選抜初勝利を目指した絶対エースたち 明暗分かれ好投手対決は実現ならず

楊順行

東海大市原望洋・金久保の218球

東海大市原望洋・金久保は最速147キロを誇る右腕だ 【写真は共同】

 この日はもう一人、好投手が登場した。東海大望洋市原(千葉)の金久保優斗。昨秋はチーム公式戦14試合のうち13登板で、関東大会の4を含む10完投という、絶対的なエースである。「以前は初回から力いっぱい投げていましたが、いまは完投、連投を考えて力を抜いて投げるようになった」と金久保は言う。

 中学時代は、佐倉シニアの柱としてジャイアンツカップを制覇。高校1年のとき、「テークバックを小さくしてみた」ら速さと切れが増し、下半身の充実とともに最速は147キロまで伸びた。秋の関東大会から就任した和田健次郎監督によると、「金久保がいるのが、このチームの強みです」。

 滋賀学園(滋賀)との一戦は、相手投手・棚原孝太との我慢比べとなった。中盤までに2点ずつを取り合うと、6回からはいずれも0行進。金久保は9回まで、4安打に抑えている。延長に入っても10、11、12、13……両者とも塁上はにぎわすが、ホームが遠い。

2−2で迎えた延長14回に4失点を喫し敗戦。この試合での球数は218球を数えた 【写真は共同】

 だが、金久保の投球数が200に近づいた14回だ。下位打線に与えた連続四球をきっかけに、守備のミスで勝ち越しを許すと、我慢の在庫が切れたのか。13回には144キロを計時していたストレートも、140キロそこそこになり、上位に4連打を浴びる。悪夢のような4失点。チーム3度目の甲子園も、初勝利が遠い。

「疲れはあまりないし、球のキレも向上していると思いますが、四球がなければ勝てた試合だけに残念です。エラーで気持ちがガクッとしてしまった。疲労していようが、最後の4失点をなくすようなコントロールを身につけたい。投球数が218? 初めて200球を投げたことは自信になります」と語る金久保。

 大会前には、卒業した前エース・島孝明(現千葉ロッテ)と偶然遭遇した。「島さんの後ろ姿から学んだことが、たくさんある。勝てる投手になりたい」。

 三浦と金久保。両者が勝ち進めば、2回戦では好投手対決が実現するところだったが、明暗がくっきりと分かれた。

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著者プロフィール

1960年、新潟県生まれ。82年、ベースボール・マガジン社に入社し、野球、相撲、バドミントン専門誌の編集に携わる。87年からフリーとして野球、サッカー、バレーボール、バドミントンなどの原稿を執筆。高校野球の春夏の甲子園取材は、2019年夏で57回を数える。

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