ふたりの“フライング・フィン”を分析 今宮純のF1ザ・ショウダウン

F1速報

果たしてキミは遅くなったのか?

スペインGPではスタート早々リタイアを喫してしまったライコネン 【XPB Images】

 第5戦スペインGPではライコネンとボッタスが1コーナーで接触し、ライコネンはその場でリタイア。ボッタスは続行できたが39周目にメルセデスPUがブロー。今季初めて両者“ゼロ・レース”。チームメートとの得点差が広がった。

 ライコネンはセバスチャン・ベッテルから−55点、ボッタスはルイス・ハミルトンから−35点。まだ5戦終了だが小さくないギャップだ。ライコネンは昨年5戦時点でベッテルを13点リード、予選タイム2勝3敗とほぼ対等に近かった。ところが今年はここまで0勝5敗。この落ち込みが得点力低下につながっているのを本人も認める。

 では37歳のキミは遅くなったのか。そうとは思えない。初戦からここまで予選Q1とQ2ではベッテルを6回上回っている。だが、最後のアタックで及ばず逆転された。「ポールポジションを狙えるスピードはあるのに自分がミスをしている」と率直に語るライコネン。

 彼のレース・キャラクターを表すのは歴代2位の最速ラップ45回を記録。今季はすでに2回樹立。昨年は1回きりでフェラーリSF70Hに好感触を持っていることがよく分かる。

ライコネンの上昇ポイント

・Q3ラストアタックの精度を上げたい。とくに低中速エリア(ターンイン)と、最終セクター。
・スタートダッシュでベッテルとわずかな違いがある。ピアニストのように繊細なクラッチパドル操作を。
・接近戦で空気が乱れる状態でもフロント挙動を制御したい。クリーンエアなら最速ラップを引き出せるのだから。

F1王者を相手に善戦するボッタス

 ボッタスとハミルトンの予選成績は“2勝3敗”。そのタイム差は−0.293秒、−0.496秒、+0.023秒、+0.478秒、−0.224秒。PPを64回獲得しているハミルトンを相手に、このプラスマイナスのギャップは健闘そのもの。明らかに3戦目からチームとマシンに慣れてきているのが読みとれる。

 同時に想像以上にメルセデスドライバーとしてのプレッシャーを感じたのではないか。ロシアGPで初勝利が叶ったとき、こみ上げる喜びを爆発するのではなく、やや遠慮がちにふるまった。ハミルトンは4位、チームに漂う重い空気を察しているかのように映った。ウィリアムズで表彰台に立ったときはもっと感情をあらわにしたのに……。

 チームプレーヤーとしてバーレーンGPで「チームオーダー」を初めて受け入れた。そのショックを自分の中で消化し、メルセデスで戦うプレッシャーを再認識したと思う。スペインGPではベッテルの壁になった後、ハミルトンに譲り、結局PUトラブル。このストレスの連鎖もさらなるプレッシャーになりかねない。

ボッタスの上昇ポイント

・初日のFP1で先行を。ロズベルグ時代からハミルトンはいきなり出し抜かれると、週末のペースが普段より乱れる傾向がある。
・そのためのイニシャル・セッティング。大組織のチーム内で自分の意見、アイデアを取り入れてくれる良き理解者を。
・不言実行だ。中盤はますますプレッシャーが強まる。それはハミルトンも同じ。ハッキネンの存在が助力となるだろう。

 フライング・フィン表彰台そろい踏みは過去に4度成立している。

07年日本GP富士:2位コバライネンと3位ライコネン
08年マレーシアGP:1位ライコネンと3位コバライネン
08年ハンガリーGP:1位コバライネンと3位ライコネン

 そして、今年ロシアGPで1、3フィニッシュ。いつどこでそれ以上があるか。そのとき、ふたりは……?

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