近藤が躍動! ヤクルト中継ぎの救世主に 〜燕軍戦記2017〜
同僚・坂口とともに最後の“元近鉄戦士”
大松(左端)がサヨナラ本塁打を放った5月9日の広島戦、近藤(左から二人目)は2回無失点の好投で移籍後初勝利を手にした 【写真は共同】
「EDM(エレクトロニック・ダンス・ミュージック)の貴公子」と呼ばれるドイツの天才DJ、ゼッドの曲が流れるたび、東京ヤクルトの本拠地・神宮球場はどこかポジティブな空気に包まれる。この曲とともにマウンドに上がるのは、昨シーズンの途中でヤクルトに移籍してきた近藤一樹。今年でプロ16年目を迎えるベテランが、ダイナミックなフォームから力強いボールで相手のバッターを抑え込んでいくと、劣勢の展開であっても期待はいやが上にも高まる。
5月21日の阪神戦もそんなゲームだった。7回に逆転され、1点のビハインドで迎えた最終回。4番手で登板した近藤が阪神打線を3者凡退に片づけると、スワローズはその裏の攻撃で相手のミスに乗じ、阪神の守護神ラファエル・ドリスを1死満塁と攻め立てる。惜しくもあと1本が出ずに敗れたが、近藤の生きのいいピッチングが呼び込んだような一打逆転サヨナラのチャンスだった。
日大三高3年夏の甲子園で優勝投手となり、ドラフト7巡目で2002年に大阪近鉄バファローズに入団した近藤は、同じく現ヤクルトの坂口智隆とともにNPBに在籍する最後の“元近鉄戦士”である。球団合併により05年からオリックスの一員になると、07年以降はほぼ一貫して先発で投げ、08年には10勝、09年は9勝をマークした。
ところが度重なる右ヒジの手術もあり、12年からの3シーズンは勝ち星なし。15年には育成選手となり、そのシーズン途中で支配下に復帰したものの、昨季は1軍では5試合に登板したのみで、7月に八木亮祐との交換トレードでヤクルトに移ってきた。
気迫のピッチングで移籍後初勝利
実際、今シーズンは4月13日の中日戦(神宮)で先発として初マウンドに上がる予定だった。それが2日前の雨天中止のあおりで白紙になると、その後もファームで先発として調整。だが、チーム事情から4月23日に中継ぎとして1軍に昇格し、ブルペンの一角を担うこととなった。
昇格当初はリードされた場面や点差の離れた展開での登板が続いたが、5月9日の広島戦(神宮)では2対2の同点で迎えた延長11回から、2イニングを無失点。近藤自身「いつもと投げる展開とは違って、今回はチームを左右させてしまう状況だったので、いつも以上の力が出た」という気迫のこもったピッチングが、12回の大松尚逸のサヨナラ本塁打を呼び、移籍後初勝利がついた。