得点力が武器の川崎、攻撃OPが鍵のSR渋谷 アナリスト視点でBリーグを見よう(3)

佐々木クリス

守備のSR渋谷が攻撃力も発揮するには

シーズン全体での3P数が多いSR渋谷だが、決定力はリーグ14位と低い。グインのピック&ポップからの3Pが鍵となる 【(C)B.LEAGUE】

 SR渋谷が60試合の長いシーズンを経て、CS出場枠をつかんだ大きな要因はリーグ6位の守備力だろう。相手に与えるFG成功率はリーグで6番目に高い44%でありながら、相手の攻撃100回につき16.2回はTOを誘発する数字は特筆に値する。「スティール王」広瀬健太を筆頭にベンドラメ礼生、アイラ・ブラウンもスティール総数でトップ10入りしている。

 ただ自ら犯すTOも決して少なくない。その数はCS進出チーム中、琉球ゴールデンキングスに次いで2番目に多い。スティール数からも分かるように運動能力が高い選手がいるので、速攻時の相手の決定力は7番目に低く抑えられている。それだけに、自らのターンオーバーを減らすことができれば、もっと優位性を打ち出せる武器になる。

 攻撃面を分析すると残念ながらCS進出チーム中2番目に低く振るわない。ひとつ大きな問題点として、シーズン全体で放った3P数は1440本とリーグで3番目に多いものの、決定力は32.9%でリーグ13位に甘んじていること。

 なぜ決定力が伸びないのか。味方にチャンスを作り出してもらうタイプのキャッチ&シュート(以下C&S)と呼ばれるパスを受けてそのまま放つシュートのノーマーク率が低い。良い攻撃の目安である50%以上ノーマークが理想だが、SR渋谷はチームで46.4%と完全にノーマークでシューターに必ずしもボールを渡せていないことが分かる。

 通常高確率になるタイプのシュートなので、SR渋谷もノーマーク時の決定力は平均を超えている。必ずしも選手たちの能力不足とは言えないだけに、1試合であと2〜3本のC&Sをノーマークに変えられるだけでも攻撃力は大きく転換できるだろう。

グインのピック&ポップからの3Pを武器に

 ここでひとつ、相手ディフェンスのズレが少なく、ノーマークが少ない理由の考察として注目すべきプレーがある。それはアールティー・グインによる3Pシュートと、それを生み出すまでの過程だ。

 グインは3Pを得意とするため、ボールマンにスクリーンをかけた後の動きの大半がピック&ポップと呼ばれる外方向への動きであり、守備側が2人のディフェンダーで完結できてしまう。これが守備全体の収縮を起こさない要因だ。

 そんなグインは今季3本以上の3Pを決めた試合が21試合、そのときのチームの勝率は16勝5敗と非常に高い。入れば非常に恐ろしい武器になる。成功率も41.8%と期待値が高いわけだから打ち続ければいいのでは?と思われるかもしれない。しかしシーズンの1/3しか起こらないことであるばかりか、勝率トップ5チーム相手には一度も成しとげていない。彼のシュート力の脅威が全体に好循環となっていないことは、グインの3Pが3本の成功に満たない試合は全体で16勝23敗からも分かる。入らない時にチームとして別のオプション(OP)を構築できるかが、SR渋谷がCSを勝ち上がる鍵だろう。

 別のOPとしては、ブラウンが最も有効な攻撃OPであるとデータは示している。チームがペイント内で挙げる1試合平均の得点30.3点はリーグ14位タイ。そんな中でブラウンは7.6点とチーム1位のロバート・サクレの8.4点に引けをとらないばかりか、全体のFG%ではサクレの43.1%に対し51.8%の素晴らしい数字だ。シーズンを終えて1試合のFGAはサクレ13.1本に対しアイラ10.3本となっているが、本来ならブラウンがリングへと向かう状況をもっと作りたいのが本音。

 相手ディフェンスにプレッシャーがかかり収縮させる効果のあるインサイドへの侵入にあらためて着目すると、SR渋谷の攻撃の大部分を占めるポストプレーに加えて、相手ディフェンスにピック&ロールからドリブラーがシュートを打つ状況での決定力は残念ながら低い。4月に入ってベンドラメを先発させるなど、テコ入れも考えたと思われるが、CSではアイラにこの部分を担ってもらい、取得するフリースローの数もリーグ14位と少ない現状を変えなければいけないだろう。

川崎vs.SR渋谷のデータを比較すると……

 両者のペイントエリア(ペイント)内得点、フリースローによる得点の1試合平均にはそれぞれ7.9点分と3.4点分開きがある。合計するとこの2つのカテゴリーで川崎が11.3点上回っていることになる。

 川崎は平均19.86本の3Pシュートを放ち、SR渋谷は24本にもかかわらず3Pによる得点の開きは1.8点分SR渋谷が上回るにすぎない。

 多用するSR渋谷の3Pシュートは、今季川崎との直接対決では67/189、35.44%の決定力とまずまずだが勝利には結びつかなかった。直接対決にてSR渋谷が今季初勝利を川崎からあげた4月23日の試合をみると、ペイント内得点38−30、フリースロー得点18−10と合計でも56−40と初めて上回ることができた。その後、最終戦(SR渋谷が勝利)でも計46−36で上回っている。

 この2つのカテゴリーの合計点で、今季唯一上回ることができたゲームでもあるのだ。両者の対戦において、ペイント内得点とフリースローによる得点は見逃せないポイントといえる。

[ペイント内得点+フリースロー得点の合計]
・17年
5月6日 川崎36‐SR渋谷46(76‐78でSR渋谷勝利)
5月5日 川崎48‐SR渋谷47(93‐86で川崎勝利)
4月23日 川崎40‐SR渋谷56(71‐84でSR渋谷勝利)
4月22日 川崎54‐SR渋谷38(87‐80で川崎勝利)
1月18日 川崎45‐SR渋谷32(69‐66で川崎勝利)
・16年
11月23日 川崎51‐SR渋谷25(87‐71で川崎勝利)
10月16日 川崎51‐SR渋谷27(68‐56で川崎勝利)
10月15日 川崎60‐SR渋谷40(89‐74で川崎勝利)

(データ提供:B.LEAGUE、グラフィックデザイン:相河俊介)

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