ウルグアイの術中にはまった日本 エースの不在で狭まった攻撃の選択肢

川端暁彦

全体的に“省エネモード”だったウルグアイ

全体的に“省エネモード”のウルグアイだったが、日本側に試合の主導権を握れているという実感はなかった 【写真:田村翔/アフロスポーツ】

 この試合で選手たち、特に中盤の選手が強調していたのはウルグアイが見せていた「持たせておけという感じ」(市丸)である。前半からその傾向はあったのだが、ウルグアイは全体的に“省エネモード”だった。イタリアとの大激戦(1−0)から中2日ということで、彼らも回復が難しかった部分はあるのだろう。第1戦で見せたようなアグレッシブな守備は鳴りを潜めており、「真ん中がやられなかったらOKという感じ」(市丸)という守備で日本を迎え撃ち続けながら、「(すでに)1点取っているし、どこかカウンターで取れるんやろうなという雰囲気」(市丸)で日本に対応してきていた。

 時間帯別のボール支配率を見ても、日本が下回った時間帯は1つもなく、終盤は圧倒してもいる。後半は久保が輝きを取り戻して存在感を示し、FW岩崎悠人(京都サンガF.C.)も持ち前の俊敏な動き出しからゴールに迫り、日本は55分、58分、67分と3つの決定機も作った。ただ、日本側に試合の主導権を握れているという実感はなかったようだ。

 徐々に日本の攻撃は中央に偏っていき、中へと行き過ぎた印象もあるが、これは外からの攻撃に期待感が薄かったこともある。象徴的だったのは、攻撃参加してクロスを上げるチャンスが2度あった藤谷の選択だ。いずれも「CKを取ることを選んだ」と、クロス勝負を回避した。小川不在でペナルティーエリア内での競り合いに勝算がないと見て「それならCKでセンターバックの2人を上げてから勝負したほうがいい」という判断だった。決して間違った考え方ではないのだが、エース不在によって攻撃の選択肢が削られてしまっていることを意味していた。

 対するウルグアイは次々に主軸選手を温存する交代をしながら、試合をやり過ごすような流れに持ち込んでいく。むしろ相手がメンバーを落としてから、日本のチャンスはなくなった。そしてアディショナルタイムには、交代出場のMFマルセロ・サラッキの巧みなパスを受けた左DFマティアス・オリベラが豪快なオーバーラップから強烈なシュートを突き刺し、勝負の行方を決定的なものとした。

イタリアを相手にどう崩して、どう決め切るか

次戦では引き分けでも2位通過となるイタリアが無理をしてくる可能性は低い 【写真:田村翔/アフロスポーツ】

 結果は0−2の敗戦。「どんなにボールを回したところで、決めなければ意味がない」とMF堂安律(G大阪)が肩を落としたように、相手の術中を脱し切れずに時間ばかりが過ぎていく、そんな悔しい流れになってしまった。ゴールを決める・守るという最終局面での違い。「決定力が圧倒的に違う」(原)というのは正直な実感だろう。

 その意味で言えば、次のイタリア戦も似たような部分が問われる試合となるだろう。引き分けでも2位通過となるイタリアが無理をしてくる可能性は低い。日本が苦しめられた南アフリカの攻撃を頑健な守備組織で跳ね返していたイタリアをどう崩して、どう決め切るのか。再び中2日での試合で、消耗している選手が少なくない点も不安材料ではある。そして何より、小川の不在をどうカバーするのか――。

 この2試合で選手たちが受けている刺激の大きさ、積んでいる経験値の貴さを思えば、次の試合をラストマッチにしてしまうのは、あまりにもったいない。27日、イタリアとのグループステージ最終戦は、まさにサバイバルマッチ。勝ち点をもぎ取って次のラウンドにつなげられるかどうかは、この世代の今後をも左右する。早くもそんな予感がしている。

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著者プロフィール

1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。フリーライターとして取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。創刊後は同紙の記者、編集者として活動し、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月からフリーランスとしての活動を再開。古巣の『エル・ゴラッソ』をはじめ、『スポーツナビ』『サッカーキング』『フットボリスタ』『サッカークリニック』『GOAL』など各種媒体にライターとして寄稿するほか、フリーの編集者としての活動も行っている。近著に『2050年W杯 日本代表優勝プラン』(ソル・メディア)がある

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