考えるか。逆に後半が良くなったということは、オプションが増えたと同時に、考えなければならないことも増えたと思うが。(田村修一/フリーランス)

 後半はインスピレーションがあり、形も整っていた。私の指示が理解できなかったのかもしれないが、前半は入りが軽い選手がいた。そうなると代償を払うことになる。私には受け入れられない入り方だった。そして相手チームの戦い、プレーの質に驚いていた選手がいた。デュエル(球際の競り合い)は相手のほうが速かったし、予測もできていた。私は(チームとして)まとまってプレーしようと言ったが、個人プレーに頼った場面もあり、われわれの力が発揮できていなかった。

 ハーフタイムでは私が満足していないことを(選手たちに)伝えた。いくつかの交代や変更をして、特に形の部分をより細かく指示してボールが回るようになった。全体が動くようになり、スペースも見つけやすくなり、まったく違うゲームになった。3つ、4つの素晴らしい決定機があったが、そこで決められなかったのは残念だ。シリアはすごくいいチームだった。とてもアグレッシブで、スピードもある。守備では、相手に寄せろといつも選手たちに言っているが、今日は寄せ切れていなかった。修正点、改善点はたくさん出たと思う。

──軽い選手が何人かいたということだが、前半のうちに改善されなかったことについてどう考えるか?(大住良之/フリーランス)

 修正できなかった理由は選手に聞かないと分からないが、中盤にたくさんの選手がいたのに、相手から5メートルぐらい離れたところに立っていた。私の指示はまったく違うものだった。シリアのアグレッシブさに驚いて、そうなっていたのかもしれない。スピードのあるドリブラー、さらにはデュエルで勝てる選手がたくさんいて、モチベーションもインスピレーションも高く戦っていた。真司のけがが影響した部分もあったかもしれない。しかしこのゲームは、出場しているのに消えている選手が何人かいた。だから何人かの選手とはこれから話す。少し厳しく話さないといけないのかもしれない。

 これがわれわれの実力であるということも考えないといけない。このチームはまだ脆い部分がある。われわれの望んでいた姿と本来の姿が違う(ということが分かったという意味で)、いい試合だった。修正点がたくさん見えた。しっかり試合に入り込めなかったということで言えば、それは問題だ。6月の合宿については、この時期は移籍の話もあり、バカンスもあり、それ以外にもいろいろなことに思考がいってしまう。日本で多くの人が「日本はまたW杯に出場するんでしょう?」と思っているようだが、私は「そんなに簡単ではない」と警告している。さっきも言ったが、何人かの選手とは話をしなければならない。

今日は戦術や形のすべてに失敗した

──後半、乾が入って流れがよくなったと思うが、乾を含めて後半に収穫があった選手は誰か?

 後半はまったく違う戦い方になった。ボールが動くようになり、オプションが増えた。相手も前半にかなり頑張ったので、後半はフィジカル的に少し落ちた。動きや質で、チームに良いものをもたらした選手たちがいた。乾、圭佑、井手口(陽介)は後半にいい形で入ってくれた。後半に入ってからは、われわれがいつも見せているプレーをすることができた。しかし前半は、しっかり分析して議論しなければならないものだったと思う。

──けがから戻ってゴールを決めた今野の出来は?

 たくさんのことを今日は試した。今野は2カ月プレーしていなかったので、UAE戦とは少し違っていた。もっと早い復帰を期待していたが、今日は60分プレーした。彼は自分のコンディションを取り戻しつつある段階だが、われわれが知っているトップフォームの彼ではなかった。

 今日は中盤で苦しんだが、守備でも攻撃でも中盤をコントロールできなかった。指示とは違った姿になったが、なぜそうなったのかを分析しなければならない。守備のところでは、自分のゾーンに入ったところでしっかり寄せろと言ったが、それとまったく違った姿があった。悪かったところから、われわれはしっかり教訓を得ないといけない。戦いの部分、メンタルの部分で100パーセントでなければ、脆い部分によって敗戦につながることがある。

 チームのシステムについては、勝てばそれがいいシステムになる。うまくいかなければ、システムが悪かったのか、選手たちのハードワークが足りなかったのか。いろいろなことが議論されて、最終的には監督のせいになってヴァイッドを批判しないといけなくなる。私の指示は、今日の姿とは違ったので、今日の前半には満足していない。

 そして全体がそろってからの戦術トレーニングは1回だけだった。これを言うと「ヴァイッドがまた泣き言を言っている」ということになるだろうが、今日は戦術や形のすべてに失敗した。そういうことでよろしいだろうか? 監督というのは、そういう立場だ。私自身もチーム内でしっかり議論していきたい。

──イラク戦が行われるテヘランでテロがあったが、そのことを受けてどういう心境か?

 それについては話は聞いているが、私は別の問題を抱えているし、そういった状況にも慣れている。私は紛争をはじめ、さまざまなものを経験してきたが、私はサッカー監督であり大好きな仕事をしている。われわれが今、生きている世界は少し狂っているかもしれない。これが終わる日は来るのか、私は思い続けているが、私が今、心配しないといけないのはチームのことだ。(テロの)話は聞いているが、細かいことは分からないのであまりコメントできない。欧州に目を向けても、いろいろひどいことが起こっている。

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